[0821] ニュータウン居住高齢者における日常生活機能と強度別身体活動との関連性
キーワード:高齢者, 健康増進, 身体活動
【はじめに,目的】高齢期の日常生活機能は加齢に伴い社会的役割,知的能動性,手段的自立の順に高次な機能から低下することが知られている。徒歩による生活空間(Walkable Neighborhoods)の狭小化により,身体活動量が減少し日常生活機能の低下を引き起こすと考える。日常生活機能と身体活動との関連について,質問紙により評価した身体活動と関連するが,加速度計により評価した身体活動では関連性はないなど,一致した見解は得られていない。今回,われわれはニュータウン居住高齢者を対象に加速度計とインタビューにより身体活動を評価し,日常生活機能との関連性を検討したので報告する。
【方法】本対象は大阪府堺市泉北ニュータウンM校区(高齢化率31%)とし,歩行者専用緑道が整備されているが丘陵地帯のため長い坂道が多く,高齢者の多くは歩行より自動車やバスに頼る傾向がある。M校区老人会を通じ対象者を募集し,男性21名,女性11名,計32名(平均74.5歳)となった。対象者には任意の連続する2日間を選択し,1日目は身体活動量調査,2日目(24時間後)には生活行動調査を行った。身体活動量の計測には,3軸加速度計ならびGPSを使用した。24時間計測した加速度計結果と生活行動記録を照合し,1日の身体活動量時間から睡眠と食事を除いた活動を強度別に,不活動(テレビと読書),低強度活動(家事と身の回り用事),中強度活動(外出,運動,仕事)の3つに分類した。日常生活機能は老研式活動能力指標(以下,TMIG index)を用いて評価した。TMIG index総得点および下位尺度得点の満点者を「維持群」,未満点者を「低下群」とした。外出頻度(4件法),運動変容ステージ(6件法),主観的健康感(4件法),疾病数,地域活動(4件法),うつ傾向を質問紙調査にて実施した。さらに体脂肪率,5回椅子立ち上がりテスト(CST),Timed up and Go test(以下,TUG),各2回実施し速い方を採用した。群間比較にはX2検定,対応のない検定,Mann-WhitneyのU検定を用いた。TMIG indexならび下位尺度を従属変数とし,各検査項目ならび身体活動を独立変数とした多重線型回帰分析(ステップワイズ法)を行った(有意水準は0.05)。
【倫理的配慮,説明と同意】大阪市立大学生活科学研究科研究倫理委員会の規定に基づき,対象者に調査の目的や内容および安全性について十分説明し,書面による同意を得た。
【結果】「維持群」と「低下群」を比較した結果,TMIG indexでは低強度活動(P=0.005),疾病の数(P=0.025),体脂肪率(P=0.040),TUG(p=0.039),知的能動性では歩数(P=0.015),疾病の数(P=0.023),体脂肪率(P=0.043),社会的役割では不活動(P=0.020),低強度活動(P=0.017),とそれぞれ有意差が認められた。手段的自立は「低下群」2名と少なく群間比較は実施せず。TMIG index,知的能動性,社会的役割をそれぞれ従属変数とした多重線型回帰分析の結果,TMIG indexならびに社会的役割では,低強度活動が有意な説明変数として抽出された(TMIG index:P=0.040,社会的役割:P=0.049)。
【考察】本研究では,身体活動を加速度計とインタビューにより強度別に分類した強度別身体活動量と日常生活機能との関連性を検討した結果,中強度の身体活動と有意差は確認できず,家事や身の回り作業など活動強度が小さい身体活動時間と関連性があることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】丘陵地帯の居住高齢者を対象とした健康増進において,日常生活機能の低下を予防するには,運動といった中強度の身体活動より,家事など低強度の身体活動を増やすことが有用である可能性が考えられる。
【方法】本対象は大阪府堺市泉北ニュータウンM校区(高齢化率31%)とし,歩行者専用緑道が整備されているが丘陵地帯のため長い坂道が多く,高齢者の多くは歩行より自動車やバスに頼る傾向がある。M校区老人会を通じ対象者を募集し,男性21名,女性11名,計32名(平均74.5歳)となった。対象者には任意の連続する2日間を選択し,1日目は身体活動量調査,2日目(24時間後)には生活行動調査を行った。身体活動量の計測には,3軸加速度計ならびGPSを使用した。24時間計測した加速度計結果と生活行動記録を照合し,1日の身体活動量時間から睡眠と食事を除いた活動を強度別に,不活動(テレビと読書),低強度活動(家事と身の回り用事),中強度活動(外出,運動,仕事)の3つに分類した。日常生活機能は老研式活動能力指標(以下,TMIG index)を用いて評価した。TMIG index総得点および下位尺度得点の満点者を「維持群」,未満点者を「低下群」とした。外出頻度(4件法),運動変容ステージ(6件法),主観的健康感(4件法),疾病数,地域活動(4件法),うつ傾向を質問紙調査にて実施した。さらに体脂肪率,5回椅子立ち上がりテスト(CST),Timed up and Go test(以下,TUG),各2回実施し速い方を採用した。群間比較にはX2検定,対応のない検定,Mann-WhitneyのU検定を用いた。TMIG indexならび下位尺度を従属変数とし,各検査項目ならび身体活動を独立変数とした多重線型回帰分析(ステップワイズ法)を行った(有意水準は0.05)。
【倫理的配慮,説明と同意】大阪市立大学生活科学研究科研究倫理委員会の規定に基づき,対象者に調査の目的や内容および安全性について十分説明し,書面による同意を得た。
【結果】「維持群」と「低下群」を比較した結果,TMIG indexでは低強度活動(P=0.005),疾病の数(P=0.025),体脂肪率(P=0.040),TUG(p=0.039),知的能動性では歩数(P=0.015),疾病の数(P=0.023),体脂肪率(P=0.043),社会的役割では不活動(P=0.020),低強度活動(P=0.017),とそれぞれ有意差が認められた。手段的自立は「低下群」2名と少なく群間比較は実施せず。TMIG index,知的能動性,社会的役割をそれぞれ従属変数とした多重線型回帰分析の結果,TMIG indexならびに社会的役割では,低強度活動が有意な説明変数として抽出された(TMIG index:P=0.040,社会的役割:P=0.049)。
【考察】本研究では,身体活動を加速度計とインタビューにより強度別に分類した強度別身体活動量と日常生活機能との関連性を検討した結果,中強度の身体活動と有意差は確認できず,家事や身の回り作業など活動強度が小さい身体活動時間と関連性があることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】丘陵地帯の居住高齢者を対象とした健康増進において,日常生活機能の低下を予防するには,運動といった中強度の身体活動より,家事など低強度の身体活動を増やすことが有用である可能性が考えられる。