[0867] 足底面への振動刺激によるバランス機能の改善について
キーワード:足底感覚, バランス機能, 2点識別覚
【目的】現在,高齢者において寝たきりとなる原因の第二位は転倒および転倒による骨折である。転倒の原因には様々な原因があげられるが,バランス機能の低下も原因の一つとしてあげられる。バランス機能において高齢者では足底感覚が大きく関与することが報告されている。また足底感覚は高齢になるにつれ鈍磨すると報告されている。足底感覚は様々な機械受容器により電気信号として伝達され,足底の機械受容器は主に母趾,前足部,踵部に多く存在する。足底の機械受容器は主に圧覚をつかさどるパチニ小体やルフィニ小体が発達している。過去の研究では足底部に青竹踏み運動による刺激や複数回の振動刺激療法を加えることによってバランス機能が改善した報告がある。今回は健常者に対して,複数回の振動刺激療法を実施し,静的バランス機能に影響を及ぼすかどうか検討した。
【方法】対象は本研究に同意の得られた健常男子大学生9名を対象とした。振動刺激療法にはG5 VIBRAMATIC(G5社製)を用い,足底前足部への振動刺激療法(30Hz)を15分/回,3回/週を3週間(計9回)実施した。測定にはノギス,重心動揺計(グラビコーダGS5500,アニマ社製)を用い,各振動刺激療法の前後および1・5・9回目の介入5分後に測定を行った。測定項目は左右足底の二点識別覚,開眼・閉眼静止立位時における総軌跡長,X・Y方向軌跡長,矩形面積,外周面積,実行値(RMS)面積,X・Y方向RMS,X・Y方向最大振幅,X・Y方向動揺変位変化とした。統計処理はSPSS ver.21にてshapiro-wilkを用い,正規性の検定を行った。そして一元配置分散分析(反復測定)を用い,1回目の介入前後・5分後,5・9回目介入前・5分後のパラメータについて検討した。その後有意差のみられたパラメータについてはturkey-kramer法を用いた。なお,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮】本研究は所属の倫理委員会の承認(第24812号)を受け,全ての対象者に口頭で十分に説明を行い,書面による同意を得て実施した。
【結果】二点識別覚は1回目介入前と9回目介入前・5分後の値について有意に減少が認められた(p<0.05)。閉眼のY軌跡長・外周面積・Y方向単位軌跡長は1回目介入前と9回目介入5分後との間に有意に減少していることが認められた(p<0.05)。その他のパラメータについて有意差は認められなかった。
【考察】振動刺激療法の介入により二点識別覚は有意に減少した。この結果は今回実施した振動刺激療法が足底前足部の機械受容器を増加させた可能性を示唆している。過去の報告はラットに対して足底への刺激を加え,機械受容器の数が増加,あるいは機械受容器の発生や成熟に深く関与されるとする神経栄養因子の過剰発現・その因子のmRNAレベルが著しく増加させたと述べている。今回の介入でも同様の現象が起きたと考えられる。閉眼の外周面積においては9回目の振動刺激療法を終えた5分後で介入前と比較し,有意に値が減少した。これは同様に9回目の振動刺激療法を終えた5分後に有意に値を減少させた閉眼時のY軌跡長・Y方向単位軌跡長の変化によるものと考えられる。この結果は過去に行われた高齢者に対する複数回の振動刺激療法における結果の一部と一致している。これらの結果より前足部への振動刺激が前後方向の重心動揺に対して有用であることが示唆された。今回の研究で測定した重心動揺計のパラメータにおいて有意に減少したものはいずれも閉眼であった。これに対し峯松らが行った高齢者に対する複数回の振動刺激療法は,開眼時における総軌跡長,外周面積,RMS面積,Y方向最大振幅で有意な減少が認められた。これらの結果から若年者は視覚によるバランス戦略をとっているが,一方で高齢者は足底感覚に依存したバランス戦略をとっていることが示唆され,他の研究によっても同様のことが示されている。今回の研究では二点識別覚の検査において回数を重ねるにつれ,検査に対する慣れが生じ,値が減少した可能性が考えられる。そのため,コントロール群との比較が必要であった。また動的バランス機能を検討していなかったため,静的バランス能力のみにとどまった。今回は前足部への振動刺激療法について検討したが,前足部だけでなく母趾や踵部など様々な部位にも同様に行い,その違いについて検討する必要性があると思われた。
【研究意義】本研究結果は振動刺激により,足底の機械受容器を賦活化できる可能性があると思われる。また臨床現場においてバランス機能が低下した転倒のリスクのある患者に対して,安全かつ簡便に適応できる治療法を提示できる可能性がある。
【方法】対象は本研究に同意の得られた健常男子大学生9名を対象とした。振動刺激療法にはG5 VIBRAMATIC(G5社製)を用い,足底前足部への振動刺激療法(30Hz)を15分/回,3回/週を3週間(計9回)実施した。測定にはノギス,重心動揺計(グラビコーダGS5500,アニマ社製)を用い,各振動刺激療法の前後および1・5・9回目の介入5分後に測定を行った。測定項目は左右足底の二点識別覚,開眼・閉眼静止立位時における総軌跡長,X・Y方向軌跡長,矩形面積,外周面積,実行値(RMS)面積,X・Y方向RMS,X・Y方向最大振幅,X・Y方向動揺変位変化とした。統計処理はSPSS ver.21にてshapiro-wilkを用い,正規性の検定を行った。そして一元配置分散分析(反復測定)を用い,1回目の介入前後・5分後,5・9回目介入前・5分後のパラメータについて検討した。その後有意差のみられたパラメータについてはturkey-kramer法を用いた。なお,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮】本研究は所属の倫理委員会の承認(第24812号)を受け,全ての対象者に口頭で十分に説明を行い,書面による同意を得て実施した。
【結果】二点識別覚は1回目介入前と9回目介入前・5分後の値について有意に減少が認められた(p<0.05)。閉眼のY軌跡長・外周面積・Y方向単位軌跡長は1回目介入前と9回目介入5分後との間に有意に減少していることが認められた(p<0.05)。その他のパラメータについて有意差は認められなかった。
【考察】振動刺激療法の介入により二点識別覚は有意に減少した。この結果は今回実施した振動刺激療法が足底前足部の機械受容器を増加させた可能性を示唆している。過去の報告はラットに対して足底への刺激を加え,機械受容器の数が増加,あるいは機械受容器の発生や成熟に深く関与されるとする神経栄養因子の過剰発現・その因子のmRNAレベルが著しく増加させたと述べている。今回の介入でも同様の現象が起きたと考えられる。閉眼の外周面積においては9回目の振動刺激療法を終えた5分後で介入前と比較し,有意に値が減少した。これは同様に9回目の振動刺激療法を終えた5分後に有意に値を減少させた閉眼時のY軌跡長・Y方向単位軌跡長の変化によるものと考えられる。この結果は過去に行われた高齢者に対する複数回の振動刺激療法における結果の一部と一致している。これらの結果より前足部への振動刺激が前後方向の重心動揺に対して有用であることが示唆された。今回の研究で測定した重心動揺計のパラメータにおいて有意に減少したものはいずれも閉眼であった。これに対し峯松らが行った高齢者に対する複数回の振動刺激療法は,開眼時における総軌跡長,外周面積,RMS面積,Y方向最大振幅で有意な減少が認められた。これらの結果から若年者は視覚によるバランス戦略をとっているが,一方で高齢者は足底感覚に依存したバランス戦略をとっていることが示唆され,他の研究によっても同様のことが示されている。今回の研究では二点識別覚の検査において回数を重ねるにつれ,検査に対する慣れが生じ,値が減少した可能性が考えられる。そのため,コントロール群との比較が必要であった。また動的バランス機能を検討していなかったため,静的バランス能力のみにとどまった。今回は前足部への振動刺激療法について検討したが,前足部だけでなく母趾や踵部など様々な部位にも同様に行い,その違いについて検討する必要性があると思われた。
【研究意義】本研究結果は振動刺激により,足底の機械受容器を賦活化できる可能性があると思われる。また臨床現場においてバランス機能が低下した転倒のリスクのある患者に対して,安全かつ簡便に適応できる治療法を提示できる可能性がある。