[0879] 生物学的製剤使用中の関節リウマチ患者における身体機能評価の検討
キーワード:関節リウマチ, 生物学的製剤, 疾患活動性
【はじめに,目的】
生物学的製剤(以下,Bio)が関節リウマチ(以下,RA)治療で認可され10年以上が経過し,現在では7剤が認可されている。当院においてもBioは積極的に導入されておりそのBio投与症例に対してDisease Activity Score 28-Erythrocyte Sedimentation Rate(以下,DAS28-ESR)などの活動性評価に加えて,詳細な身体機能評価・ADL評価等を実施している。そういった疾患活動性の評価において,一般的にBioの効果は良好と言われているが,前回の本学会でも発表したように,リハビリテーションの視点からは必ずしも身体機能評価に反映しておらず乖離がみられた。そこで今回,Bio投与症例における導入時と1年後の経時的な変化について追跡調査した。
【方法】
対象は,当院にてBio投与しているRA患者で,平成23年2月から平成25年2月までの期間にBio導入から1年間の疾患活動性・身体機能評価が可能であった23例(男性4名,女性19名,平均年齢68.4(46~79)歳,平均罹病期間15.0(0.1~39)年,SteinbrockerのStage別症例数はStageI:1名,StageII:4名,StageIII:1名,StageIV:17名)となっている。方法は,疾患活動性評価としてDAS28-ESR,身体機能評価としてModifide Health Assessment Questionnaire(以下,mHAQ),moter Functional independence measuer(以下,mFIM),下肢機能評価としてTimed up and go test(以下,TUG),10m歩行時間を調査した。DAS28-ESRでmoderate response以上の改善が得られた群(達成群)と得られなかった群(非達成群)に群別し,1年間の変化について検討した。開始時のDAS28-ESRは,平均4.03(1.58~5.52)であった。相関にはSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,患者への説明と同意の上,当院倫理委員会の承認を得てヘルシンキ宣言に基づいて実施された。
【結果】
DAS28-ESRは3.18(1.18~6.70)に有意に改善し,15例がmoderate response以上(達成群)であった。またmHAQも平均0.69(0~2.25)から0.40(0~2.20)に改善する傾向がみられ(有意差なし),mHAQの改善は達成群で有意に高かった。しかし,mFIM及び10m歩行時間には1年間で変化がみられず,むしろ悪化する傾向がみられた(有意差なし)。mFIM,10m歩行時間,TUGの変化はいずれもmHAQとの相関がみられなかったが,mFIMの変化と下肢機能を反映する10歩行時間(p=0.02,rs=-0.51),TUG(p=0.03,rs=-0.49)とは有意な相関があった。
【考察】
疾患活動性の評価で用いられるDAS28-ESR,mHAQが優位に改善しているのに対し,mFIM,下肢機能の結果とは乖離が見られた。Bioによる治療によって多くのRA症例で疾患活動性の改善が得られ,機能的改善につなげることができるようになっている。HAQはRAの疾患活動性改善による機能回復(特に上肢機能)を鋭敏に観察できると考えられ,多くの研究において機能評価はHAQスコアを用いて検討されている。しかし,実臨床,特に本症例群のように長期罹病・高齢患者の多い現状では,疾患活動性の改善以上に,既に完成した関節破壊の機械的な損傷や,年齢に伴う筋力・バランス能力低下がADLの低下を生じている可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
Bioが認可されて10年以上が経過し,RA治療は大きな躍進を続けているが,同時に高齢化も進んでいる現状で,医師が行うDAS28ESRやHAQなどの臨床評価は,その検査結果が身体機能や日常生活に十分に反映されていない可能性がある。その為,患者層を考慮し,罹病期間,年齢などを十分に加味することが重要であり,今回の研究で,理学療法士等が行う詳細な臨床的機能評価の重要性が改めて示唆された。
生物学的製剤(以下,Bio)が関節リウマチ(以下,RA)治療で認可され10年以上が経過し,現在では7剤が認可されている。当院においてもBioは積極的に導入されておりそのBio投与症例に対してDisease Activity Score 28-Erythrocyte Sedimentation Rate(以下,DAS28-ESR)などの活動性評価に加えて,詳細な身体機能評価・ADL評価等を実施している。そういった疾患活動性の評価において,一般的にBioの効果は良好と言われているが,前回の本学会でも発表したように,リハビリテーションの視点からは必ずしも身体機能評価に反映しておらず乖離がみられた。そこで今回,Bio投与症例における導入時と1年後の経時的な変化について追跡調査した。
【方法】
対象は,当院にてBio投与しているRA患者で,平成23年2月から平成25年2月までの期間にBio導入から1年間の疾患活動性・身体機能評価が可能であった23例(男性4名,女性19名,平均年齢68.4(46~79)歳,平均罹病期間15.0(0.1~39)年,SteinbrockerのStage別症例数はStageI:1名,StageII:4名,StageIII:1名,StageIV:17名)となっている。方法は,疾患活動性評価としてDAS28-ESR,身体機能評価としてModifide Health Assessment Questionnaire(以下,mHAQ),moter Functional independence measuer(以下,mFIM),下肢機能評価としてTimed up and go test(以下,TUG),10m歩行時間を調査した。DAS28-ESRでmoderate response以上の改善が得られた群(達成群)と得られなかった群(非達成群)に群別し,1年間の変化について検討した。開始時のDAS28-ESRは,平均4.03(1.58~5.52)であった。相関にはSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,患者への説明と同意の上,当院倫理委員会の承認を得てヘルシンキ宣言に基づいて実施された。
【結果】
DAS28-ESRは3.18(1.18~6.70)に有意に改善し,15例がmoderate response以上(達成群)であった。またmHAQも平均0.69(0~2.25)から0.40(0~2.20)に改善する傾向がみられ(有意差なし),mHAQの改善は達成群で有意に高かった。しかし,mFIM及び10m歩行時間には1年間で変化がみられず,むしろ悪化する傾向がみられた(有意差なし)。mFIM,10m歩行時間,TUGの変化はいずれもmHAQとの相関がみられなかったが,mFIMの変化と下肢機能を反映する10歩行時間(p=0.02,rs=-0.51),TUG(p=0.03,rs=-0.49)とは有意な相関があった。
【考察】
疾患活動性の評価で用いられるDAS28-ESR,mHAQが優位に改善しているのに対し,mFIM,下肢機能の結果とは乖離が見られた。Bioによる治療によって多くのRA症例で疾患活動性の改善が得られ,機能的改善につなげることができるようになっている。HAQはRAの疾患活動性改善による機能回復(特に上肢機能)を鋭敏に観察できると考えられ,多くの研究において機能評価はHAQスコアを用いて検討されている。しかし,実臨床,特に本症例群のように長期罹病・高齢患者の多い現状では,疾患活動性の改善以上に,既に完成した関節破壊の機械的な損傷や,年齢に伴う筋力・バランス能力低下がADLの低下を生じている可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
Bioが認可されて10年以上が経過し,RA治療は大きな躍進を続けているが,同時に高齢化も進んでいる現状で,医師が行うDAS28ESRやHAQなどの臨床評価は,その検査結果が身体機能や日常生活に十分に反映されていない可能性がある。その為,患者層を考慮し,罹病期間,年齢などを十分に加味することが重要であり,今回の研究で,理学療法士等が行う詳細な臨床的機能評価の重要性が改めて示唆された。