[0921] 高知県回復期リハビリテーション病棟における大腿骨近位部骨折の実態調査
Keywords:回復期, 大腿骨近位部骨折, 実態調査
【はじめに,目的】
高知県下の回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)疾患分類割合によると,整形外科系では2007年37.2%,2009年39%,2011年42.3%と増加傾向にある。また高知市消防局によると大腿骨近位部骨折件数は年々右肩上がりに増加し,高齢化が進んでいるのが現状である。今回,高知県下の回復期リハ病棟における大腿骨近位部骨折の大規模実態調査(前方視的)を実施し,超高齢者の回復状況ならびに退院後の生活レベルを追跡したので報告する。
【方法】
対象は,当連絡会加入施設(17施設中14施設)で大腿骨近位部骨折と診断され回復期リハ病棟に入院中の症例で退院後3ヶ月追跡可能であった289例のうち,受傷前が自宅生活であった218例とした。その中で85歳以上群(超高齢者群)106例と85歳未満群(高齢者群)112例に分類した。調査期間は,2012年6月から2013年5月末までの1年間である。尚,平均年齢は超高齢者群89.4±3.4歳,高齢者群75.4±9.1歳,受傷前歩行レベルは,屋内独歩可能例が超高齢者群55例,高齢者群81例であった。調査項目は,受傷状況ならびに受傷前・退院時・退院後3ヶ月における生活場所・歩行レベル・介護状況,回復期リハ病棟転棟時・退院時におけるFunctional Independence Measure(FIM)・看護必要度・在院日数・リハビリテーション算定単位・病棟訓練(リハビリ単位以外での歩行訓練・Instrumental Activities of Daily Living:IADL)を調査した。なお統計学的処理にはt検定・Mann-WhitneyのU検定を用い,危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づくとともに運営委員会で倫理的側面の検討を行い,対象者に紙面にて説明し同意を得た。
【結果】
受傷場所では,超高齢者群が屋内71例・屋外30例・不明5例,高齢者群が屋内59例・屋外52例・不明1例であった。受傷時間は2群ともに6-9時・9-12時の時間帯が多い。回復期リハ病棟転棟(術後からの日数)は,超高齢者群27.9日・高齢者群25.3日であり有意差を認めなかった。FIM運動項目では超高齢者群51.8点・高齢者群63.7点,看護必要度は超高齢者群6.2点・高齢者群4.2点であり有意差を認めた。退院時におけるFIM運動項目では超高齢者群63.6点・高齢者群76.7点,看護必要度は超高齢者群4.8点・高齢者群2.9点であり有意差を認めた。FIM認知項目は,回復期リハ病棟転棟時・退院時ともに有意差を認めなかった。平均在院日数は超高齢者群73.5日,高齢者群57.2日で有意差を認めた。1日平均リハビリテーション算定単位は超高齢者群4.4単位,高齢者群4.6単位であった。自宅復帰率は,超高齢者群は退院時78例(73.6%)・退院後3ヶ月72例(67.9%),高齢者群は退院時96例(85.7%)・退院後3ヶ月90例(80.4%)であった。歩行レベルが屋内独歩可能例は,超高齢者群は退院時14例(25.5%)・退院後3ヶ月14例(25.5%),高齢者群は退院時35例(43.2%)・退院後3ヶ月44例(54.3%)であった。
【考察】
超高齢者は,高齢者と比べ回復期リハ病棟転棟時・退院時のFIM運動項目が低値を示し,入院の長期化を認めた。超高齢者は全身状態変化や合併症の影響を受けやすく,安静臥床を強いられる事で廃用が起こると考えられる。また,骨折前の歩行能力が低い症例が多く,術後の歩行能力獲得が遅れる傾向がある。今回の調査でも受傷前屋内独歩可能例は,退院時25.5%と低値を示し,退院後3ヶ月においても同様の結果であった。一方高齢者は退院時43.2%・退院後3ヶ月54.3%と向上している。退院後,歩行能力向上は年齢的因子の関与を推察する。諸家によれば,回復期リハ病棟退院後の自宅生活では,ADL低下を認めるといわれている。退院後3ヶ月の自宅生活可能例は,超高齢者・高齢者ともに退院時と比較して低値を示し,ケアハウス・老人保健施設への生活場所の移行となった。今後,退院後の廃用症候群進行予防の対策として,訪問リハ・デイケアでの個別リハなど自立支援に視点を向けたケアプランに対し,回復期リハ病棟と維持期との密なる連携が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
高知県は高齢化率全国3位(2009年)であり,今後さらに超高齢者の大腿骨近位部骨折が予測される。回復期リハ病棟として大腿骨近位部骨折は主要な疾患であり,回復期リハ病棟における機能・能力面の向上とともに,地域との連携が必須と考える。
高知県下の回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)疾患分類割合によると,整形外科系では2007年37.2%,2009年39%,2011年42.3%と増加傾向にある。また高知市消防局によると大腿骨近位部骨折件数は年々右肩上がりに増加し,高齢化が進んでいるのが現状である。今回,高知県下の回復期リハ病棟における大腿骨近位部骨折の大規模実態調査(前方視的)を実施し,超高齢者の回復状況ならびに退院後の生活レベルを追跡したので報告する。
【方法】
対象は,当連絡会加入施設(17施設中14施設)で大腿骨近位部骨折と診断され回復期リハ病棟に入院中の症例で退院後3ヶ月追跡可能であった289例のうち,受傷前が自宅生活であった218例とした。その中で85歳以上群(超高齢者群)106例と85歳未満群(高齢者群)112例に分類した。調査期間は,2012年6月から2013年5月末までの1年間である。尚,平均年齢は超高齢者群89.4±3.4歳,高齢者群75.4±9.1歳,受傷前歩行レベルは,屋内独歩可能例が超高齢者群55例,高齢者群81例であった。調査項目は,受傷状況ならびに受傷前・退院時・退院後3ヶ月における生活場所・歩行レベル・介護状況,回復期リハ病棟転棟時・退院時におけるFunctional Independence Measure(FIM)・看護必要度・在院日数・リハビリテーション算定単位・病棟訓練(リハビリ単位以外での歩行訓練・Instrumental Activities of Daily Living:IADL)を調査した。なお統計学的処理にはt検定・Mann-WhitneyのU検定を用い,危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づくとともに運営委員会で倫理的側面の検討を行い,対象者に紙面にて説明し同意を得た。
【結果】
受傷場所では,超高齢者群が屋内71例・屋外30例・不明5例,高齢者群が屋内59例・屋外52例・不明1例であった。受傷時間は2群ともに6-9時・9-12時の時間帯が多い。回復期リハ病棟転棟(術後からの日数)は,超高齢者群27.9日・高齢者群25.3日であり有意差を認めなかった。FIM運動項目では超高齢者群51.8点・高齢者群63.7点,看護必要度は超高齢者群6.2点・高齢者群4.2点であり有意差を認めた。退院時におけるFIM運動項目では超高齢者群63.6点・高齢者群76.7点,看護必要度は超高齢者群4.8点・高齢者群2.9点であり有意差を認めた。FIM認知項目は,回復期リハ病棟転棟時・退院時ともに有意差を認めなかった。平均在院日数は超高齢者群73.5日,高齢者群57.2日で有意差を認めた。1日平均リハビリテーション算定単位は超高齢者群4.4単位,高齢者群4.6単位であった。自宅復帰率は,超高齢者群は退院時78例(73.6%)・退院後3ヶ月72例(67.9%),高齢者群は退院時96例(85.7%)・退院後3ヶ月90例(80.4%)であった。歩行レベルが屋内独歩可能例は,超高齢者群は退院時14例(25.5%)・退院後3ヶ月14例(25.5%),高齢者群は退院時35例(43.2%)・退院後3ヶ月44例(54.3%)であった。
【考察】
超高齢者は,高齢者と比べ回復期リハ病棟転棟時・退院時のFIM運動項目が低値を示し,入院の長期化を認めた。超高齢者は全身状態変化や合併症の影響を受けやすく,安静臥床を強いられる事で廃用が起こると考えられる。また,骨折前の歩行能力が低い症例が多く,術後の歩行能力獲得が遅れる傾向がある。今回の調査でも受傷前屋内独歩可能例は,退院時25.5%と低値を示し,退院後3ヶ月においても同様の結果であった。一方高齢者は退院時43.2%・退院後3ヶ月54.3%と向上している。退院後,歩行能力向上は年齢的因子の関与を推察する。諸家によれば,回復期リハ病棟退院後の自宅生活では,ADL低下を認めるといわれている。退院後3ヶ月の自宅生活可能例は,超高齢者・高齢者ともに退院時と比較して低値を示し,ケアハウス・老人保健施設への生活場所の移行となった。今後,退院後の廃用症候群進行予防の対策として,訪問リハ・デイケアでの個別リハなど自立支援に視点を向けたケアプランに対し,回復期リハ病棟と維持期との密なる連携が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
高知県は高齢化率全国3位(2009年)であり,今後さらに超高齢者の大腿骨近位部骨折が予測される。回復期リハ病棟として大腿骨近位部骨折は主要な疾患であり,回復期リハ病棟における機能・能力面の向上とともに,地域との連携が必須と考える。