[0945] Denervationがアキレス腱enthesisの石灰化軟骨層構造変化に及ぼす影響
Keywords:除神経, メカニカルストレス, enthesis
【はじめに,目的】
腱・靭帯と骨との付着部はenthesisと呼ばれ,構造的に4層構造を呈し,腱・靭帯の実質部である線維組織層,非石灰化線維軟骨層,石灰化線維軟骨層そして骨層からなることが知られている。(Woo et al, 1988)。Enthesisの役割として,その構造から力学的ストレスを分散させる合理性を有している。そして,石灰化線維軟骨層コラーゲン線維束の走行は表層と深層で異なり,表層では腱・靭帯の走行方向に連続して直線的に骨へ侵入しているのに対し,深層部では細目状の走行を認める。これは,表層では腱・靭帯からの牽引力によるメカニカルストレスが構造決定に関与し,深層では圧迫ストレスに適応した構造を呈するためと考えられている。その他にも,石灰化線維軟骨層と骨層間のインターフェイスはメカニカルストレス強度に依存し,より複雑に深くなることで破断しないための構造をなすと考えられている(Kumai et al,2010)。これらのことより,enthesis石灰化線維軟骨層のリモデリングによる構造決定には,メカニカルストレス方向によりコラーゲン線維束走行の規則性及び平行性が保たれ,ストレス強度によりコラーゲン線維束の深さが変化すると推察される。しかし,両者がストレス方向と強度により構造決定をなしているかについては検証がなされていない。そこで本研究では,坐骨神経切除により下腿三頭筋を不活動とした不動モデルラットを用いて,メカニカルストレスの低下がアキレス腱enthesis石灰化線維軟骨層の表層部における構造決定に影響しているのかを明らかにするため,コラーゲン線維束走行方向と波状構造の深さから経時的に検討した。
【方法】
7週齢のWistar系雄性ラット81匹を用いて,アキレス腱が踵骨に付着するenthesisの石灰化線維軟骨層表層を対象とした。各ラットは,対照群(Cont群),偽手術群(Sham群),坐骨神経切除群(DN群)の3群へ無作為にグルーピングした(24匹/Cont群・Sham群,33匹/DN群)。さらに,実験開始から0,3日後,1,2,4,8週後の各時点でサンプリングをおこなうため,CONT群,Sham群は各時点別に各々4匹に分け,DN群は,0日後5匹,3日後4匹,1,2,4,8週後は各6匹に分けた。その後,ケージ飼育とし各時期に麻酔下で灌流固定を施しヒラメ筋とアキレス腱-踵骨部を採取した。ヒラメ筋は筋湿重量を計測し,踵骨は後固定を施し,続いてEDTAで脱灰した。パラフィン包埋したサンプルブロックからミクロトームで薄切切片を作成し,Picrosirius Red染色後に偏光顕微鏡で観察した。また,顕微鏡に設置したCCDカメラにて撮影した組織画像を画像処理ソフトにて組織形態計測に供した。コラーゲン線維束走行の規則性及び平行性の変化ついては,隣接するコラーゲン線維束における走行角度の差の絶対値を算出し平行性の検討を実施した。走行角度の計測は,コラーゲン線維束の走行方向を直線でトレースした。波状構造の深さの変化については,凸部の二辺の距離と隣り合う凹間の距離から隣り合う凹間からの高さ(深さ)を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属機関の動物実験委員会の倫理承認を得て行った。
【結果】
ヒラメ筋湿重量はDN群3日後から同週齢の他群に対し有意に低下した(p<0.05)。一方,enthesis石灰化軟骨層表層におけるコラーゲン線維束の平行性については各群間に有意差は認められなかったが,DN群8週後の0°~5°の角度をなす分布割合が同週齢の他群と比較して低下する傾向にあった。また,深さについてはDN群の術後4週目,8週目において他群に比べ有意な差が認められた(p<0.05)。
【考察】
本実験の結果から,筋湿重量はDN処置後3日目より低下するのに対し,enthesisの構造的変化はDN処置後4週目以降より波状構造の変化が起こり始め,コラーゲン線維束走行は8週目以降に変化することが示唆された。したがって,筋の量的変化は比較的早期から開始するのに対し,enthesisの構造は長期間保持され,その変化時期に大きな差異があることが明らかとなった。一方で,構造因子はその力学的強度を規定する一因子であることから,力学的強度についても今後検討する必要性があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
腱板断裂などテノトミー状態で長期間放置した場合や靭帯断裂後の腱移植による再建術などenthesisリモデリングと力学的ストレスとの関係については不明な点が多い。よって,運動療法を施行する理学療法において,その一端を明らかにすることは意義あるものである。
腱・靭帯と骨との付着部はenthesisと呼ばれ,構造的に4層構造を呈し,腱・靭帯の実質部である線維組織層,非石灰化線維軟骨層,石灰化線維軟骨層そして骨層からなることが知られている。(Woo et al, 1988)。Enthesisの役割として,その構造から力学的ストレスを分散させる合理性を有している。そして,石灰化線維軟骨層コラーゲン線維束の走行は表層と深層で異なり,表層では腱・靭帯の走行方向に連続して直線的に骨へ侵入しているのに対し,深層部では細目状の走行を認める。これは,表層では腱・靭帯からの牽引力によるメカニカルストレスが構造決定に関与し,深層では圧迫ストレスに適応した構造を呈するためと考えられている。その他にも,石灰化線維軟骨層と骨層間のインターフェイスはメカニカルストレス強度に依存し,より複雑に深くなることで破断しないための構造をなすと考えられている(Kumai et al,2010)。これらのことより,enthesis石灰化線維軟骨層のリモデリングによる構造決定には,メカニカルストレス方向によりコラーゲン線維束走行の規則性及び平行性が保たれ,ストレス強度によりコラーゲン線維束の深さが変化すると推察される。しかし,両者がストレス方向と強度により構造決定をなしているかについては検証がなされていない。そこで本研究では,坐骨神経切除により下腿三頭筋を不活動とした不動モデルラットを用いて,メカニカルストレスの低下がアキレス腱enthesis石灰化線維軟骨層の表層部における構造決定に影響しているのかを明らかにするため,コラーゲン線維束走行方向と波状構造の深さから経時的に検討した。
【方法】
7週齢のWistar系雄性ラット81匹を用いて,アキレス腱が踵骨に付着するenthesisの石灰化線維軟骨層表層を対象とした。各ラットは,対照群(Cont群),偽手術群(Sham群),坐骨神経切除群(DN群)の3群へ無作為にグルーピングした(24匹/Cont群・Sham群,33匹/DN群)。さらに,実験開始から0,3日後,1,2,4,8週後の各時点でサンプリングをおこなうため,CONT群,Sham群は各時点別に各々4匹に分け,DN群は,0日後5匹,3日後4匹,1,2,4,8週後は各6匹に分けた。その後,ケージ飼育とし各時期に麻酔下で灌流固定を施しヒラメ筋とアキレス腱-踵骨部を採取した。ヒラメ筋は筋湿重量を計測し,踵骨は後固定を施し,続いてEDTAで脱灰した。パラフィン包埋したサンプルブロックからミクロトームで薄切切片を作成し,Picrosirius Red染色後に偏光顕微鏡で観察した。また,顕微鏡に設置したCCDカメラにて撮影した組織画像を画像処理ソフトにて組織形態計測に供した。コラーゲン線維束走行の規則性及び平行性の変化ついては,隣接するコラーゲン線維束における走行角度の差の絶対値を算出し平行性の検討を実施した。走行角度の計測は,コラーゲン線維束の走行方向を直線でトレースした。波状構造の深さの変化については,凸部の二辺の距離と隣り合う凹間の距離から隣り合う凹間からの高さ(深さ)を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属機関の動物実験委員会の倫理承認を得て行った。
【結果】
ヒラメ筋湿重量はDN群3日後から同週齢の他群に対し有意に低下した(p<0.05)。一方,enthesis石灰化軟骨層表層におけるコラーゲン線維束の平行性については各群間に有意差は認められなかったが,DN群8週後の0°~5°の角度をなす分布割合が同週齢の他群と比較して低下する傾向にあった。また,深さについてはDN群の術後4週目,8週目において他群に比べ有意な差が認められた(p<0.05)。
【考察】
本実験の結果から,筋湿重量はDN処置後3日目より低下するのに対し,enthesisの構造的変化はDN処置後4週目以降より波状構造の変化が起こり始め,コラーゲン線維束走行は8週目以降に変化することが示唆された。したがって,筋の量的変化は比較的早期から開始するのに対し,enthesisの構造は長期間保持され,その変化時期に大きな差異があることが明らかとなった。一方で,構造因子はその力学的強度を規定する一因子であることから,力学的強度についても今後検討する必要性があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
腱板断裂などテノトミー状態で長期間放置した場合や靭帯断裂後の腱移植による再建術などenthesisリモデリングと力学的ストレスとの関係については不明な点が多い。よって,運動療法を施行する理学療法において,その一端を明らかにすることは意義あるものである。