第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅4

Sat. May 31, 2014 1:00 PM - 1:50 PM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:養老栄樹(社会福祉法人小平市社会福祉協議会あおぞら福祉センター機能訓練「歩」)

生活環境支援 ポスター

[0958] 地域包括ケアシステムの理解に及ぼす要因の検討と法人内連携について

三宅英司1,2, 荒尾雅文3, 渡辺要一3, 宮崎之男4 (1.医療法人社団永生会永生クリニックリハビリテーション科, 2.杏林大学大学院保健学研究科内部障害系理学療法学研究室, 3.医療法人社団永生会法人本部リハビリ統括管理部, 4.医療法人社団永生会永生クリニック診療部)

Keywords:地域包括ケアシステム, 他職種連携, 多施設間調査

【はじめに,目的】
地域包括ケアシステムは,介護,医療,予防を専門的なサービスの構成要素として,相互に関係し連携しながら在宅の生活を支えるシステムである。当法人は,八王子市内に病院2施設,クリニック1施設,介護老人保健施設1施設,訪問看護ステーション4施設を有し,平成25年度から地域包括ケアプロジェクトが発足した。本研究の目的は,地域包括ケアシステムを実施するために,地域包括ケアシステムの理解に影響を及ぼす要因を検討することと,他職種間および施設間連携の問題を明らかにして対策を検討することである。
【方法】
対象は,当法人の病院,クリニック,介護老人保健施設,訪問看護ステーションに所属する理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,医師,看護師(以下PT,OT,ST,Dr,Nrs)の合計723人であった。調査は,平成25年8月に独自に作成した質問紙を用いて実施した。質問項目は,職種,所属施設,経験年数,当法人内における異動経験の有無,地域包括ケアシステムの理解の有無,施設間連携で困った経験の有無であった。さらに施設間連携における困った内容10項目と希望する対策8項目について,あてはまるかどうかについて質問した。統計学的検討は,地域包括ケアシステムの理解の有無を従属変数として,職種,所属施設,経験年数,異動経験の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。また連携で困った経験の有無の割合を職種別と施設別に算出して,連携で困った経験に職種と所属施設が関連するかについてそれぞれχ2検定を行った。有意水準は5%未満とした。なお所属施設は医療系施設と介護系施設に再分類して検討を行った。連携で困った内容と希望する対策は,それぞれ割合を算出し比較を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則り,研究の目的,参加の任意性と同意撤回の自由,方法,期間,結果の報告について説明し,質問紙への回答をもって同意とした。
【結果】
質問紙の回収率は79.8%(配布部数723部,回収部数577部),職種別人数はPT74人,OT36人,ST24人,Dr29人,Nrs383人,所属施設別人数は医療系施設483人,介護系施設56人,平均経験年数は11.6±8.5年,異動経験はあり80人(14.7%),なし462人(84.6%)であった。地域包括ケアシステムの理解の有無は,あり215人(39.4%),なし308人(56.4%)であった。ロジスティック回帰分析から,職種(P=0.017),所属施設(P=0.041),異動経験の有無(P=0.049)が有意に抽出された。オッズ比(Odds Ratio:以下OR)と95%信頼区間(Confidence Interval:以下CI)は,所属施設OR=2.0,CI:1.02-3.74,異動経験の有無OR=0.6,CI:0.33-0.99であった。職種は,PTに対してOTが有意であり(P=0.032),OR=2.7,CI:1.08-6.57であった。連携で困った割合は,職種別はPT83.6%,OT91.7%,ST87.0%,Dr52.2%,Nrs62.8%で,所属施設別は医療系施設65.8%,介護系施設87.7%であり,リハビリスタッフと介護系施設が高率であった。連携で困った経験の有無に関するχ2検定は,職種(P=0.000),所属施設(P=0.001)のそれぞれと有意な関連を認めた。法人内連携で困った内容の上位3項目は,申し送り内容について58.4%,連携先の担当者がわからない31.4%,連携相手との方向性が違った26.1%で,希望する対策における上位3項目は,各施設の説明会58.8%,各施設の見学会52.0%,地域包括ケアシステムと連携に関する勉強会46.3%であった。
【考察】
地域包括ケアシステムの理解について,職種と所属施設,異動経験の有無が有意に抽出された。職種が有意である理由は,職種によって連携内容や頻度に差があるためと考えた。介護系施設が医療系施設より理解が良い理由は,地域包括システムが在宅医療を重要としているためと考えた。また異動経験ありがなしより理解が良い理由は,地域包括ケアシステムが多施設間の連携を重要としているためと考えた。法人内連携で困った経験が職種と所属施設のそれぞれと有意な関連を認め,リハビリスタッフと介護系施設の割合が高率であった理由は,リハビリスタッフはDrとNrsに比べて日常生活や生活の質の向上にかかわる内容が連携で必要となり,介護系施設はサービス提供において多くの職種と連携する機会が多いためと考えた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究からも地域包括ケアシステムは,他職種間連携と施設間連携が重要であることが示唆された。理学療法士において法人内の異動を促進し介護系施設での職務を経験することは,地域包括ケアシステムを理解するために有効であると考える。さらに,理学療法士が他職種や施設間で連携を円滑に行うためには,共通の申し送り項目を決定することと連携先施設の説明会や見学を行うことが有効と考える。