[0969] 鏡視下腱板修復術後の棘上筋厚と外転筋力の関連について
Keywords:腱板断裂, 棘上筋厚, 外転筋力
【はじめに,目的】
肩関節腱板修復術後の腱板筋力の推移に関する報告は多い。畑らは,腱板断裂修復術後患者の棘上筋厚は断裂サイズが2.2cm以下の場合改善傾向にあると報告している。また,大沢らは外転筋力改善率とJOAスコアには正の相関があるとし,外転筋力は術後成績の指標になると報告している。しかし,外転筋力の改善と棘上筋の厚さとの関係に関する報告は散見されるが明確なものはない。この外転筋力の改善と棘上筋厚との関係性が明確になれば,ある程度MRI上から筋力の回復具合が予測できると考えた。また,これらの報告は測定位置により違いが出ている。そこで今回の研究の目的は,MRI上での異なる測定位置での棘上筋の厚さを術後外転筋力と比較し,関連があるかを調査検討することとした。
【方法】
対象は当院にて鏡視下腱板修復術を施行した20名20肩,全例において断裂サイズは小断裂および中断裂とし,大断裂および広範囲断裂は除外した。棘上筋厚は,磁気共鳴画像装置(HITACHI社製0.4Tオープン型MRI)にて撮像した斜位矢状断にて,2つのスライスにて測定を行った。1つ目のスライスとして関節窩レベルでのスライス(以下関節窩レベル)とし,2つ目のスライスとして関節窩より3cm内側にあたる肩甲骨が完全にY字描出される最も外側のスライス(以下肩甲骨Y字描出レベル)とした。それぞれのスライスにおける筋の厚さを,Synapse viewerにて0.1mm単位で3回測定し平均を求めた。また,棘上筋厚の測定値に対し分散分析にて解析し級内相関係数を求め検者内信頼性の検討を行った。術後,腱板筋力の経過は日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)の,総合機能である外転筋力(5点満点)と耐久力(5点満点)の合計点(以下筋力評価)を用いた。2つのスライスの棘上筋厚と筋力評価共に術後3・6・12ヶ月時に測定し,Spearman順位相関係数にて統計処理し相関を求めた。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,全ての対象者に対し研究に関する十分な説明を行い,同意を得た上で実施した。
【結果】
棘上筋厚は関節窩レベルにて平均で術後3ヶ月11.7±2.7mm,術後6ヶ月12.2±3mm,術後12ヶ月12.6±3mmであり,肩甲骨Y字描出レベルにて平均で術後3ヶ月14.8±2.6mm,術後6ヶ月15.3±2.9mm,術後12ヶ月15.7±2.9mmであった。筋力評価は平均で術後3ヶ月5.3±3点,術後6ヶ月7.2±2.5点,術後12ヶ月8.5±1.6点であった。関節窩レベルの棘上筋厚と筋力評価の間には相関関係は認められなかったが,肩甲骨Y字描出レベルの棘上筋厚と筋力評価の相関関係は3ヶ月r=0.71,6ヶ月r=0.78,12ヶ月r=0.63であり,強い正の相関がみられた(P<0.01)。また,級内相関係数は0.91であり良好な結果であった。
【考察】
肩甲骨Y字描出レベルでの棘上筋厚と筋力評価との間には正の相関が認められた。しかし,関節窩レベルでの棘上筋厚と筋力評価との間には相関は認めらなかった。肩甲骨Y字描出レベルでの棘上筋厚は,術後の外転筋力と関連していることが推察された。先行研究では関節窩レベルのスライスにおける棘上筋厚の変化は認めないとの報告や,横断面積と筋力との関係性はないとの報告が多い。一方,畑らは肩甲骨Y字描出部における棘上筋厚は断裂サイズが2.2cm以下の場合改善傾向にあるとしている。また,岩噌らは筋容積を反映するスライドは関節窩から3.5cmと報告している。今回の研究のように,断裂サイズが小断裂および中断裂程度の症例でれば,肩甲骨Y字描出部における棘上筋筋腹部での筋厚の測定により,術後外転筋力の予測が立てられると推察した。術後外転筋力に関しては疼痛の関連などは考えられるが,今回の研究では棘上筋厚と筋力評価の項目のみでの検討であるため,今後は疼痛との関係や三角筋厚との関係を検討し,術後の外転筋力に影響を及ぼす因子をさらに明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
MRIでの肩甲骨Y字描出レベルで棘上筋厚を確認することは,ある程度外転筋力の回復具合を予測することが可能であることが分かった。MRIによる棘上筋厚の測定は肩関節の外転筋力を予測するにあたり,理学療法を行う上で有用な評価ができることが示唆された。
肩関節腱板修復術後の腱板筋力の推移に関する報告は多い。畑らは,腱板断裂修復術後患者の棘上筋厚は断裂サイズが2.2cm以下の場合改善傾向にあると報告している。また,大沢らは外転筋力改善率とJOAスコアには正の相関があるとし,外転筋力は術後成績の指標になると報告している。しかし,外転筋力の改善と棘上筋の厚さとの関係に関する報告は散見されるが明確なものはない。この外転筋力の改善と棘上筋厚との関係性が明確になれば,ある程度MRI上から筋力の回復具合が予測できると考えた。また,これらの報告は測定位置により違いが出ている。そこで今回の研究の目的は,MRI上での異なる測定位置での棘上筋の厚さを術後外転筋力と比較し,関連があるかを調査検討することとした。
【方法】
対象は当院にて鏡視下腱板修復術を施行した20名20肩,全例において断裂サイズは小断裂および中断裂とし,大断裂および広範囲断裂は除外した。棘上筋厚は,磁気共鳴画像装置(HITACHI社製0.4Tオープン型MRI)にて撮像した斜位矢状断にて,2つのスライスにて測定を行った。1つ目のスライスとして関節窩レベルでのスライス(以下関節窩レベル)とし,2つ目のスライスとして関節窩より3cm内側にあたる肩甲骨が完全にY字描出される最も外側のスライス(以下肩甲骨Y字描出レベル)とした。それぞれのスライスにおける筋の厚さを,Synapse viewerにて0.1mm単位で3回測定し平均を求めた。また,棘上筋厚の測定値に対し分散分析にて解析し級内相関係数を求め検者内信頼性の検討を行った。術後,腱板筋力の経過は日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)の,総合機能である外転筋力(5点満点)と耐久力(5点満点)の合計点(以下筋力評価)を用いた。2つのスライスの棘上筋厚と筋力評価共に術後3・6・12ヶ月時に測定し,Spearman順位相関係数にて統計処理し相関を求めた。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,全ての対象者に対し研究に関する十分な説明を行い,同意を得た上で実施した。
【結果】
棘上筋厚は関節窩レベルにて平均で術後3ヶ月11.7±2.7mm,術後6ヶ月12.2±3mm,術後12ヶ月12.6±3mmであり,肩甲骨Y字描出レベルにて平均で術後3ヶ月14.8±2.6mm,術後6ヶ月15.3±2.9mm,術後12ヶ月15.7±2.9mmであった。筋力評価は平均で術後3ヶ月5.3±3点,術後6ヶ月7.2±2.5点,術後12ヶ月8.5±1.6点であった。関節窩レベルの棘上筋厚と筋力評価の間には相関関係は認められなかったが,肩甲骨Y字描出レベルの棘上筋厚と筋力評価の相関関係は3ヶ月r=0.71,6ヶ月r=0.78,12ヶ月r=0.63であり,強い正の相関がみられた(P<0.01)。また,級内相関係数は0.91であり良好な結果であった。
【考察】
肩甲骨Y字描出レベルでの棘上筋厚と筋力評価との間には正の相関が認められた。しかし,関節窩レベルでの棘上筋厚と筋力評価との間には相関は認めらなかった。肩甲骨Y字描出レベルでの棘上筋厚は,術後の外転筋力と関連していることが推察された。先行研究では関節窩レベルのスライスにおける棘上筋厚の変化は認めないとの報告や,横断面積と筋力との関係性はないとの報告が多い。一方,畑らは肩甲骨Y字描出部における棘上筋厚は断裂サイズが2.2cm以下の場合改善傾向にあるとしている。また,岩噌らは筋容積を反映するスライドは関節窩から3.5cmと報告している。今回の研究のように,断裂サイズが小断裂および中断裂程度の症例でれば,肩甲骨Y字描出部における棘上筋筋腹部での筋厚の測定により,術後外転筋力の予測が立てられると推察した。術後外転筋力に関しては疼痛の関連などは考えられるが,今回の研究では棘上筋厚と筋力評価の項目のみでの検討であるため,今後は疼痛との関係や三角筋厚との関係を検討し,術後の外転筋力に影響を及ぼす因子をさらに明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
MRIでの肩甲骨Y字描出レベルで棘上筋厚を確認することは,ある程度外転筋力の回復具合を予測することが可能であることが分かった。MRIによる棘上筋厚の測定は肩関節の外転筋力を予測するにあたり,理学療法を行う上で有用な評価ができることが示唆された。