[1003] 上腕骨小頭障害の要因
キーワード:野球肘, 検診事業, 上腕骨小頭障害
【はじめに,目的】
成長期の野球肘の中で,上腕骨小頭障害(離断性骨軟骨炎;OCD)は永続的な障害となりうるため,早期発見の重要性が高く,近年,野球肘検診は全国で広まりつつある。当院にて行った野球肘検診に関し,その活動の報告とともに,上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検証を行ったので,ここに報告する。
【方法】
平成22年から25年に行われた野球肘検診に参加した小学1年生から6年生(平均年齢11歳3ヶ月±5歳)の少年野球団,及びリトルリーグに所属する男子544名,女子17名,計561名を対象とした。これらに対しアンケートによる問診,超音波検査,レントゲン撮影,理学検査を行い,その結果から上腕骨小頭障害群(以下O群)と,健常群(以下N群)528名に分類し,比較検討を行った。
上腕骨小頭障害の判定は,両側の肘関節に対し超音波エコー(日立アロカメディカル社製ProSoundα7)と,3方向のレントゲン撮影を施行し,医師の診断により行った。
遠投距離については,事前に各チームに依頼し,C級軟式ボールを使用し,助走制限のない条件下で距離の計測を行い,回答があったものを集計した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に沿って,事前に配布した検診内容の案内書に研究目的を明記し,各家庭に配布した上で同意に基づいて参加申し込みをいただき,倫理的配慮を行った。また当院倫理委員会の承認を得た。
【結果】
O群33名,N群528名であり,O群は全体の5.88%であった。
遠投距離は,O群は20名,回答率60.6%,N群は309名,回答率58.5%の回答を得た。結果は,全体ではO群45.71±8.67m,N群43.35±10.25mであった。小学6年生ではO群56.52±9.80m,N群50.74±9.04m。小学5年生ではO群45.84±3.54m,N群44.13±7.41m。小学4年生ではO群41.62±6.80m,N群36.85±6.93m。小学3年生ではO群33.70±3.82m,N群30.61±6.79mであった。
【考察】
遠投距離は各学年ともO群で高く,O群の方が高い投球能力を示した。またアンケート結果から,野球経験年数もO群3年1ヶ月,N群2年11ヶ月と,O群でやや長い傾向にあった。さらに,投手経験においてもO群100%,N群では73.14%であった。
今回の検討から,上腕骨小頭障害群は,早い段階から野球を始め,高い投球能力を有するものに生じる傾向があった。つまり,低学年から野球を開始し,繰り返しの動作により動作を習得してきたことや,投手や捕手といった投球する機会の多いポジションにつくことは,肩,肘関節に負荷がかかりやすいことが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
今回,主に上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検討を行ったが,上腕骨小頭障害と関連の大きい理学所見なども明らかにできれば,さらなる障害予防につながると考えられ,今後の検討課題としたい。
成長期の野球肘の中で,上腕骨小頭障害(離断性骨軟骨炎;OCD)は永続的な障害となりうるため,早期発見の重要性が高く,近年,野球肘検診は全国で広まりつつある。当院にて行った野球肘検診に関し,その活動の報告とともに,上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検証を行ったので,ここに報告する。
【方法】
平成22年から25年に行われた野球肘検診に参加した小学1年生から6年生(平均年齢11歳3ヶ月±5歳)の少年野球団,及びリトルリーグに所属する男子544名,女子17名,計561名を対象とした。これらに対しアンケートによる問診,超音波検査,レントゲン撮影,理学検査を行い,その結果から上腕骨小頭障害群(以下O群)と,健常群(以下N群)528名に分類し,比較検討を行った。
上腕骨小頭障害の判定は,両側の肘関節に対し超音波エコー(日立アロカメディカル社製ProSoundα7)と,3方向のレントゲン撮影を施行し,医師の診断により行った。
遠投距離については,事前に各チームに依頼し,C級軟式ボールを使用し,助走制限のない条件下で距離の計測を行い,回答があったものを集計した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に沿って,事前に配布した検診内容の案内書に研究目的を明記し,各家庭に配布した上で同意に基づいて参加申し込みをいただき,倫理的配慮を行った。また当院倫理委員会の承認を得た。
【結果】
O群33名,N群528名であり,O群は全体の5.88%であった。
遠投距離は,O群は20名,回答率60.6%,N群は309名,回答率58.5%の回答を得た。結果は,全体ではO群45.71±8.67m,N群43.35±10.25mであった。小学6年生ではO群56.52±9.80m,N群50.74±9.04m。小学5年生ではO群45.84±3.54m,N群44.13±7.41m。小学4年生ではO群41.62±6.80m,N群36.85±6.93m。小学3年生ではO群33.70±3.82m,N群30.61±6.79mであった。
【考察】
遠投距離は各学年ともO群で高く,O群の方が高い投球能力を示した。またアンケート結果から,野球経験年数もO群3年1ヶ月,N群2年11ヶ月と,O群でやや長い傾向にあった。さらに,投手経験においてもO群100%,N群では73.14%であった。
今回の検討から,上腕骨小頭障害群は,早い段階から野球を始め,高い投球能力を有するものに生じる傾向があった。つまり,低学年から野球を開始し,繰り返しの動作により動作を習得してきたことや,投手や捕手といった投球する機会の多いポジションにつくことは,肩,肘関節に負荷がかかりやすいことが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
今回,主に上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検討を行ったが,上腕骨小頭障害と関連の大きい理学所見なども明らかにできれば,さらなる障害予防につながると考えられ,今後の検討課題としたい。