[1029] 回復期病院の疾患別にみる入院時の栄養状態と予後に関する検証
Keywords:栄養状態, 予後予測, 回復期病院
【はじめに,目的】
栄養状態に関する近年の研究によると,リハビリテーション病棟入院患者の5~8割に低栄養が認められることが報告されており,当院の栄養サポートチーム(NST)における同様の研究においても全入院患者の3割に低栄養状態が認められている。リハビリテーション(以下リハ)において低栄養状態は筋力・耐久性の改善の阻害因子として報告されている。そこで,入院時の栄養状態が予後に及ぼす影響につき検証した。
【方法】
平成24年5月14日~平成25年5月31日に当院を入院し,退院した患者(急性期転院を除く)724名を対象とした。疾患別内訳は脳血管疾患患者320名,運動器疾患患者347名,廃用症候群患者57名で,性別は男性295名,女性429名,平均年齢74.6歳。入院時のAlb3.1g/dl以下もしくはBMI18未満を低栄養群,Alb3.1g/dl以上かつBMI18以上を適正栄養群とし,2群間における在院日数,在宅復帰率,入院時FIM,退院時FIM,FIM利得について比較検討を行った。統計学的解析はt検定(対応なし),χ2検定,Mann-Whitney U検定を行い,p<0.05を有意差ありとした。
【倫理的配慮,説明と同意】
すべて匿名化された既存のデータを用いて検討を行った。個人を特定しない診療情報の利用については,入院時に全入院患者に対して同意を得た。
【結果】
脳血管疾患患者において適正栄養群は男性143名,女性108名の計251名で全体78%,低栄養群は男33名,女性36名の計69名で全体の22%であった。在院日数は適正栄養群91日,低栄養群103日で低栄養群が長く,在宅復帰率も適正栄養群88%に対し,低栄養群は81%と低かった。入院時FIM値は適正栄養群81点,低栄養群65点で低栄養群が有意に低く,退院時FIMにおいても適正栄養群97点,低栄養群85点で低栄養群が有意に低かった。FIM利得に関しては適正栄養群15.8点に対し,低栄養群19.1点であった。FIM効率に関しては適正栄養群0.33に対し,低栄養群0.26であった。
運動器疾患患者において適正栄養群は男性59名,女性164名の計223名で全体の64%,低栄養群は男性26名,女性98名の計124名で全体の36%であった。在院日数は適正栄養群64日,低栄養群72日で低栄養群が有意に長く,在宅復帰率も適正栄養群95%に対し,低栄養群は83%と有意に低かった。入院時FIM値は適正栄養群92点,低栄養群76点で低栄養群が有意に低く,退院時FIMにおいても適正栄養群106点,低栄養群89点で低栄養群が有意に低かった。FIM利得に関しては適正栄養群13.2点に対し,低栄養群13.4点であった。FIM効率は適正栄養群0.25,低栄養群0.19で適正栄養群が有意に高かった。
廃用症候群患者において適正栄養群は男性14名,女性12名の計26名で全体の46%,低栄養群は男性20名,女性11名の計31名で全体の54%であった。在院日数は適正栄養群66日,低栄養群71日で低栄養群が長く,在宅復帰率は適正栄養群88%に対し,低栄養群は87%とほぼ同様であった。入院時FIM値は適正栄養群85点,低栄養群80点で低栄養群が低く,退院時FIMにおいても適正栄養群99点,低栄養群98点でほぼ同様であった。FIM利得に関しては適正栄養群14.1点に対し,低栄養群18.0点であった。FIM効率に関しては適正栄養群0.19に対し,低栄養群0.26であった。
【考察】
脳血管疾患,運動器疾患においてはFIM値,在院日数,在宅復帰率の結果から入院時の栄養状態は予後に与える影響が大きいことが示された。このため,入院時低栄養者に対しては早期にNSTが介入し栄養状態を改善させることが良好な予後の獲得につながるのではないかと考える。また負荷量の考慮など栄養状態に合わせたリハ介入を行っていく必要があることが考えられる。廃用症候群に関しては入院時の栄養状態でリハ効果に差がみられなかったが,低栄養の患者群ではNSTの介入により入院中に栄養状態が改善してリハ効果が現れている可能性がある。今後,退院時の栄養状態あるいは栄養状態の変化に伴うリハ効果の比較を行う必要がある。全ての疾患群でFIM利得に関しては低栄養群の方が高かったが,低栄養群は入院時FIM値が低く,点数的改善が得られやすかった為ではないかと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果で,脳血管疾患,運動器疾患では入院時の栄養状態が予後に影響を及ぼす事が示唆された。回復期において栄養状態を考慮することが安全で有効な理学療法に繋がると考えられる。
栄養状態に関する近年の研究によると,リハビリテーション病棟入院患者の5~8割に低栄養が認められることが報告されており,当院の栄養サポートチーム(NST)における同様の研究においても全入院患者の3割に低栄養状態が認められている。リハビリテーション(以下リハ)において低栄養状態は筋力・耐久性の改善の阻害因子として報告されている。そこで,入院時の栄養状態が予後に及ぼす影響につき検証した。
【方法】
平成24年5月14日~平成25年5月31日に当院を入院し,退院した患者(急性期転院を除く)724名を対象とした。疾患別内訳は脳血管疾患患者320名,運動器疾患患者347名,廃用症候群患者57名で,性別は男性295名,女性429名,平均年齢74.6歳。入院時のAlb3.1g/dl以下もしくはBMI18未満を低栄養群,Alb3.1g/dl以上かつBMI18以上を適正栄養群とし,2群間における在院日数,在宅復帰率,入院時FIM,退院時FIM,FIM利得について比較検討を行った。統計学的解析はt検定(対応なし),χ2検定,Mann-Whitney U検定を行い,p<0.05を有意差ありとした。
【倫理的配慮,説明と同意】
すべて匿名化された既存のデータを用いて検討を行った。個人を特定しない診療情報の利用については,入院時に全入院患者に対して同意を得た。
【結果】
脳血管疾患患者において適正栄養群は男性143名,女性108名の計251名で全体78%,低栄養群は男33名,女性36名の計69名で全体の22%であった。在院日数は適正栄養群91日,低栄養群103日で低栄養群が長く,在宅復帰率も適正栄養群88%に対し,低栄養群は81%と低かった。入院時FIM値は適正栄養群81点,低栄養群65点で低栄養群が有意に低く,退院時FIMにおいても適正栄養群97点,低栄養群85点で低栄養群が有意に低かった。FIM利得に関しては適正栄養群15.8点に対し,低栄養群19.1点であった。FIM効率に関しては適正栄養群0.33に対し,低栄養群0.26であった。
運動器疾患患者において適正栄養群は男性59名,女性164名の計223名で全体の64%,低栄養群は男性26名,女性98名の計124名で全体の36%であった。在院日数は適正栄養群64日,低栄養群72日で低栄養群が有意に長く,在宅復帰率も適正栄養群95%に対し,低栄養群は83%と有意に低かった。入院時FIM値は適正栄養群92点,低栄養群76点で低栄養群が有意に低く,退院時FIMにおいても適正栄養群106点,低栄養群89点で低栄養群が有意に低かった。FIM利得に関しては適正栄養群13.2点に対し,低栄養群13.4点であった。FIM効率は適正栄養群0.25,低栄養群0.19で適正栄養群が有意に高かった。
廃用症候群患者において適正栄養群は男性14名,女性12名の計26名で全体の46%,低栄養群は男性20名,女性11名の計31名で全体の54%であった。在院日数は適正栄養群66日,低栄養群71日で低栄養群が長く,在宅復帰率は適正栄養群88%に対し,低栄養群は87%とほぼ同様であった。入院時FIM値は適正栄養群85点,低栄養群80点で低栄養群が低く,退院時FIMにおいても適正栄養群99点,低栄養群98点でほぼ同様であった。FIM利得に関しては適正栄養群14.1点に対し,低栄養群18.0点であった。FIM効率に関しては適正栄養群0.19に対し,低栄養群0.26であった。
【考察】
脳血管疾患,運動器疾患においてはFIM値,在院日数,在宅復帰率の結果から入院時の栄養状態は予後に与える影響が大きいことが示された。このため,入院時低栄養者に対しては早期にNSTが介入し栄養状態を改善させることが良好な予後の獲得につながるのではないかと考える。また負荷量の考慮など栄養状態に合わせたリハ介入を行っていく必要があることが考えられる。廃用症候群に関しては入院時の栄養状態でリハ効果に差がみられなかったが,低栄養の患者群ではNSTの介入により入院中に栄養状態が改善してリハ効果が現れている可能性がある。今後,退院時の栄養状態あるいは栄養状態の変化に伴うリハ効果の比較を行う必要がある。全ての疾患群でFIM利得に関しては低栄養群の方が高かったが,低栄養群は入院時FIM値が低く,点数的改善が得られやすかった為ではないかと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果で,脳血管疾患,運動器疾患では入院時の栄養状態が予後に影響を及ぼす事が示唆された。回復期において栄養状態を考慮することが安全で有効な理学療法に繋がると考えられる。