[1051] 脊椎圧迫骨折に対するBalloon Kyphoplasty施行患者の入院中の動作能力と疼痛評価
キーワード:BKP, VAS, ADL
【はじめに,目的】
従来,脊椎圧迫骨折に対しては安静臥床,装具療法,保存療法が主に行われてきた。2011年1月よりBalloon kyphoplasty(以下BKP)が公的保険適応となり,低侵襲の経皮的椎体形成術として着目されている。BKPの先行研究では,治療効果として良好な疼痛緩和と椎体高の回復,局所後弯角の改善などが報告されているが,動作能力に着目した報告は少ない。本研究の目的は,当院にて脊椎圧迫骨折に対しBKPを施行した患者の術前・術直後・退院時の動作能力と疼痛を評価し,比較・検討を行うことである。
【方法】
対象は,脊椎圧迫骨折に対し当院にてBKPを施行した38例(男性10名,女性28名,年齢77.0±7.2歳)とした。方法は,術前,術直後,退院時の3群間にて基本動作,日常生活動作(以下ADL),疼痛を評価した。基本動作の評価は,Ability for basic movement scale(以下ABMS)を用い,合計点と各項目において検討し,ADLは,Barthel Index(以下BI)の合計点にて実施した。疼痛は,Visual Analogue Scale(以下VAS)を用いて評価を行った。また,BIとVASの相関関係を求めた。統計学的処理は,Friedman検定と多重比較検定(Tukey法),Spearmanの順位相関係数を用い比較した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得て実施した。また,個人情報保護を遵守し,集積データは個人が特定できないようにした。
【結果】
ABMSでは,術前平均21.6,術直後23.1,退院時24.1という結果となり,VASにおいては,術前68.2,術直後34.7,退院時20.4と3群間において有意差を認めた。BIでは,術前79.3,術直後86.3,退院時94.2と術前・退院時,術直後・退院時に有意差を認めた。ABMSの各項目の検討では,寝返り,起き上がりにおいて術前・退院時,術直後・退院時に有意差を認めた。座位保持においては,術前より高値を示し術前・退院時のみ有意差を認める結果となった。立ち上がりは3群間にて有意差を認め,立位保持は術前・術直後,術前・退院時に有意差を認め術前後での改善が大きい結果となった。BIとVASにおいて,術直後,退院時に相関を認めたが,術前,退院時のBI値に天井効果がみられた結果となった。
【考察】
結果より,疼痛に関しては3群間に有意差が認められ,BKP施行により即時的な除痛効果は得られているものの消失には至らず,退院時まで残存する結果となった。先行研究より,BKPの効果として術直後から疼痛が緩和し術後ADLの改善が見られるとされている。また,脊椎圧迫骨折は,骨折部以外にも関連痛が認められており深部組織の損傷により,筋緊張の亢進を招くと報告されている。以上より,BKP施行により骨折部の椎体回復による疼痛の軽減は認められたが,骨折部以外の他要因による疼痛は残存し改善に時間を要したと考える。基本動作に関しては,座位保持,立ち上がり,立位保持が術後早期より自立となったのに対し,寝返り,起き上がりの獲得には時間を要した。ADLは基本動作と比べ術前後の変化は少なく,退院時に改善傾向となった。脊椎圧迫骨折の症状として,体幹筋力の低下や寝返り・起き上がり時の疼痛増強を認め,疼痛により体幹の回旋が制限されると報告されている。よって,寝返り,起き上がり動作には体幹の回旋が含まれており疼痛の誘発や体幹筋の発揮不十分が生じたことが原因だと推察する。また,基本動作はADLを遂行するための手段であり,ADLは基本動作よりも複雑な動作が含まれていることから,より獲得に時間がかかったと考える。ADLと疼痛において,術直後,退院時共に相関が見られた。しかし,BIのデータに天井効果が認められたことをふまえると,ADL改善要因として除痛は挙げられるものの要因の一つであり,その他の因子も関連していることが示された。以上より,BKPを施行した患者は,即時的に疼痛が軽減しADLは改善傾向となるものの,寝返り・起き上がり動作やより複雑な動作であるADLの改善には時間を要することが示された。よって,術後早期の理学療法には骨折部周囲に負担のかからないADL指導が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
今回,脊椎圧迫骨折に対しBKPを施行した患者の入院中の基本動作,ADL,疼痛を評価し検討を行った。結果,理学療法士による入院中のADL指導の重要性が示唆され,今後は体幹機能,認知症との関連性の検討やADL阻害因子を明らかにすることが重要だと考えた。
従来,脊椎圧迫骨折に対しては安静臥床,装具療法,保存療法が主に行われてきた。2011年1月よりBalloon kyphoplasty(以下BKP)が公的保険適応となり,低侵襲の経皮的椎体形成術として着目されている。BKPの先行研究では,治療効果として良好な疼痛緩和と椎体高の回復,局所後弯角の改善などが報告されているが,動作能力に着目した報告は少ない。本研究の目的は,当院にて脊椎圧迫骨折に対しBKPを施行した患者の術前・術直後・退院時の動作能力と疼痛を評価し,比較・検討を行うことである。
【方法】
対象は,脊椎圧迫骨折に対し当院にてBKPを施行した38例(男性10名,女性28名,年齢77.0±7.2歳)とした。方法は,術前,術直後,退院時の3群間にて基本動作,日常生活動作(以下ADL),疼痛を評価した。基本動作の評価は,Ability for basic movement scale(以下ABMS)を用い,合計点と各項目において検討し,ADLは,Barthel Index(以下BI)の合計点にて実施した。疼痛は,Visual Analogue Scale(以下VAS)を用いて評価を行った。また,BIとVASの相関関係を求めた。統計学的処理は,Friedman検定と多重比較検定(Tukey法),Spearmanの順位相関係数を用い比較した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得て実施した。また,個人情報保護を遵守し,集積データは個人が特定できないようにした。
【結果】
ABMSでは,術前平均21.6,術直後23.1,退院時24.1という結果となり,VASにおいては,術前68.2,術直後34.7,退院時20.4と3群間において有意差を認めた。BIでは,術前79.3,術直後86.3,退院時94.2と術前・退院時,術直後・退院時に有意差を認めた。ABMSの各項目の検討では,寝返り,起き上がりにおいて術前・退院時,術直後・退院時に有意差を認めた。座位保持においては,術前より高値を示し術前・退院時のみ有意差を認める結果となった。立ち上がりは3群間にて有意差を認め,立位保持は術前・術直後,術前・退院時に有意差を認め術前後での改善が大きい結果となった。BIとVASにおいて,術直後,退院時に相関を認めたが,術前,退院時のBI値に天井効果がみられた結果となった。
【考察】
結果より,疼痛に関しては3群間に有意差が認められ,BKP施行により即時的な除痛効果は得られているものの消失には至らず,退院時まで残存する結果となった。先行研究より,BKPの効果として術直後から疼痛が緩和し術後ADLの改善が見られるとされている。また,脊椎圧迫骨折は,骨折部以外にも関連痛が認められており深部組織の損傷により,筋緊張の亢進を招くと報告されている。以上より,BKP施行により骨折部の椎体回復による疼痛の軽減は認められたが,骨折部以外の他要因による疼痛は残存し改善に時間を要したと考える。基本動作に関しては,座位保持,立ち上がり,立位保持が術後早期より自立となったのに対し,寝返り,起き上がりの獲得には時間を要した。ADLは基本動作と比べ術前後の変化は少なく,退院時に改善傾向となった。脊椎圧迫骨折の症状として,体幹筋力の低下や寝返り・起き上がり時の疼痛増強を認め,疼痛により体幹の回旋が制限されると報告されている。よって,寝返り,起き上がり動作には体幹の回旋が含まれており疼痛の誘発や体幹筋の発揮不十分が生じたことが原因だと推察する。また,基本動作はADLを遂行するための手段であり,ADLは基本動作よりも複雑な動作が含まれていることから,より獲得に時間がかかったと考える。ADLと疼痛において,術直後,退院時共に相関が見られた。しかし,BIのデータに天井効果が認められたことをふまえると,ADL改善要因として除痛は挙げられるものの要因の一つであり,その他の因子も関連していることが示された。以上より,BKPを施行した患者は,即時的に疼痛が軽減しADLは改善傾向となるものの,寝返り・起き上がり動作やより複雑な動作であるADLの改善には時間を要することが示された。よって,術後早期の理学療法には骨折部周囲に負担のかからないADL指導が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
今回,脊椎圧迫骨折に対しBKPを施行した患者の入院中の基本動作,ADL,疼痛を評価し検討を行った。結果,理学療法士による入院中のADL指導の重要性が示唆され,今後は体幹機能,認知症との関連性の検討やADL阻害因子を明らかにすることが重要だと考えた。