[1084] 後足部パッドの形状の違いが歩行立脚初期に与える影響
キーワード:後足部パッド, 立脚初期, フットスラップ
【目的】一般的に後足部パッドとしてヒールパッド,外側ヒールウェッジ,内側ヒールウェッジが使用されている。これらは踵骨部分へ貼付するため,立脚初期に作用させるものとして使用されている。前述以外にも入谷はヒールパッドと作用の異なる半ヒールパッドを紹介している。半ヒールパッドはヒールパッドと同じ方向に楔状の形状をしており,足長に対してヒールパッドの半分以下の長さである。入谷はヒールパッドと半ヒールパッドは歩行立脚初期の踵接地から足底接地までの足関節底屈の動き(以下フットスラップ)の時間的因子に関与していると述べている。しかし,これらのパッドの形状の違いが歩行に与える影響は明らかでない。本研究の目的はヒールパッドと半ヒールパッドが歩行立脚初期に与える影響を検証することである。
【方法】対象は,既往に整形外科的疾患を有さない健常成人12名とした。内訳は男性6名,女性6名,年齢20.1±1.9歳,身長166.2±6.7cm,体重61.4±9.1kg,BMI 21.9±2.2であった。方法は全例において右下肢の1)裸足歩行時のフットスラップに要する時間,2)フットスラップ時の前脛骨筋と腓腹筋内側頭の筋電図を測定した。フットスラップの時間計測にはフットスイッチを使用した。フットスイッチの貼付部位を足底部踵部後方と第5中足骨頭部とした。裸足歩行,ヒールパッド貼付歩行(以下ヒールパッド群),半ヒールパッド貼付歩行(以下半ヒールパッド群)の3条件にて検討した。歩行を3回測定し,各歩行において中間の3歩行周期のデータの計9歩行周期の平均値を解析データとして用いた。ヒールパッドと半ヒールパッドの高さは3mmとした。両パッドの貼付開始位置は踵骨隆起最後部より垂線を下ろした位置から開始し,ヒールパッドは外果前縁から垂線を下ろした位置までの長さとし,半ヒールパッドの足底部踵骨最大膨隆部までとした。各条件にて歩行速度が一定になるようにメトロノームを使用し,各条件にて至適速度での歩行を行わせた。表面筋電計にはMyosystem1400(Noraxon社製)を使用した。得られたデータをパソコンに取り込み,前脛骨筋と腓腹筋内側頭の最大収縮時に対する%MVCを求めた。統計的手法はSPSS Ver17.0を使用し,3条件の1)フットスラップに要する時間,2)フットスラップ時の前脛骨筋と腓腹筋内側頭の%MVCを一元配置分散分析にて3条件を比較した。また,有意水準を5%とした。
【説明と同意】対象者には研究の趣旨と内容,方法を十分に説明し,得られたデータは研究の目的以外には使用しないこと,および個人情報の漏洩に注意することについて説明し,同意を得た上で研究を開始した。
【結果】立脚初期のフットスラップに要する時間は,裸足歩行0.069±0.004秒,ヒールパッド群0.085±0.002秒,半ヒールパッド群0.054±0.004秒であり,3群間に有意な差がみられた。前脛骨筋の%MVCでは裸足37.6±9.4%,ヒールパッド群39.6±10.1%,半ヒールパッド群40.0±9.2%となり3群間に有意はみられなかった。腓腹筋内側頭の%MVCでは裸足13.9±5.3%,ヒールパッド群12.3±7.8%,半ヒールパッド群11.6±6.9%となり3群間に有意な差はみられなかった。裸足に比し,ヒールパッドではフットスラップが遅延し,半ヒールパッドでは早期に出現する結果となった。
【考察】裸足歩行に比し,ヒールパッド群ではフットスラップが遅くなり,半ヒールパッド群ではフットスラップが早期に出現することが明らかになった。ヒールパッドは裸足歩行に比し,立脚初期のフットスラップを遅延させ,足関節底屈角速度を小さくし,半ヒールパッドはフットスラップが早期に出現し,足関節底屈角速度を大きくすることがわかった。この変化は共に約0.15秒と小さいが,裸足歩行のフットスラップに要する時間の約0.07秒からの変化の割合としては約22%の変化は身体に十分な変化を与えると思われる。この短い時間でも変化の割合が大きくなることにより,実際の臨床では半ヒールパッドを処方することでフットスラップ時のブレーキ作用である前脛骨筋の負担が小さくなると考えられる。筋電図では3条件にての%MVCには変化がみられなかったが,フットスラップに要する時間に変化がみられたことより,筋収縮している時間には変化を与えられると考えられる。この立脚初期のフットスラップの変化は,立脚期を通しての歩行,特に矢状面の動きに影響を与えると思われる。今後は三次元動作解析装置や床反力計を用いて,両パッドが歩行に及ぼす影響を明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】臨床ではフットスラップ時の動きの変化を観察にて捉えていたが,今回の結果より臨床での観察の必要性を確認でき,理学療法士として自信をヒールパッドと半ヒールパッドを使用できる。
【方法】対象は,既往に整形外科的疾患を有さない健常成人12名とした。内訳は男性6名,女性6名,年齢20.1±1.9歳,身長166.2±6.7cm,体重61.4±9.1kg,BMI 21.9±2.2であった。方法は全例において右下肢の1)裸足歩行時のフットスラップに要する時間,2)フットスラップ時の前脛骨筋と腓腹筋内側頭の筋電図を測定した。フットスラップの時間計測にはフットスイッチを使用した。フットスイッチの貼付部位を足底部踵部後方と第5中足骨頭部とした。裸足歩行,ヒールパッド貼付歩行(以下ヒールパッド群),半ヒールパッド貼付歩行(以下半ヒールパッド群)の3条件にて検討した。歩行を3回測定し,各歩行において中間の3歩行周期のデータの計9歩行周期の平均値を解析データとして用いた。ヒールパッドと半ヒールパッドの高さは3mmとした。両パッドの貼付開始位置は踵骨隆起最後部より垂線を下ろした位置から開始し,ヒールパッドは外果前縁から垂線を下ろした位置までの長さとし,半ヒールパッドの足底部踵骨最大膨隆部までとした。各条件にて歩行速度が一定になるようにメトロノームを使用し,各条件にて至適速度での歩行を行わせた。表面筋電計にはMyosystem1400(Noraxon社製)を使用した。得られたデータをパソコンに取り込み,前脛骨筋と腓腹筋内側頭の最大収縮時に対する%MVCを求めた。統計的手法はSPSS Ver17.0を使用し,3条件の1)フットスラップに要する時間,2)フットスラップ時の前脛骨筋と腓腹筋内側頭の%MVCを一元配置分散分析にて3条件を比較した。また,有意水準を5%とした。
【説明と同意】対象者には研究の趣旨と内容,方法を十分に説明し,得られたデータは研究の目的以外には使用しないこと,および個人情報の漏洩に注意することについて説明し,同意を得た上で研究を開始した。
【結果】立脚初期のフットスラップに要する時間は,裸足歩行0.069±0.004秒,ヒールパッド群0.085±0.002秒,半ヒールパッド群0.054±0.004秒であり,3群間に有意な差がみられた。前脛骨筋の%MVCでは裸足37.6±9.4%,ヒールパッド群39.6±10.1%,半ヒールパッド群40.0±9.2%となり3群間に有意はみられなかった。腓腹筋内側頭の%MVCでは裸足13.9±5.3%,ヒールパッド群12.3±7.8%,半ヒールパッド群11.6±6.9%となり3群間に有意な差はみられなかった。裸足に比し,ヒールパッドではフットスラップが遅延し,半ヒールパッドでは早期に出現する結果となった。
【考察】裸足歩行に比し,ヒールパッド群ではフットスラップが遅くなり,半ヒールパッド群ではフットスラップが早期に出現することが明らかになった。ヒールパッドは裸足歩行に比し,立脚初期のフットスラップを遅延させ,足関節底屈角速度を小さくし,半ヒールパッドはフットスラップが早期に出現し,足関節底屈角速度を大きくすることがわかった。この変化は共に約0.15秒と小さいが,裸足歩行のフットスラップに要する時間の約0.07秒からの変化の割合としては約22%の変化は身体に十分な変化を与えると思われる。この短い時間でも変化の割合が大きくなることにより,実際の臨床では半ヒールパッドを処方することでフットスラップ時のブレーキ作用である前脛骨筋の負担が小さくなると考えられる。筋電図では3条件にての%MVCには変化がみられなかったが,フットスラップに要する時間に変化がみられたことより,筋収縮している時間には変化を与えられると考えられる。この立脚初期のフットスラップの変化は,立脚期を通しての歩行,特に矢状面の動きに影響を与えると思われる。今後は三次元動作解析装置や床反力計を用いて,両パッドが歩行に及ぼす影響を明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】臨床ではフットスラップ時の動きの変化を観察にて捉えていたが,今回の結果より臨床での観察の必要性を確認でき,理学療法士として自信をヒールパッドと半ヒールパッドを使用できる。