第49回日本理学療法学術大会

Presentation information

発表演題 口述 » 運動器理学療法 口述

骨・関節10

Sat. May 31, 2014 2:50 PM - 3:40 PM 第12会場 (5F 502)

座長:石垣直輝(船橋整形外科病院理学診療部)

運動器 口述

[1086] 低アーチ足の衝撃吸収機能の検討

清水新悟1,3, 後藤慎1, 伴留亜1, 春田みどり1, 山田春菜1, 横地正裕1, 花村浩克2, 猪田邦雄2, 混恵介3 (1.三仁会あさひ病院リハビリテーション科, 2.三仁会あさひ病院整形外科, 3.北海道科学大学保健医療学部)

Keywords:低アーチ足, 正常アーチ足, 衝撃吸収機能

【はじめに,目的】足部アーチは,歩行時や走行時などに足底から受ける力を吸収する衝撃吸収機能が存在すると言われている。衝撃を吸収する機能は疲労骨折や足底筋膜炎などの足部障害を防ぐ障害予防に大きく関わっている。しかし先行研究では,アーチの高さによる違いが衝撃吸収機能に与える影響までは明らかにされていない。そこで今回,我々は扁平足に見られる典型的な低アーチ衝撃吸収機能と正常アーチ衝撃吸収機能を定量的に比較し,その特性について検討したので報告する。
【方法】
被験者は,H25.8.13~8.23にアーチ機能を計測した健常者男性9例18足(平均年齢27.7歳,平均身長172.0cm,平均体重65.0kg),女性7例14足(平均年齢23.9歳,平均身長159.7cm,平均体重48.7kg)とした。なお被験者の除外基準としては,歩行時の疼痛や過去における下肢障害を伴う疾患の既往がある者とした。またボールを蹴る足は全例が右であった。
正常アーチ足と低アーチ足を分類する方法として我々は内側縦アーチ高率を使用した。内側縦アーチ高率は静止立位で床面から舟状骨までの高さを実足長で除して100を乗ずる値を用いた。内側縦アーチ高率は我々の先行研究から,低い内側縦アーチ(扁平足)がアーチ高率にて男性が平均15.7±0.7%,女性が13.5±1.1%であるとしている。したがって低いアーチは平均値から男性で15.7%以下,女性で13.5%以下とした。また今回は正常アーチとして平均値に標準偏差を足して男性が16.5%以上,女性が14.7%以上とした。この方法を用いて16例32足の内,低い内側縦アーチ群と正常内側縦アーチ群に分類して,衝撃吸収特性を比較した。
実験方法は,椅子に腰掛けて股関節,膝関節,足関節が90度屈曲位にて足下には床反力計(MG-200,アニマ社製)を1台置き,下腿の長軸上に10kgの重りを乗せたときの足部アーチの機械インピーダンスの変化を計測した。衝撃吸収特性は高速カメラと床反力計を用いてアーチのバネ定数と荷重伝達をみる。バネ定数(バネ定数k(N/mm)は,力f(N)を内側縦アーチの変化した距離δ(mm)で除した値)を計測した。荷重伝達は10kgの重りを乗せたときのアーチ最大変化時の床反力計の値(垂直成分)から初期値(重りを乗せる前の垂直成分の値)を引いた値を計測した。マーカーは直径5mmのシールを使用し,舟状骨突起の下の位置と垂直に降ろした床の位置の2点とした。今回は足部内側をハイスピードデジタルカメラ(EX-ZR100,Casio Co.)を用いて,毎秒240コマで撮影し,画像解析では二次元動作解析(東総システム社製,Total Motion Coordinator Lite)を使用した。重りの乗せ方に関しては何度も練習を繰り返し,筋の反射を考慮して2秒の時間を掛けてゆっくり載せた。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者には本研究の目的と方法を十分に口頭ならびに署名にて説明を行い,同意を得た。また本研究はあさひ病院の倫理委員会にて承認を受けている(承認番号A-13)。
【結果】
正常アーチ足5例10足(男性3例,女性2例),低アーチ足5例10足(男性3例,女性2例)となり,バネ定数は定常値で低アーチ足が正常アーチ足と比べ有意に高値を示した(p<0.05)。また荷重伝達では正常アーチ足が変化したときの床反力計が約+10kgに対し低アーチ足では約+7kgとなり,低アーチ足が有意に低値を示した(p<0.05)。
【考察】
今回の実験から正常アーチ足に比べ,低アーチ足はバネが固く,荷重伝達が悪いことが明らかになった。低アーチ足のバネが固いことは,荷重時のアーチ変化が少なくなり,歩行時や走行時の衝撃を和らげるショックアブソーバーの機能低下に結びつくと考えられる。荷重伝達が悪いことは,足部アーチでの衝撃吸収が低下していると考えられる。したがってアーチだけでなく他の関節(距骨下関節,距腿関節)などによって衝撃吸収が行われ,足部に負担をかけている可能性があると推察した。今後はこの実験結果からバネ定数と荷重伝達を正常アーチの値に近づけるインソールの開発を行っていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果より,低アーチ足を呈する扁平足は,アーチの衝撃を吸収する機能が正常足より低下しているため,足部などの様々な箇所に負担をかけ,疼痛が出現する可能性があることが判明した。また衝撃吸収機能を改善するようなインソール開発の必要性を指し示した点においても本研究は意義があると考えられる。