[1113] 介護度別にみた訪問リハビリテーションの必要性と実施内容
キーワード:訪問リハビリテーション, 要介護度, 在宅生活
【はじめに,目的】近年,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハビリ)の利用者数は全国的に増加傾向にある。そのため,個々に適切な目標とケアプランが設定された中で効果的なリハビリを実施し,早期に目標達成を成し遂げていくことが重要である。しかし訪問リハビリの現場においては,目標達成に伴う終了までに長期を要したり難渋したりする場合も多い。本研究の目的は,理学療法士の視点からみた訪問リハビリの継続理由と実施内容を調査し,介護度に応じた訪問リハビリの必要性とより良いサービス実施に向けた課題について検討することである。
【方法】2013年10月時点で当事業所の訪問リハビリを利用中であった111名の利用者を対象とした。担当している理学療法士に,利用者ごとの訪問リハビリの継続理由と実施内容を複数項目の中から選択式にて回答を得て介護度別に集計した。また,訪問リハビリ開始日からの継続日数も調査した。継続理由の項目は,ROMの維持・改善,痛みの緩和,筋力の維持・向上,呼吸器系の改善,基本動作の維持・改善,歩行の維持・改善,ADLの維持・拡大,IADLの維持・拡大,セラピストとの交流,安否確認,医学的なトラブルの確認,自己管理や自主トレーニングの獲得,コミュニケーションの獲得,福祉用具の定着,本人の精神的サポート,介護者の身体・精神的サポート,目標を達成しているが本人が終了を望まない,他のサービスに行きたがらない,その他の19項目から複数回答可とした。実施内容は,ROM練習,リラクセーションやストレッチ,筋力トレーニング,呼吸リハビリテーション,基本動作練習,歩行練習,ADL練習,IADL練習,自主トレーニング指導,コミュニケーション練習,福祉用具のアドバイス,介護者のサポートや指導,その他の13項目から複数回答可とした。なお当事業所は理学療法士が6名配置されており,経験年数は3年~13年である。
【倫理的配慮,説明と同意】利用者およびその家族へは,訪問リハビリ導入時に研究や学会発表における個人情報の一部利用について書面と口頭にて説明し同意を得ている。またデータをまとめる際には利用者個人が特定できないよう行った。
【結果】111名の利用者の内分けは要支援1が3名,要支援2が11名,要介護1が19名,要介護2が24名,要介護3が18名,要介護4が18名,要介護5が18名で,平均年齢は75.8±12.1歳だった。継続理由では,「ROMの維持・改善」「介護者の身体・精神的サポート」で介護度が重度なほど継続理由として選択される割合が増加する傾向が認められた。「歩行の維持・改善」「IADLの維持・拡大」は介護度が軽度になると増加傾向が認められた。「基本動作の維持・改善」「ADLの維持・拡大」は中間層の介護度に増加傾向が認められた。実施内容では全ての介護度において,「ROM練習」「リラクセーションやストレッチ」「筋力トレーニング」を実施している割合が多かった。一方「ADL練習」「IADL練習」は継続理由に上がっていても実際に実施している割合は少なかった。「介護者のサポートや指導」は継続理由と同様,介護度が重度になると増加傾向が認められた。継続日数の中央値(25%-75%)は全体が768.0(405.5-1239.5)日,要支援2が889.0(455.5-1134.5)日,要介護1が840(427.0-1425.0)日,要介護2が1112.5(729.3-2300.0)日,要介護3が488.5(367.0-725.0)日,要介護4が601.5(396.3-998.3)日,要介護5が565.0(393.5-1153.8)日であった。
【考察】理学療法士の視点からみた訪問リハビリ継続理由には介護度に応じた特徴が認められたことから,要支援や要介護者が在宅生活を過ごすにあたり,訪問リハビリが担う役割は介護度の状態によってそれぞれに異なると考えられる。そのため,それぞれに応じた取り組みが重要と考えられるが,継続理由と実施内容が一致していない面も見受けられた。また,全体的に訪問リハビリの継続日数が長期化している印象を受けた。このことから,訪問リハビリの必要性に対する実施内容が適切かは,今後の課題として見直す必要があると示唆された。またその際に,利用者の在宅生活を支えるには他サービスや介護者も含めたチームでの取り組みが重要であるため,訪問リハビリの目標達成においても,チーム内での個々の役割を見直していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】今回の研究結果は,利用者の介護度状態に応じての訪問リハビリの役割やサービスの今後の在り方を考えていく一助となる。
【方法】2013年10月時点で当事業所の訪問リハビリを利用中であった111名の利用者を対象とした。担当している理学療法士に,利用者ごとの訪問リハビリの継続理由と実施内容を複数項目の中から選択式にて回答を得て介護度別に集計した。また,訪問リハビリ開始日からの継続日数も調査した。継続理由の項目は,ROMの維持・改善,痛みの緩和,筋力の維持・向上,呼吸器系の改善,基本動作の維持・改善,歩行の維持・改善,ADLの維持・拡大,IADLの維持・拡大,セラピストとの交流,安否確認,医学的なトラブルの確認,自己管理や自主トレーニングの獲得,コミュニケーションの獲得,福祉用具の定着,本人の精神的サポート,介護者の身体・精神的サポート,目標を達成しているが本人が終了を望まない,他のサービスに行きたがらない,その他の19項目から複数回答可とした。実施内容は,ROM練習,リラクセーションやストレッチ,筋力トレーニング,呼吸リハビリテーション,基本動作練習,歩行練習,ADL練習,IADL練習,自主トレーニング指導,コミュニケーション練習,福祉用具のアドバイス,介護者のサポートや指導,その他の13項目から複数回答可とした。なお当事業所は理学療法士が6名配置されており,経験年数は3年~13年である。
【倫理的配慮,説明と同意】利用者およびその家族へは,訪問リハビリ導入時に研究や学会発表における個人情報の一部利用について書面と口頭にて説明し同意を得ている。またデータをまとめる際には利用者個人が特定できないよう行った。
【結果】111名の利用者の内分けは要支援1が3名,要支援2が11名,要介護1が19名,要介護2が24名,要介護3が18名,要介護4が18名,要介護5が18名で,平均年齢は75.8±12.1歳だった。継続理由では,「ROMの維持・改善」「介護者の身体・精神的サポート」で介護度が重度なほど継続理由として選択される割合が増加する傾向が認められた。「歩行の維持・改善」「IADLの維持・拡大」は介護度が軽度になると増加傾向が認められた。「基本動作の維持・改善」「ADLの維持・拡大」は中間層の介護度に増加傾向が認められた。実施内容では全ての介護度において,「ROM練習」「リラクセーションやストレッチ」「筋力トレーニング」を実施している割合が多かった。一方「ADL練習」「IADL練習」は継続理由に上がっていても実際に実施している割合は少なかった。「介護者のサポートや指導」は継続理由と同様,介護度が重度になると増加傾向が認められた。継続日数の中央値(25%-75%)は全体が768.0(405.5-1239.5)日,要支援2が889.0(455.5-1134.5)日,要介護1が840(427.0-1425.0)日,要介護2が1112.5(729.3-2300.0)日,要介護3が488.5(367.0-725.0)日,要介護4が601.5(396.3-998.3)日,要介護5が565.0(393.5-1153.8)日であった。
【考察】理学療法士の視点からみた訪問リハビリ継続理由には介護度に応じた特徴が認められたことから,要支援や要介護者が在宅生活を過ごすにあたり,訪問リハビリが担う役割は介護度の状態によってそれぞれに異なると考えられる。そのため,それぞれに応じた取り組みが重要と考えられるが,継続理由と実施内容が一致していない面も見受けられた。また,全体的に訪問リハビリの継続日数が長期化している印象を受けた。このことから,訪問リハビリの必要性に対する実施内容が適切かは,今後の課題として見直す必要があると示唆された。またその際に,利用者の在宅生活を支えるには他サービスや介護者も含めたチームでの取り組みが重要であるため,訪問リハビリの目標達成においても,チーム内での個々の役割を見直していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】今回の研究結果は,利用者の介護度状態に応じての訪問リハビリの役割やサービスの今後の在り方を考えていく一助となる。