第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅7

2014年5月31日(土) 15:45 〜 16:35 ポスター会場 (生活環境支援)

座長:寺島秀幸(訪問看護リハビリステーション桜)

生活環境支援 ポスター

[1197] 在宅高齢脊髄損傷者1症例に対して電機刺激療法を集中的に実施した訪問理学療法効果の検証

高野吉朗1, 松原誠仁2, 松瀬博夫3, 志波直人3 (1.国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科, 2.熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻, 3.久留米大学病院リハビリテーション部)

キーワード:訪問理学療法, 電気刺激療法, 三次元動作解析

【はじめに,目的】わが国は高齢社会に伴い多くの高齢脊髄損傷者が増加しているが,在宅障害者は医療施設と同様の積極的な理学療法を受けることは環境の違いにより難しい。国内外で古くから,脊髄損傷者に対し様々な電気刺激法を用いた理学療法は行われている。介護保険開始以降,在宅理学療法は拡大しているが,理学療法効果を科学的検証した知見は少ない。今回,在宅高齢脊髄損傷者の1症例に対し,シングルケースデザインABA法を用い,電気刺激療法を用いた効果を,三次元動作解析で検証した報告をする。
【方法】対象者は胸髄下位の脊髄炎により両下肢不全麻痺を呈している要介護2の70歳女性である。発症後10年経過し,通所介護を週2回利用しているのみで,医療施設における理学療法は受けていない。通常移動はローテーター型歩行器を屋内外で利用しているが,監視下で10m独歩は可能である。介入方法は,志波らが開発した電気刺激と随意刺激を組み合わせた筋力強化法であるハイブリッドトレーニングシステムを用い,膝屈伸運動20分を週2回6ヶ月間行った。電気刺激療法が歩行動作に及ぼす影響について,介入前,介入6ヵ月後,介入終了後6ヵ月後にKinematicsおよびKinetics的解析を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は久留米大学倫理委員会の審査を受けた。対象者に対し研究の説明を行い,途中中止の申し出が可能であることも伝え同意を得た。
【結果】電気刺激療法介入前と介入終了後6ヶ月後の力学的評価量を比較すると,左下肢支持期前半における地面反力前後成分が大きな負の値を示した。また,左下肢支持期における足関節外転および膝関節外旋角度が増加し,右下肢支持期前半における股関節伸展角度が増大した。下肢関節トルクは,右下肢支持期における足関節背屈-外転,膝関節屈曲,股関節外転トルクが増大した。また,左下肢支持期における足,膝および股関節外旋トルクが大きく減少した。
【考察】電気刺激療法介入後の歩行動作において,右下肢では,股関節伸展および外転筋群の活動が増加すること,左下肢では内旋から外旋位となり,外旋筋群の活動が減少することが示唆された。このことは,接地時の衝撃力を示す地面反力前後成分に抗する筋活動が出現していることを示すものである。以上のことから,電気刺激療法を用いたハイブリッドトレーニングシステムは,歩行時の筋活動量を増加させるため,訪問理学療法の有益な治療法の1つであることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】訪問理学療法は拡大しているが,提供する理学療法内容は乏しい問題点も挙げられる。今回,新しい物理療法技術を集中的に実施した効果を科学的に検証出来たことは,訪問理学療法の発展に繋がると考える。