[1212] 脛骨天蓋骨折の治療成績
キーワード:脛骨天蓋骨折, 関節面整復状態, 骨折形態
【はじめに,目的】
脛骨天蓋骨折の術後リハビリテーションを行うにあたり,骨折形態,術後整復状態,軟部組織損傷の把握は重要である。特に,関節面の解剖学的整復と強固な固定性を得ることは,手術後の治療成績に影響を及ぼし,当院においても内固定やイリザロフ創外固定を使用し,関節面の整復を行っている。しかし,術後の関節面整復状態に若干の転位が残存していても,術後の治療成績に大きな影響を及ぼさない症例もいる。そこで今回,脛骨天蓋骨折の術後の関節面整復状態が治療成績に与える影響について検討した。
【方法】
対象は,平成17年8月から平成24年1月までに当院で観血的治療を行い,追跡調査が可能な11足(男性8足,女性3足,平均年齢60.7±16歳)であった。なお,足関節脱臼骨折に伴う脛骨天蓋骨折は除外した。受傷機転は転落8例,転倒1例,交通事故2例であった。治療法は,プレートによる内固定7例,イリザロフ創外固定+内固定4例であった。骨折形態は,X-rayによるRüedi and Allgöwer分類とAxial CT scanによる関節面骨片数で分類するcolumn分類を用いた。術後の関節面整復状態を表す指標として,X-rayでは正面・側面のjoint space,CT scanでは正面・側面のjoint-gapとstep-offを計測した。臨床成績は日本足の外科学会足関節・後足部判定基準(以下;JSSF score)を用いて評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者にはヘルシンキ宣言に基づき,説明と同意を得てから本研究を行なった。
【結果】
骨折形態は,Rüedi and Allgöwer分類でtypeI:0例,typeII:4例,typeIII:7例,column分類で2-parts:2例,3-parts:4例,4-parts:3例,5-parts:2例であった。関節面整復状態を表す各指標の平均値は,joint spaceが,正面:2.8±0.9mm,側面:2.5±0.5mm,joint-gapが,正面:3.1±4.0mm,側面:3.8±4.5mm,step-offが,正面:2.0±0.5mm,側面:2.1mm±3.4であった。JSSF scoreは,全体平均81.4±8点であった。
【考察】
脛骨天蓋骨折の治療成績を左右する因子として,受傷時の関節面の粉砕の程度が報告されている。今回,我々の研究でも,関節面の粉砕程度が重度の場合は,治療成績が不良であった。特に,距骨の突き上げにより,中央骨片が中枢に陥合したまま転位しているcolumn分類5-parts(central fragment depression type)例では,変形性関節症にも移行していた。また,術後の関節面整復状態では,大半はjoint-gap,step-offの残存により治療成績が不良となる傾向であったが,脛骨-距骨の主要な関節面が適合している例では,数mmのjoint-gapやstep-offが残存していても,比較的良好な治療成績であった。しかし,骨折形態が軽度で,術後の関節面整復状態も良好であったにも関わらず,治療成績が不良な症例も存在した。これは,治療成績が単に骨折形態や関節面の整復状態だけに影響を受けているのではなく,少なからず軟骨損傷や軟部組織損傷の程度も治療成績に影響を与えていると考える。脛骨天蓋骨折では,手術による正確な整復が肝心なのは当然であるが,骨折形態や状況により,全ての症例で完璧な整復ができるわけではない。その際,術後リハビリテーションによる軟部組織の腫脹・浮腫の軽減や早期関節可動域運動による癒着の予防は,治療成績の向上に関係すると思われ,今後の当院での後療法の方針としても取り入れていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
外傷後の理学療法は,骨折形態,手術による整復位・固定性,後療法の上に成り立っている。そのため,理学療法を行う上では,前述の内容の把握は必要不可欠である。しかしながら,本研究のような外傷後の理学療法に関連のある基礎研究は少なく,近年では基盤が不安定な上での臨床研究が目立っているように感じる。今後,病院単位での理学療法の確立のためには,本研究のような基礎研究の蓄積は重要であると考える。
脛骨天蓋骨折の術後リハビリテーションを行うにあたり,骨折形態,術後整復状態,軟部組織損傷の把握は重要である。特に,関節面の解剖学的整復と強固な固定性を得ることは,手術後の治療成績に影響を及ぼし,当院においても内固定やイリザロフ創外固定を使用し,関節面の整復を行っている。しかし,術後の関節面整復状態に若干の転位が残存していても,術後の治療成績に大きな影響を及ぼさない症例もいる。そこで今回,脛骨天蓋骨折の術後の関節面整復状態が治療成績に与える影響について検討した。
【方法】
対象は,平成17年8月から平成24年1月までに当院で観血的治療を行い,追跡調査が可能な11足(男性8足,女性3足,平均年齢60.7±16歳)であった。なお,足関節脱臼骨折に伴う脛骨天蓋骨折は除外した。受傷機転は転落8例,転倒1例,交通事故2例であった。治療法は,プレートによる内固定7例,イリザロフ創外固定+内固定4例であった。骨折形態は,X-rayによるRüedi and Allgöwer分類とAxial CT scanによる関節面骨片数で分類するcolumn分類を用いた。術後の関節面整復状態を表す指標として,X-rayでは正面・側面のjoint space,CT scanでは正面・側面のjoint-gapとstep-offを計測した。臨床成績は日本足の外科学会足関節・後足部判定基準(以下;JSSF score)を用いて評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者にはヘルシンキ宣言に基づき,説明と同意を得てから本研究を行なった。
【結果】
骨折形態は,Rüedi and Allgöwer分類でtypeI:0例,typeII:4例,typeIII:7例,column分類で2-parts:2例,3-parts:4例,4-parts:3例,5-parts:2例であった。関節面整復状態を表す各指標の平均値は,joint spaceが,正面:2.8±0.9mm,側面:2.5±0.5mm,joint-gapが,正面:3.1±4.0mm,側面:3.8±4.5mm,step-offが,正面:2.0±0.5mm,側面:2.1mm±3.4であった。JSSF scoreは,全体平均81.4±8点であった。
【考察】
脛骨天蓋骨折の治療成績を左右する因子として,受傷時の関節面の粉砕の程度が報告されている。今回,我々の研究でも,関節面の粉砕程度が重度の場合は,治療成績が不良であった。特に,距骨の突き上げにより,中央骨片が中枢に陥合したまま転位しているcolumn分類5-parts(central fragment depression type)例では,変形性関節症にも移行していた。また,術後の関節面整復状態では,大半はjoint-gap,step-offの残存により治療成績が不良となる傾向であったが,脛骨-距骨の主要な関節面が適合している例では,数mmのjoint-gapやstep-offが残存していても,比較的良好な治療成績であった。しかし,骨折形態が軽度で,術後の関節面整復状態も良好であったにも関わらず,治療成績が不良な症例も存在した。これは,治療成績が単に骨折形態や関節面の整復状態だけに影響を受けているのではなく,少なからず軟骨損傷や軟部組織損傷の程度も治療成績に影響を与えていると考える。脛骨天蓋骨折では,手術による正確な整復が肝心なのは当然であるが,骨折形態や状況により,全ての症例で完璧な整復ができるわけではない。その際,術後リハビリテーションによる軟部組織の腫脹・浮腫の軽減や早期関節可動域運動による癒着の予防は,治療成績の向上に関係すると思われ,今後の当院での後療法の方針としても取り入れていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
外傷後の理学療法は,骨折形態,手術による整復位・固定性,後療法の上に成り立っている。そのため,理学療法を行う上では,前述の内容の把握は必要不可欠である。しかしながら,本研究のような外傷後の理学療法に関連のある基礎研究は少なく,近年では基盤が不安定な上での臨床研究が目立っているように感じる。今後,病院単位での理学療法の確立のためには,本研究のような基礎研究の蓄積は重要であると考える。