[1213] 成人女性における足趾把持筋力の年代別比較とバランス能力との関連
Keywords:足趾把持筋力, 成人女性, バランス能力
【はじめに,目的】
足趾把持筋力はバランス能力や高齢者の転倒と関連があり,足趾把持トレーニングによって歩行速度の増加(金子ら,2009)や動的バランスの向上がみられた(木藤ら,2001)と報告されていることから,足趾把持筋力を評価する有用性が注目されている。しかし,これらの先行研究は主に10~20歳代の若年者や65歳以上の高齢者を対象としたものであり,その中間層である30~50歳代の成人を対象とした報告は少ない。また,年代別にみた足趾把持筋力とバランス能力の関連も明らかになっていない。30~50歳代の成人の足趾把持筋力を評価する際の基準値を示すことは転倒予防や介護予防の観点からみて重要であると考える。また,足部の問題は女性では骨折に繋がる転倒の危険因子であると報告されている(Koskiら,1996)。そこで本研究では,成人女性の足趾把持筋力を年代別に明らかにすること,及びバランス能力との関連を検討することを目的とした。
【方法】
30~58歳のボランティア成人女性63名(30歳代:20名,40歳代:20名,50歳代:23名)を対象とした。運動器疾患をはじめ,測定に支障となる疾病及び障害を有している場合は除外した。
評価項目は,足趾把持筋力とFunctional Reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG),閉眼片脚立位時間とした。足趾把持筋力は,足指筋力測定器(竹井機器,T.K.K.3361)を用いて評価した。測定は座位にて膝関節屈曲90度,足関節背屈0度の肢位で行った。対象者の足趾を筋力計のバーに掛け,最大筋力で足趾を屈曲させ筋力計のバーを把持した際の筋力を測定した。測定は,左右とも2回ずつ行いそれぞれの最大値を採用した。FRT,TUGは既存の測定方法に基づき測定した。閉眼片脚立位時間は測定時間を30秒とし,左右2回ずつ測定しそれぞれの最大値を用いた。
統計解析は,各年代間の足趾把持筋力の比較を1元配置分散分析と多重比較を用いて行った。また,足趾把持筋力と各測定項目との関係をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究の趣旨と内容について対象者本人に書面及び口頭で十分に説明し,理解を得た上で協力を求めた。また,研究の参加は自由意志であること,参加しない場合に不利益がないことを説明した。
【結果】
年代別の足趾把持筋力の値(平均値±標準偏差)は20歳代で右14.3±4.2kg,左14.6±4.5kg,30歳代で右11.0±4.2kg,左11.5±5.3kg,40歳代で右10.5±3.6kg,左10.6±3.9kg,50歳代で右9.7±3.5kg,左9.9±4.1kgであった。足趾把持筋力に関して多重比較の結果では,年代とともに低下しており20歳代に比べて50歳代では左右肢ともに有意に低下していた。また,足趾把持筋力とバランス能力の相関関係については,30歳代で足趾把持筋力とFRTにおいて右がr=0.46,左がr=0.49,40歳代足趾把持筋力とFRTにおいて右がr=0.52,左がr=0.65,足趾把持筋力と閉眼片脚立位時間において右がr=0.50,左がr=0.54,足趾把持筋力とTUGにおいて左がr=-0.64と有意な相関を示した。
【考察】
本研究の結果から成人女性の年代別の足趾把持筋力が明らかとなり,足趾把持筋力は年代を追うごとに低下することが示された。女性の足趾把持筋力の年代別平均値に関する先行研究(半田ら,2004)では,20歳代が最高で50歳代で低下すると報告されており,本研究も先行研究を支持する結果となった。この,半田らの報告は対象者数が不明であり,筋力測定は自作の測定器を使用している。一方で,本研究は各年代で20名~23名を対象とし,再現性と信頼性に優れた足趾筋力測定器を使用していることから,本研究結果は成人女性の年代別足趾把持筋力に関する基準値になり得ると考えられる。さらに本研究では30歳代と40歳代で足趾把持筋力とバランス能力に有意な相関関係を認めた。これまでの研究では高齢者の足趾把持筋力とバランス能力には相関関係があることが報告されてきたが,本研究により30~50歳代の成人女性においても同様の傾向があることが示唆されたことは興味深い。足趾把持筋力の低下は転倒リスクに繋がるとされ,高齢者の転倒予防に対して足趾把持筋力の強化が有用であると報告されている(木藤ら,2001)。本研究の結果から,女性は30~50歳代の時期から転倒予防や介護予防のための足趾把持筋力強化に取り組む必要があると示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究で示した成人女性の足趾把持筋力の年代別の値は,臨床場面における足趾把持筋力評価の基準値になり得ると考える。また,女性においては足趾把持筋力が低下してくる50歳代から筋力強化を図ることで,転倒予防や介護予防に繋がる可能性があることが示唆された。
足趾把持筋力はバランス能力や高齢者の転倒と関連があり,足趾把持トレーニングによって歩行速度の増加(金子ら,2009)や動的バランスの向上がみられた(木藤ら,2001)と報告されていることから,足趾把持筋力を評価する有用性が注目されている。しかし,これらの先行研究は主に10~20歳代の若年者や65歳以上の高齢者を対象としたものであり,その中間層である30~50歳代の成人を対象とした報告は少ない。また,年代別にみた足趾把持筋力とバランス能力の関連も明らかになっていない。30~50歳代の成人の足趾把持筋力を評価する際の基準値を示すことは転倒予防や介護予防の観点からみて重要であると考える。また,足部の問題は女性では骨折に繋がる転倒の危険因子であると報告されている(Koskiら,1996)。そこで本研究では,成人女性の足趾把持筋力を年代別に明らかにすること,及びバランス能力との関連を検討することを目的とした。
【方法】
30~58歳のボランティア成人女性63名(30歳代:20名,40歳代:20名,50歳代:23名)を対象とした。運動器疾患をはじめ,測定に支障となる疾病及び障害を有している場合は除外した。
評価項目は,足趾把持筋力とFunctional Reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG),閉眼片脚立位時間とした。足趾把持筋力は,足指筋力測定器(竹井機器,T.K.K.3361)を用いて評価した。測定は座位にて膝関節屈曲90度,足関節背屈0度の肢位で行った。対象者の足趾を筋力計のバーに掛け,最大筋力で足趾を屈曲させ筋力計のバーを把持した際の筋力を測定した。測定は,左右とも2回ずつ行いそれぞれの最大値を採用した。FRT,TUGは既存の測定方法に基づき測定した。閉眼片脚立位時間は測定時間を30秒とし,左右2回ずつ測定しそれぞれの最大値を用いた。
統計解析は,各年代間の足趾把持筋力の比較を1元配置分散分析と多重比較を用いて行った。また,足趾把持筋力と各測定項目との関係をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究の趣旨と内容について対象者本人に書面及び口頭で十分に説明し,理解を得た上で協力を求めた。また,研究の参加は自由意志であること,参加しない場合に不利益がないことを説明した。
【結果】
年代別の足趾把持筋力の値(平均値±標準偏差)は20歳代で右14.3±4.2kg,左14.6±4.5kg,30歳代で右11.0±4.2kg,左11.5±5.3kg,40歳代で右10.5±3.6kg,左10.6±3.9kg,50歳代で右9.7±3.5kg,左9.9±4.1kgであった。足趾把持筋力に関して多重比較の結果では,年代とともに低下しており20歳代に比べて50歳代では左右肢ともに有意に低下していた。また,足趾把持筋力とバランス能力の相関関係については,30歳代で足趾把持筋力とFRTにおいて右がr=0.46,左がr=0.49,40歳代足趾把持筋力とFRTにおいて右がr=0.52,左がr=0.65,足趾把持筋力と閉眼片脚立位時間において右がr=0.50,左がr=0.54,足趾把持筋力とTUGにおいて左がr=-0.64と有意な相関を示した。
【考察】
本研究の結果から成人女性の年代別の足趾把持筋力が明らかとなり,足趾把持筋力は年代を追うごとに低下することが示された。女性の足趾把持筋力の年代別平均値に関する先行研究(半田ら,2004)では,20歳代が最高で50歳代で低下すると報告されており,本研究も先行研究を支持する結果となった。この,半田らの報告は対象者数が不明であり,筋力測定は自作の測定器を使用している。一方で,本研究は各年代で20名~23名を対象とし,再現性と信頼性に優れた足趾筋力測定器を使用していることから,本研究結果は成人女性の年代別足趾把持筋力に関する基準値になり得ると考えられる。さらに本研究では30歳代と40歳代で足趾把持筋力とバランス能力に有意な相関関係を認めた。これまでの研究では高齢者の足趾把持筋力とバランス能力には相関関係があることが報告されてきたが,本研究により30~50歳代の成人女性においても同様の傾向があることが示唆されたことは興味深い。足趾把持筋力の低下は転倒リスクに繋がるとされ,高齢者の転倒予防に対して足趾把持筋力の強化が有用であると報告されている(木藤ら,2001)。本研究の結果から,女性は30~50歳代の時期から転倒予防や介護予防のための足趾把持筋力強化に取り組む必要があると示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究で示した成人女性の足趾把持筋力の年代別の値は,臨床場面における足趾把持筋力評価の基準値になり得ると考える。また,女性においては足趾把持筋力が低下してくる50歳代から筋力強化を図ることで,転倒予防や介護予防に繋がる可能性があることが示唆された。