[1223] 様々な条件下における静止立位の重心動揺計測の検討
Keywords:二重課題, 姿勢制御, 脳性麻痺
【はじめに】立位練習の場面において姿勢を正すよう指示したり,正面をみるよう視線誘導する事がしばしばある。また転倒予防において認知課題の二重課題を用いての立位バランス練習に効果があるとの報告もある。しかし脳性麻痺者(以下CP患者)のリハビリ場面では指示や二重課題下ではかえってふらついてしまうことがある。また逆に会話や数を数えたりすることで立位が安定したり,近くに掴まるところがある場合などは予想以上に上手に立位保持できることがある。今回,静止立位にて様々な条件下での重心動揺を測定し,健常成人とCP患者で,比較検討したので報告する。
【方法】対象は健常成人10名(年齢27.1±4.5歳),CP者10名(両麻痺,年齢15.5±5.7歳)。またCP患者は計測内容や指示が理解可能であった。重心動揺検査は,対象者が裸足で両足内側を接して直立し,2m前方の目の高さに固定した小さい指標を30秒間注視した状態で重心動揺計(ZEBRIS Win-PDM)を用いてサンプリング周波数60Hzにて測定した。計測条件は①自然立位,②気をつけ姿勢(意識的立位),③深呼吸,④野菜の名前を呼称,⑤1から数える(以下カウントアップ),⑥50から数える(以下カウントダウン)の6つとした。計測パラメータはスタティック分析として健常成人と脳性麻痺者で課題毎に,単位面積軌跡長及び実効値面積の平均値を算出した。①をコントロール群とし,群間の差の比較を対応のないt検定(p<0.05)にて比較・検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者及びその家族には,本研究の目的と趣旨,倫理的配慮について十分説明した上で,書面にて同意を得た。
【結果】健常成人において単位軌跡長(mm)は①20.29±4.58,②20.07±3.64,③18.13±2.68,④20.24±3.98,⑤20.03±3.09,⑥20.33±3.28で,①に比べどの条件でも有意な差はみられなかった。実効値面積(mm2)は①279.18±150.47,②352.43±276.75,③327.7±437.06,④172.41±91.87,⑤279.63±203.17,⑥161.01±97.45で,①に比べ④⑥で有意に減少した。CP患者において単位軌跡長(mm)は①23.96±4.49,②25.28±6.25,③25.72±5.26,④27.92±6.82,⑤22.71±4.51,⑥30.13±6.24で,①に比べ④⑥で有意に増加した。実効値面積(mm2)は①692.51±513.57,②696.77±475.34,③598.17±752.37,④765.44±392.78,⑤657.44±347.41,⑥771.75±432.25で,①に比べ④⑥で有意に増加し③⑤で有意に減少した。
【考察】単位軌跡長の減少は立位時の重心動揺量の減少を示し,実効値面積の減少は重心動揺範囲の狭小化とより細やかな姿勢制御への変化を示す。健常成人において動揺量はどの条件下でもほとんど変わらず,調整能力の巧みさがみられた。また動揺範囲の狭小化が④⑥でみられ,困難な課題下での姿勢制御の変化が示唆された。CP患者において動揺量・動揺範囲は④⑥で増加が有意にみられ,④⑥のようなより困難な課題においては安定したバランスが維持しづらいことが分かった。動揺範囲の狭小化が③⑤でみられた。③で動揺範囲の狭小化がみられたことはCP者が努力的に姿勢保持する中で,全身の緊張を高め呼吸を止める場面がみられる事とも関係すると考える。⑤で重心動揺範囲の狭小化がみられたことはCP患者が適度な姿勢緊張と注意力で立位姿勢を保持できたからだと考えた。またCP患者は健常者に比べ標準偏差値が大きかった。これは各個人でのばらつきを示し,立位保持条件における対応に個人差があることを示唆された。
【理学療法学研究としての意義】CP患者において健常成人とは違った立位姿勢制御をしていることが分かった。認知的要因の関与が少ないと考えられる平衡機能だが,CP患者では立位保持すること自体に注意が配分されるため,課題による負荷の調節を検討することが必要である。特に野菜の名前の呼称やカウントダウンなどの認知課題での立位保持は健常成人よりもバランスを崩すことがわかった。しかしその一方である程度の認知課題による負荷が立位バランスの安定性に寄与する可能性が見いだせた。従来の認知課題研究では100から指定された数を引く減算や過去の出来事を思い出す課題(記憶課題)などが用いられる。本研究では様々な条件で姿勢緊張がコントロールしやすいよう設定したが,今後は対象者の麻痺の程度や運動機能など個人差を踏まえ,様々な課題条件で課題遂行内容も含め,立位練習場面での課題を検討していきたい。
【方法】対象は健常成人10名(年齢27.1±4.5歳),CP者10名(両麻痺,年齢15.5±5.7歳)。またCP患者は計測内容や指示が理解可能であった。重心動揺検査は,対象者が裸足で両足内側を接して直立し,2m前方の目の高さに固定した小さい指標を30秒間注視した状態で重心動揺計(ZEBRIS Win-PDM)を用いてサンプリング周波数60Hzにて測定した。計測条件は①自然立位,②気をつけ姿勢(意識的立位),③深呼吸,④野菜の名前を呼称,⑤1から数える(以下カウントアップ),⑥50から数える(以下カウントダウン)の6つとした。計測パラメータはスタティック分析として健常成人と脳性麻痺者で課題毎に,単位面積軌跡長及び実効値面積の平均値を算出した。①をコントロール群とし,群間の差の比較を対応のないt検定(p<0.05)にて比較・検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者及びその家族には,本研究の目的と趣旨,倫理的配慮について十分説明した上で,書面にて同意を得た。
【結果】健常成人において単位軌跡長(mm)は①20.29±4.58,②20.07±3.64,③18.13±2.68,④20.24±3.98,⑤20.03±3.09,⑥20.33±3.28で,①に比べどの条件でも有意な差はみられなかった。実効値面積(mm2)は①279.18±150.47,②352.43±276.75,③327.7±437.06,④172.41±91.87,⑤279.63±203.17,⑥161.01±97.45で,①に比べ④⑥で有意に減少した。CP患者において単位軌跡長(mm)は①23.96±4.49,②25.28±6.25,③25.72±5.26,④27.92±6.82,⑤22.71±4.51,⑥30.13±6.24で,①に比べ④⑥で有意に増加した。実効値面積(mm2)は①692.51±513.57,②696.77±475.34,③598.17±752.37,④765.44±392.78,⑤657.44±347.41,⑥771.75±432.25で,①に比べ④⑥で有意に増加し③⑤で有意に減少した。
【考察】単位軌跡長の減少は立位時の重心動揺量の減少を示し,実効値面積の減少は重心動揺範囲の狭小化とより細やかな姿勢制御への変化を示す。健常成人において動揺量はどの条件下でもほとんど変わらず,調整能力の巧みさがみられた。また動揺範囲の狭小化が④⑥でみられ,困難な課題下での姿勢制御の変化が示唆された。CP患者において動揺量・動揺範囲は④⑥で増加が有意にみられ,④⑥のようなより困難な課題においては安定したバランスが維持しづらいことが分かった。動揺範囲の狭小化が③⑤でみられた。③で動揺範囲の狭小化がみられたことはCP者が努力的に姿勢保持する中で,全身の緊張を高め呼吸を止める場面がみられる事とも関係すると考える。⑤で重心動揺範囲の狭小化がみられたことはCP患者が適度な姿勢緊張と注意力で立位姿勢を保持できたからだと考えた。またCP患者は健常者に比べ標準偏差値が大きかった。これは各個人でのばらつきを示し,立位保持条件における対応に個人差があることを示唆された。
【理学療法学研究としての意義】CP患者において健常成人とは違った立位姿勢制御をしていることが分かった。認知的要因の関与が少ないと考えられる平衡機能だが,CP患者では立位保持すること自体に注意が配分されるため,課題による負荷の調節を検討することが必要である。特に野菜の名前の呼称やカウントダウンなどの認知課題での立位保持は健常成人よりもバランスを崩すことがわかった。しかしその一方である程度の認知課題による負荷が立位バランスの安定性に寄与する可能性が見いだせた。従来の認知課題研究では100から指定された数を引く減算や過去の出来事を思い出す課題(記憶課題)などが用いられる。本研究では様々な条件で姿勢緊張がコントロールしやすいよう設定したが,今後は対象者の麻痺の程度や運動機能など個人差を踏まえ,様々な課題条件で課題遂行内容も含め,立位練習場面での課題を検討していきたい。