第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

発達障害理学療法4

Sat. May 31, 2014 3:45 PM - 4:35 PM ポスター会場 (神経)

座長:中林美代子(新潟県はまぐみ小児療育センター診療部訓練室)

神経 ポスター

[1224] 脳性麻痺児の歩行能力の簡便かつ包括的な臨床評価法:システマティックレビュー

樋室伸顕1, 阿部広和2, 西部寿人3, 森満1 (1.札幌医科大学医学部公衆衛生学講座, 2.埼玉県立小児医療センター保健発達部, 3.北海道立子ども総合医療・療育センター)

Keywords:脳性麻痺, 歩行, 評価

【はじめに,目的】脳性麻痺(Cerebral palsy:CP)児の歩行能力向上は理学療法の大切な目標の一つである。CP児の歩行能力を経時的に評価し,多施設間で共有するために,信頼性・妥当性のある歩行評価が重要である。三次元動作解析や呼気ガス分析,筋電図解析といった機器を用いた評価は信頼性・妥当性が高い。しかしそれらの機器は,使用や設定に技術と時間を必要とし,高価であることからすべての施設で実施できる訳ではない。そこで本研究では,臨床で簡便かつ包括的にCP児の歩行能力を評価する方法を明らかにするためシステマティックレビューを行った。
【方法】検索データベースは,PubMed,The Cochrane Library,CINAHL,PsycINFO,SPORTDiscusとした。取り込み基準は,歩行を量的に評価し,6~18歳のCP児に対する信頼性と妥当性が検討されており,評価法が入手可能なものとした。除外基準は,三次元動作解析装置や呼気ガス分析,筋電図解析,加速度センサーや心拍センサーなど設備や機器を必要とする評価,判別的評価法,日常生活動作やQOL(Quality of Life)に関する評価法とした。
【倫理的配慮,説明と同意】該当せず。
【結果】2255論文が検索され,重複した論文,原著論文でないものを削除した。タイトルと抄録からスクリーニングし70の論文が残り,全文をレビューした結果,15種類の評価法が同定された。各評価法を測定対象(歩行の何を評価しているのか)により分類した結果,歩行全体(Gross Motor Function Measure:GMFM),歩行遂行能力(Gillette Functional Assessment Questionnaire:FAQ,ABILOCO-Kids),移動能力(Functional Mobility Scale:FMS),歩行速度(10 meter walk test:10mWT,6-minute walk test:6MWT),歩行持久力(Physiological Cost Index:PCI,1-minute walk test:1MWT,6MWT),歩行バランス(Timed Up & Go test:TUG,Timed Up & Down Stair test:TUDS,Functional Walking Test:FWT),歩容(Edinburgh Visual Gait Score:EVGS,Visual Gait Assessment Scale:VGAS,Observational Gait Scale:OGS,Salford Gait Tool:SGT)に分類された。各評価法の計量心理学的特性をCOnsensus-based Standards for the selection of health status Measurement INstruments(COSMIN)チェックリストを用いて2人の研究者が評価した。また,臨床での簡便さと実施可能性について小児分野で働く理学療法士3名と議論した。GMFMは日本での信頼性・妥当性が確認されゴールドスタンダードであるが,使用にはトレーニングが必要であり小児専門の施設以外での使用上制約となるため除外した。以上から,歩行遂行能力は情報量と妥当性からABILOCO-Kids,移動能力はFMS,歩行速度と歩行持久力は臨床での簡便さからそれぞれ10mWTと1MWT,歩行バランスは妥当性からTUG,歩容は臨床での簡便さと妥当性からOGSが選択された。
【考察】臨床の中での簡便かつ包括的なCP児の歩行評価法が明らかになった。6つの評価法を一つの評価パッケージとして実施することで歩行能力を包括的に評価することが可能となる。これら評価法は,特別なトレーニングや技術,使用に関するライセンスや使用料を必要としないため,小児を専門としない施設の理学療法士であっても実施可能である。日本語版の評価マニュアルを作成することで汎用性ある評価パッケージとしての使用が期待できる。本研究の限界は,すべての言語で書かれた研究論文をレビューの対象としていないこと,臨床での簡便さと実施可能性の基準が理学療法士の主観であることである。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士であれば誰でも簡便に使用できる臨床評価法が明らかになったことは,CP児の縦断的・横断的なケアを目指していく上で臨床的に意義がある。