第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

その他

Sat. May 31, 2014 4:40 PM - 5:30 PM ポスター会場 (教育・管理)

座長:神内擴行(特別養護老人ホームレストフルヴィレッジ)

教育・管理 ポスター

[1287] 自宅退院予定から施設退院へと変更となった患者の特徴

内山圭太, 六川恒, 寺田茂 (金沢赤十字病院リハビリテーション科)

Keywords:回復期リハビリテーション病棟, 退院予定, 自宅退院

【はじめに】
回復期リハビリテーション(回リハ)病棟の役割は,脳血管障害や運動器疾患の急性期治療が終了した患者に対し集中的にリハビリテーションを実施することにより日常生活能力の向上を通じて寝たきりの防止や家庭復帰の促進を図ることである。近年,回リハ病棟は在宅復帰率や重症患者割合の引き上げが行われるなど提供するリハビリテーションの量だけでなく質も問われている。
我々はこれまで当院回リハ病棟から自宅退院する患者の特徴を検証し報告してきたが,調査を進めていくと,入院時に自宅退院を希望していた患者が自宅以外の施設退院へと変更となる患者が少なくないことがわかった。自宅退院を目標として入院してきた患者を1人でも多く自宅退院へと導くことが回リハ病棟の重要な役割であると言える。
そこで本研究では,入院時に自宅退院を目標としていた患者のうち,自宅以外へ退院した患者の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
平成24年4月~平成25年9月に当院の回リハ病棟を退院した215名のうち,入院前より自宅以外で生活していた者,入院時の退院予定先が施設であった者,急変等により急性期病棟や他院へ転院した者,情報に欠損のあった者を除いた155名を調査対象とした。調査項目は年齢や性別,疾患などの患者基本情報と転帰先,退院時の機能的自立度評価表(FIM),退院先が自宅から施設へと変更となった日及びその理由とし,カルテより後方視的に調査した。
予定通り自宅退院した患者を自宅群,自宅退院予定から施設退院へと変更となった患者を変更群として2群に分類した。また,我々は先行研究において自宅退院の退院時FIM合計点のカットオフ値が79点であることを報告しており,今回は自宅退院群,変更群のそれぞれにおいて退院時FIM合計点が79点未満の患者と79点以上の患者に分類した。
統計学的解析として,患者の基本情報やFIM合計点の2群間の比較に対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,カイ二乗検定を用い,いずれも有意確率は5%未満とした。解析にはSPSS 11.0J for windowsを使用した。
【倫理的配慮】
カルテ情報の取扱いは当院の個人情報取扱指針に従い,また情報の流出等により個人が特定されないよう十分に配慮した。
【結果】
自宅群は122名(78.7%),変更群は33名(21.3%)であった。自宅群122名のうち退院時FIM合計点が79点以上の患者は106名,79点未満の患者は16名であった。同じく変更群では79点以上が11名,79点未満が22名であった。
2群間の比較結果,退院時FIMが79点未満の患者では自宅群と変更群で在院日数(81.4±37.6日vs. 104.7±28.2日)で有意差が認められた。一方で,79点以上の患者では年齢(75.0±13.9歳vs. 84.3±5.2歳),在院日数(74.8±31.7日vs. 98.5±29.6日),退院時FIM合計点(107.2±12.3点vs. 95.2±10.2点)で有意差が認められた。
また,変更群33名の退院予定先が自宅から施設へと変更になった平均日数は62.5日±28.5日であり,変更の理由は患者の状態に見合った介護が提供できないことが15件と最も多く,次いで独居が7件,本人・家族の希望が5件,認知症が2件,家屋改修終了までの待機が1件,無回答が3件であった。その中で,退院持FIM合計点が79点以上の11名では独居が5件,本人・家族の希望が3件,認知症が1件,家屋改修の終了待ちが1件,無回答が1件であった。
【考察】
本研究の結果,変更群の患者は有意に在院日数が長く,施設探しや入所待ちに時間を要していることが原因であると考えられる。変更群の退院時FIM 79点以上の患者は自宅群の患者に比べ退院時FIM合計点が低い結果であったが,比較的高い日常生活動作(ADL)能力を有していることがわかった。
また変更理由からは,施設退院へと変更になった患者のうちFIMが79点未満のADL能力が低い患者は主に家族の介護力不足によって自宅退院から施設退院へと変更となっている患者が多いと考えられ,できるだけ早期より患者家族に対して介助方法の指導や家屋環境の早期把握により自宅に近い環境で多くのADL練習を行うなどのアプローチにより自宅退院を実現できる可能性がある。
一方で,FIMが79点以上とADL能力が比較的保たれている患者では独居や本人・家族の希望など主に社会的要因が原因で施設退院へと変更となっている患者が多いことがわかった。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,今後自宅退院を目標として回リハ病棟へ入院する患者をより多く希望通りの転帰先へと導くために有益な情報であると考える。今後も様々な視点,特に社会的要因からの検証を行うことでより自宅退院を推進できるものと考えられる。