[1294] 肢位の違いによる内側広筋の筋活動特性
キーワード:内側広筋, 肢位別, 筋活動
【はじめに,目的】
内側広筋の働きは,膝関節の保護や支持性に重要な役割を担うほか,膝蓋骨の外側偏位を抑止する特異的な機能があるが,萎縮しやすく回復しにくい筋とされている。過去の報告では,下肢伸展挙上(以下,SLR)より座位からの膝関節伸展が有意に最大筋力において高いことや,SLRや固定SLRと比べ足部回外位立位で股関節内転の同期Settingの方が有意に高いという報告がある。しかし一方で,背臥位でのSettingや腹臥位・立位でのSettingのように肢位の違いによる有意差は無いという報告も多くみられている。そこで今回,肢位別による内側広筋の筋発揮量の変化を測定するとともに,内側広筋(以下,VM)/外側広筋(以下,VL)比によって肢位の違いによる変化を検討することとした。
【方法】
1.対象
下肢に整形外科的疾患の既往がない健常男性21名(平均年齢20.0±0.86歳)とした。
2.方法
測定下肢は利き足側とし,測定肢位は以下の5肢位とした。各測定課題は,5秒間の最大等尺性収縮(以下,MVC)を2回ずつ行なった。
①踵を目標物へ押し付けるようにSettingを行なう(踵Setting)
②椅子座位で脛骨内外旋中間位,膝関節屈曲60°で固定した膝関節伸展運動(座位Knee ext.)
③背臥位で,下肢を足関節部で固定して行なうSLR(固定SLR)
④足趾を床に接地した腹臥位でSetting(腹臥位Setting)
⑤足部回外位の立位で,股関節内転を同期させたSetting(立位同期Setting)
EMGは,それぞれの肢位において5秒間のMVCのうち,最初と最後の1秒間を除く中央の3秒間を基準として算出した。その値を背臥位でのSettingのIEMG(Integrated Electromyogram)を100%として正規化し,VM・VLの%IEMGを求めた。その後,VMの正規化された筋活動量をVLの正規化された活動量で除し,VM/VL比を算出した。筋電計には,EMGマスター(株式会社 小沢医科器械社製)を用いた。統計処理は,各肢位の違いによるVM%IEMGとVM/VLそれぞれを反復による一元配置分散分析後,多重比較検定(Scheffe’s F test)にて検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
被検者に対して,本研究の方法を説明し同意を得た被検者に対し行なった。
【結果】
各肢位におけるVMの筋活動量平均%IEMGは,踵Setting 115.2±20.6%,座位Knee ext. 98.6±54.1%,固定SLR 77.8±36.1%,腹臥位Setting 98.9±21.6%,立位同期Setting 65.3±24.2%であり,反復による一元配置分散分析の結果有意差が認められた(p<0.01)。多重比較検定においては,踵Setting・立位同期Setting,踵Setting・固定SLR,座位Knee ext.・立位同期Setting,背臥位Setting・立位同期Setting,腹臥位Setting・立位同期Setting間において有意差が認められた(p<0.01)。
VM/VL比においては,一元配置分散分析と多重比較検定ともに有意差は認められなかった(0.05<p)。
【考察】
本研究では,VM/VL比において肢位の変化による有意差は認められなかったため,VM有意のSetting方法は得られず各肢位において差がないことが言える。しかし,肢位の変化によりVMの筋活動量の特性は認められ,立位同期Settingは他のどの肢位と比較しても有意に活動量が低かった。これは,CKCで行なうことでVM以外の他の筋群も活動することによりVM単独の活動が抑制されたためと考えられる。また,本研究で行なった肢位においては他のどの肢位と比べ踵Settingの筋活動が高かった。これは,OKCであるとともに被検者にとって運動方向が容易にイメージできるためだと考えられる。よって,患者へのSetting指導としては踵Settingで行なうことを推奨する。ただし,患者によっては腹臥位や立位のようにCKCでトレーニングを行なうほうが良い場合もあるため,今回の結果を踏まえセラピストがそれぞれの肢位における運動特性を理解し理学療法プログラムを立案することがより効果の高い理学療法を提供できるものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,肢位の変化により筋活動量の違いを理解した上で,各肢位における運動特性を考え理学療法プログラムを立案することにより,さらに効果の高い理学療法を提供できるものと考える。
内側広筋の働きは,膝関節の保護や支持性に重要な役割を担うほか,膝蓋骨の外側偏位を抑止する特異的な機能があるが,萎縮しやすく回復しにくい筋とされている。過去の報告では,下肢伸展挙上(以下,SLR)より座位からの膝関節伸展が有意に最大筋力において高いことや,SLRや固定SLRと比べ足部回外位立位で股関節内転の同期Settingの方が有意に高いという報告がある。しかし一方で,背臥位でのSettingや腹臥位・立位でのSettingのように肢位の違いによる有意差は無いという報告も多くみられている。そこで今回,肢位別による内側広筋の筋発揮量の変化を測定するとともに,内側広筋(以下,VM)/外側広筋(以下,VL)比によって肢位の違いによる変化を検討することとした。
【方法】
1.対象
下肢に整形外科的疾患の既往がない健常男性21名(平均年齢20.0±0.86歳)とした。
2.方法
測定下肢は利き足側とし,測定肢位は以下の5肢位とした。各測定課題は,5秒間の最大等尺性収縮(以下,MVC)を2回ずつ行なった。
①踵を目標物へ押し付けるようにSettingを行なう(踵Setting)
②椅子座位で脛骨内外旋中間位,膝関節屈曲60°で固定した膝関節伸展運動(座位Knee ext.)
③背臥位で,下肢を足関節部で固定して行なうSLR(固定SLR)
④足趾を床に接地した腹臥位でSetting(腹臥位Setting)
⑤足部回外位の立位で,股関節内転を同期させたSetting(立位同期Setting)
EMGは,それぞれの肢位において5秒間のMVCのうち,最初と最後の1秒間を除く中央の3秒間を基準として算出した。その値を背臥位でのSettingのIEMG(Integrated Electromyogram)を100%として正規化し,VM・VLの%IEMGを求めた。その後,VMの正規化された筋活動量をVLの正規化された活動量で除し,VM/VL比を算出した。筋電計には,EMGマスター(株式会社 小沢医科器械社製)を用いた。統計処理は,各肢位の違いによるVM%IEMGとVM/VLそれぞれを反復による一元配置分散分析後,多重比較検定(Scheffe’s F test)にて検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
被検者に対して,本研究の方法を説明し同意を得た被検者に対し行なった。
【結果】
各肢位におけるVMの筋活動量平均%IEMGは,踵Setting 115.2±20.6%,座位Knee ext. 98.6±54.1%,固定SLR 77.8±36.1%,腹臥位Setting 98.9±21.6%,立位同期Setting 65.3±24.2%であり,反復による一元配置分散分析の結果有意差が認められた(p<0.01)。多重比較検定においては,踵Setting・立位同期Setting,踵Setting・固定SLR,座位Knee ext.・立位同期Setting,背臥位Setting・立位同期Setting,腹臥位Setting・立位同期Setting間において有意差が認められた(p<0.01)。
VM/VL比においては,一元配置分散分析と多重比較検定ともに有意差は認められなかった(0.05<p)。
【考察】
本研究では,VM/VL比において肢位の変化による有意差は認められなかったため,VM有意のSetting方法は得られず各肢位において差がないことが言える。しかし,肢位の変化によりVMの筋活動量の特性は認められ,立位同期Settingは他のどの肢位と比較しても有意に活動量が低かった。これは,CKCで行なうことでVM以外の他の筋群も活動することによりVM単独の活動が抑制されたためと考えられる。また,本研究で行なった肢位においては他のどの肢位と比べ踵Settingの筋活動が高かった。これは,OKCであるとともに被検者にとって運動方向が容易にイメージできるためだと考えられる。よって,患者へのSetting指導としては踵Settingで行なうことを推奨する。ただし,患者によっては腹臥位や立位のようにCKCでトレーニングを行なうほうが良い場合もあるため,今回の結果を踏まえセラピストがそれぞれの肢位における運動特性を理解し理学療法プログラムを立案することがより効果の高い理学療法を提供できるものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,肢位の変化により筋活動量の違いを理解した上で,各肢位における運動特性を考え理学療法プログラムを立案することにより,さらに効果の高い理学療法を提供できるものと考える。