第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節31

Sat. May 31, 2014 4:40 PM - 5:30 PM ポスター会場 (運動器)

座長:森口晃一(恩賜財団済生会八幡総合病院診療技術部リハビリテーション科)

運動器 ポスター

[1296] UKAとTKAにおける術後早期の運動機能回復の比較

南晃平1, 河本佑子1, 藤井賢吾1, 杉優子1, 田中繁治2, 難波良文3, 花山耕三4 (1.川崎医科大学附属病院リハビリテーションセンター, 2.川崎リハビリテーション学院, 3.川崎医科大学骨・関節整形外科学, 4.川崎医科大学リハビリテーション医学教室)

Keywords:人工膝関節置換術, 術後早期, 運動機能回復

【はじめに,目的】
人工膝関節単顆置換術(以下,UKA)は,人工膝関節全置換術(以下,TKA)に比べ,より多くの自家組織を温存し,低侵襲であることから術後の膝関節機能の早期回復が期待されている。本研究の目的はUKA患者とTKA患者の術後早期の運動機能回復の違いを検討することである。
【方法】
2012年7月から2013年9月までに,内反型変形性膝関節症に対し,当院でUKAまたはTKAを施行した患者のうち術前より歩行自立していなかった者,神経学的疾患を有する者,透析導入していた者を除く67例71膝(UKA群49例51膝,TKA群18例20膝)を対象とした。さらに術後二次的合併症(創部離開,感染徴候,深部静脈血栓症,肺梗塞)を認めた5例5膝(UKA群1例1膝,TKA群4例4膝)を除外した。
検討項目は患者の属性項目として年齢,体重,BMI,術前・術後FTA,術前JOAスコア,在院日数を用いた。また運動機能として術前,術後1週,術後2週における膝関節屈曲・伸展可動域(以下,ROM),膝関節屈曲・伸展筋力,歩行時痛(VAS),10m歩行時間,Timed Up and Go Test(以下,TUG)と,術後1週,術後2週の各測定項目の値から術前値を基準として変化量または変化率を算出したものを用いた。
統計解析は上記の検討項目をUKA群とTKA群で対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用いて2群比較した。全ての統計解析の有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿い,当院倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
患者の属性項目は術前術側のFTAがUKA群181±5°,TKA群186±7°とTKA群で有意に大きかった。また在院日数はUKA群16±3日,TKA群19±3日とUKA群で有意に短かった。その他の属性項目は有意差を認めなかった。
術前の運動機能は膝関節屈曲ROMがUKA群129±13°,TKA群119±17°,TUGがUKA群10.5±2.7秒,TKA群13.4±4.5秒とUKA群で有意に良好であった。その他の項目は有意差を認めなかった。術後1週では膝関節屈曲ROMがUKA群102±11°,TKA群93±10°,TUGがUKA群12.3±4.4秒,TKA群15.7±5.0秒,膝関節屈曲筋力がUKA群0.19±0.07Nm/kg,TKA群0.14±0.05Nm/kg,術後2週では膝関節屈曲ROMがUKA群107±11°,TKA群98±13°,TUGがUKA群11.4±4.5秒,TKA群14.7±5.1秒とUKA群で有意に良好であった。
術後1週における運動機能の変化量,変化率は膝関節屈曲筋力変化率がUKA群80±41%,TKA群53±19%,TUG変化率がUKA群120±24%,TKA群142±40%とUKA群で有意に回復が早かった。その他の項目では有意差を認めず,また術後2週の変化量,変化率はすべての項目で有意差を認めなかった。
【考察】
術前の検討項目において術側FTA,膝関節屈曲ROM,TUGでUKA群が良好であった。この結果からUKA群の対象はTKA群に比べ膝関節変形が軽度であり,立ち座りや方向転換を含めた移動能力が高いことを示している。今回,UKA群とTKA群の術後の運動機能回復の違いを検討するため術後の運動機能の変化量,変化率を比較した。術後1週における膝関節屈曲筋力変化率とTUG変化率でUKA群の回復が早かった。一般にUKAはTKAに比べ低侵襲であり,早期から良好な機能回復が期待できることから,膝関節屈曲筋力やTUGの術後早期の回復が有意に良好であったと考えられる。
また,UKA群では在院日数が有意に短かった。UKA群ではTKA群に比べTUGで良好な結果を示し,立ち座り動作に必要な膝関節屈曲角度100°を術後早期から獲得している。運動機能面から考えると退院後の日常生活では椅子からの立ち座り動作や屋内短距離の移動動作が重要と考えられ,このことがUKA群の在院日数短縮に影響したものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
UKA患者とTKA患者の術後早期の運動機能回復の違いについて明らかにすることで,術後のリハビリテーションにおいてプログラム立案の一助になると考えられる。