[1310] 低緊張検査法Bulbena Criteriaの検者間信頼性
キーワード:Bulbena Criteria, 信頼性, 低緊張
【はじめに,目的】低緊張は「スカーフ徴候」「逆U字徴候」など障害児・者の特徴の一つとして挙げられるが,Martin.らは,セラピストにより「筋力低下」,「持久性低下」,「円背」,「関節弛緩性」など様々に捉えていると報告している。そこで本研究は低緊張検査法Bulbena Criteriaの信頼性を調査することを目的とした。
【方法】対象は健常な大人10名,検者は3名であり本検査法については初めて知り得たものとした。検者に対し本検査法について20分間で説明した。測定者を含めた検者4名で検査の練習を10分間施行した。その際,質疑応答の内容も検査に対する情報の差が生じないように注意した。講義後,検者3名の各々の結果が知られないように検者3名を個別の部屋に分け,検査を施行した。可動範囲は疼痛のない範囲でendfeelまでとした。結果はすべて角度計を用いた角度の値とした。測定に関しては検者の検査終了の合図の後,同一の測定者が測定を行った。Bulbena Criteriaとは,簡易な低緊張の判別をするための評価法である。9つの関節の関節弛緩性と皮下溢血班の10項目によって評価し,女性5項目以上,男性4項目以上当てはまると低緊張と判別される。本研究では健常者では測定不可能な検査や行いにくい検査,また判定基準が曖昧なものを除外した6項目を抜粋して行った。項目の検査法は,①母指の項目:測定点は距離となっているが角度へと変更した。測定肢位は端座位とし,検者は対象の上肢を支持し,手関節背屈を伴い,母指を前腕掌側へ近づける。測定点は基本軸を橈骨,移動軸を第一中手骨とした。②小指の項目:測定肢位は端座位とし,対象は手掌面をベッド上につけ,検者は対象の小指を把持し,背側へ伸展させる。その際,他の指が浮き上がらないよう検者は他方の手で固定し,基本軸を第五中手骨,移動軸を第五基節骨とし測定した。③肘過伸展の項目:測定肢位は端座位とし,検者が対象の上腕を把持し,前腕を伸展方向へと動かし,基本軸を上腕骨,移動軸を橈骨とし測定した。④股外転の項目:測定肢位は背臥位とし,検者は対象の両下肢を把持し,両側を他動的に外転方向へ動かし,両側の大腿中央線(膝蓋骨中心を通る線)の交わる点を測定した。⑤足背屈の項目:測定肢位は長座位とし,検者は対象の足底を把持し,足関節背屈方向に動か(膝伸展位)し基本軸を腓骨への垂直線,移動軸を第五中足骨とし測定した。⑥中足趾節間関節の項目:測定肢位は膝立て座位とし,検者は対象の拇趾先端を把持し,背側へ伸展させる。その際,他の指が浮き上がらないように検者は他方の手で固定し,基本軸を第一中足骨,移動軸を第一基節骨とし測定した。統計ソフトはR-2.8.1を使用し,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient(以下ICC)にて解析をした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は神戸国際大学倫理審査委員会の承認(第2013-005号)を得て施行した。
【結果】母指の項目はICC:0.718・SEM:7.68(0.39~0.91),小指の項目はICC:0.88・SEM:6.15(0.70~0.96),肘過伸展の項目はICC:0.78・SEM:2.65(0.51~0.93),股外転の項目はICC:0.72・SEM:5.19(0.40~0.91),足背屈の項目はICC:0.28・SEM:3.14(-0.09~0.70),中足趾節間関節の項目は,ICC0.69・SEM:8.99(0.35~0.90)であった。
【考察】今井らによるとICCが0.9以上で「優秀」,0.8以上で「良好」,0.7以上で「普通」,0.6以上で「可能」,0.6未満で「要再考」とされている。母指の項目は0.718であり普通であった。小指の項目は0.886であり「優秀」で,肘過伸展の項目は0.787であり「普通」,股外転の項目は0.725であり「普通」,足背屈の項目は0.287であり「要再考」,中足趾節間関節の項目は0.693で「可能」であった。足背屈の項目の低値であった理由として,足背屈の項目では可動範囲が小さく5°の差であっても影響が大きく表れたことと,足背屈のend feelは軟部組織性であるため検者により可動域に差が生じたのではないかと考えた。本研究の限界として,同一日に連続して本研究を施行したためストレッチ効果が出てしまうことから,数値に変化が生じたと考えられる。次に角度計が5°刻みでの測定であるため,測定時に数値が角度計の目盛りの間にあった際,測定者の主観により結果に差が生じたと考える。今後の課題として,本邦での実用性の確立のためには検者内の信頼性や妥当性も検証すべきであった。また対象が少なかったことが挙げられる。
【理学療法学研究としての意義】
低緊張は臨床に置いてよく見られる現象の一つであるが,それを捉えるための検査についての報告は少なく,本研究において,一部の検査項目においては低値であったが,それ以外の項目では本検査は信頼性が高く理学療法の研究において意義があると考える。
【方法】対象は健常な大人10名,検者は3名であり本検査法については初めて知り得たものとした。検者に対し本検査法について20分間で説明した。測定者を含めた検者4名で検査の練習を10分間施行した。その際,質疑応答の内容も検査に対する情報の差が生じないように注意した。講義後,検者3名の各々の結果が知られないように検者3名を個別の部屋に分け,検査を施行した。可動範囲は疼痛のない範囲でendfeelまでとした。結果はすべて角度計を用いた角度の値とした。測定に関しては検者の検査終了の合図の後,同一の測定者が測定を行った。Bulbena Criteriaとは,簡易な低緊張の判別をするための評価法である。9つの関節の関節弛緩性と皮下溢血班の10項目によって評価し,女性5項目以上,男性4項目以上当てはまると低緊張と判別される。本研究では健常者では測定不可能な検査や行いにくい検査,また判定基準が曖昧なものを除外した6項目を抜粋して行った。項目の検査法は,①母指の項目:測定点は距離となっているが角度へと変更した。測定肢位は端座位とし,検者は対象の上肢を支持し,手関節背屈を伴い,母指を前腕掌側へ近づける。測定点は基本軸を橈骨,移動軸を第一中手骨とした。②小指の項目:測定肢位は端座位とし,対象は手掌面をベッド上につけ,検者は対象の小指を把持し,背側へ伸展させる。その際,他の指が浮き上がらないよう検者は他方の手で固定し,基本軸を第五中手骨,移動軸を第五基節骨とし測定した。③肘過伸展の項目:測定肢位は端座位とし,検者が対象の上腕を把持し,前腕を伸展方向へと動かし,基本軸を上腕骨,移動軸を橈骨とし測定した。④股外転の項目:測定肢位は背臥位とし,検者は対象の両下肢を把持し,両側を他動的に外転方向へ動かし,両側の大腿中央線(膝蓋骨中心を通る線)の交わる点を測定した。⑤足背屈の項目:測定肢位は長座位とし,検者は対象の足底を把持し,足関節背屈方向に動か(膝伸展位)し基本軸を腓骨への垂直線,移動軸を第五中足骨とし測定した。⑥中足趾節間関節の項目:測定肢位は膝立て座位とし,検者は対象の拇趾先端を把持し,背側へ伸展させる。その際,他の指が浮き上がらないように検者は他方の手で固定し,基本軸を第一中足骨,移動軸を第一基節骨とし測定した。統計ソフトはR-2.8.1を使用し,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient(以下ICC)にて解析をした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は神戸国際大学倫理審査委員会の承認(第2013-005号)を得て施行した。
【結果】母指の項目はICC:0.718・SEM:7.68(0.39~0.91),小指の項目はICC:0.88・SEM:6.15(0.70~0.96),肘過伸展の項目はICC:0.78・SEM:2.65(0.51~0.93),股外転の項目はICC:0.72・SEM:5.19(0.40~0.91),足背屈の項目はICC:0.28・SEM:3.14(-0.09~0.70),中足趾節間関節の項目は,ICC0.69・SEM:8.99(0.35~0.90)であった。
【考察】今井らによるとICCが0.9以上で「優秀」,0.8以上で「良好」,0.7以上で「普通」,0.6以上で「可能」,0.6未満で「要再考」とされている。母指の項目は0.718であり普通であった。小指の項目は0.886であり「優秀」で,肘過伸展の項目は0.787であり「普通」,股外転の項目は0.725であり「普通」,足背屈の項目は0.287であり「要再考」,中足趾節間関節の項目は0.693で「可能」であった。足背屈の項目の低値であった理由として,足背屈の項目では可動範囲が小さく5°の差であっても影響が大きく表れたことと,足背屈のend feelは軟部組織性であるため検者により可動域に差が生じたのではないかと考えた。本研究の限界として,同一日に連続して本研究を施行したためストレッチ効果が出てしまうことから,数値に変化が生じたと考えられる。次に角度計が5°刻みでの測定であるため,測定時に数値が角度計の目盛りの間にあった際,測定者の主観により結果に差が生じたと考える。今後の課題として,本邦での実用性の確立のためには検者内の信頼性や妥当性も検証すべきであった。また対象が少なかったことが挙げられる。
【理学療法学研究としての意義】
低緊張は臨床に置いてよく見られる現象の一つであるが,それを捉えるための検査についての報告は少なく,本研究において,一部の検査項目においては低値であったが,それ以外の項目では本検査は信頼性が高く理学療法の研究において意義があると考える。