[1330] 骨粗鬆症と転倒の予防教室参加者と一般住民の骨密度と体力および食事内容の比較
キーワード:骨密度, 体力, 栄養
【はじめに,目的】昨年の本学会において,住民主体で行った骨粗鬆症と転倒の予防教室の長期的効果について次のような結果を発表した。骨粗鬆症や転倒の予防に効果があるといわれている体力は全体で維持向上している項目が多く,低下や変動していた項目も高い値を維持していた。しかし,骨密度は長期的には年齢とともに低下していた。現在,骨粗鬆症予防には運動とともに,カルシウムの多いバランスのとれた食事が推奨されている。そこで今回の研究は,骨密度,体力,食事について,骨粗鬆症と転倒の予防教室(以下予防教室)に参加していて運動が習慣化されている住民と予防教室に参加していない一般住民を対象に調査分析して,今後の骨粗鬆症予防の一助とすることを目的とした。
【方法】対象は平成24年に予防教室に参加していた住民(教室群)43名(平均年齢±SD;67.5±5.9歳),一般住民(一般群)44名(65.2±4.1歳)とした。身体特性として,身長,体重,アームスパンを測定した。骨密度は超音波法で踵骨の音響的評価値(OSI)を測定し,それから算出される若年成人平均値(YAM%)および同年齢平均値(同年齢%)を指標とした。体力は膝伸展筋力を簡易型の把持筋力計により,握力,上体起こし,長座位前屈,開眼片脚起立,10m障害物歩行,6分間歩行を文部科学省の新体力テスト(65歳~79歳対象)により,Time up and go test(TUG)を一般化している方法で測定した。栄養・食事はエクセル栄養君Ver.5対応の食物摂取頻度調査(FFQg Ver. 3.0)(吉村幸雄,2010)を用いて実施した。統計分析はIBM SPSS Statistics 21を用いて,教室群と一般群の骨密度と体力はt-検定を,栄養・食事についてはカイ2乗検定を行って比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,所属機関の倫理委員会の承認を得て(承認番号24005),測定時には文書と口頭で説明し,文書による同意書を得た。
【結果】教室群と一般群を比較すると,年齢と身体特性に有意差はなかった。骨密度は,教室群と対照群でYAM%(平均±SD)78±8%と76±10%,同年齢%93±9%と90±12%で有意差はなかった。体力は下肢筋力が25±5kgと29±7kgと有意に一般群が優れていたが(p=0.004),上体起こし10±7回と7±6回(p=0.029),6分間歩行567±61mと499±50m(p=0.001),10m障害物歩行7.0±1.2秒と7.9±1.1秒(p=0.001),TUG5.9±0.7秒と6.3±0.9秒は有意に教室群が優れており,長座位前屈42±8cmと40±8cm,片脚起立103±28秒と96±38秒,握力26±4kgと27±4kgは有意差がなかった。栄養・食事調査では,両群とも食事バランスが悪く,栄養比率でも脂質,動物性タンパク質,飽和脂肪酸などの摂取が過剰であり,摂取エネルギー中の穀類エネルギー比は低かった。また,骨形成に重要なカルシウム摂取も不足している対象者が多かった。これらの分布はいずれもカイ2乗検定の結果,両群に有意差は生じなかった。
【考察】骨密度は両群とも低下しており,有意差はなかったが教室群に比べて一般群はより低値の傾向があった。体力は膝伸展筋力では一般群が有意に優れていたが,上体起こし,6分間歩行,10m障害物歩行,TUGは教室群が有意に優れていた。教室の頻度は月1~2回なので,教室への参加だけではトレーニング効果はないと考えられる。教室では住民が主体となって運動の基本を体得し,続けるようにしている。教室の参加者は運動を習慣化させたため,一般群に比べて体力については優れていた項目が多かったと推察される。しかし,栄養・食事調査では,両群ともバランスの悪い食事,脂質・動物性タンパク質・飽和脂肪酸の過剰摂取,カルシウム不足が認められた。教室群では体力は良好な状態にもかかわらず,骨密度の減少が認められたのは,栄養の影響が大きいと考えられる。今後,骨粗鬆症予防の指導では運動だけでなく,栄養指導が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】寝たきりの原因として,循環器疾患についで骨折や関節疾患が挙げられている。高齢社会において健康寿命を延ばすためには,骨粗鬆症と転倒を予防することが必要である。そのためには運動とカルシウムの多いバランスの良い食事をとること重要とされている。本研究は,骨粗鬆症と転倒の予防に,理学療法士が関与している運動指導によって体力を維持増強できることを示している。しかし,それだけでは不十分で,他職種と連携して栄養指導にも関わることで,骨粗鬆症予防に一層貢献できる可能性があることを示唆している。
【方法】対象は平成24年に予防教室に参加していた住民(教室群)43名(平均年齢±SD;67.5±5.9歳),一般住民(一般群)44名(65.2±4.1歳)とした。身体特性として,身長,体重,アームスパンを測定した。骨密度は超音波法で踵骨の音響的評価値(OSI)を測定し,それから算出される若年成人平均値(YAM%)および同年齢平均値(同年齢%)を指標とした。体力は膝伸展筋力を簡易型の把持筋力計により,握力,上体起こし,長座位前屈,開眼片脚起立,10m障害物歩行,6分間歩行を文部科学省の新体力テスト(65歳~79歳対象)により,Time up and go test(TUG)を一般化している方法で測定した。栄養・食事はエクセル栄養君Ver.5対応の食物摂取頻度調査(FFQg Ver. 3.0)(吉村幸雄,2010)を用いて実施した。統計分析はIBM SPSS Statistics 21を用いて,教室群と一般群の骨密度と体力はt-検定を,栄養・食事についてはカイ2乗検定を行って比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,所属機関の倫理委員会の承認を得て(承認番号24005),測定時には文書と口頭で説明し,文書による同意書を得た。
【結果】教室群と一般群を比較すると,年齢と身体特性に有意差はなかった。骨密度は,教室群と対照群でYAM%(平均±SD)78±8%と76±10%,同年齢%93±9%と90±12%で有意差はなかった。体力は下肢筋力が25±5kgと29±7kgと有意に一般群が優れていたが(p=0.004),上体起こし10±7回と7±6回(p=0.029),6分間歩行567±61mと499±50m(p=0.001),10m障害物歩行7.0±1.2秒と7.9±1.1秒(p=0.001),TUG5.9±0.7秒と6.3±0.9秒は有意に教室群が優れており,長座位前屈42±8cmと40±8cm,片脚起立103±28秒と96±38秒,握力26±4kgと27±4kgは有意差がなかった。栄養・食事調査では,両群とも食事バランスが悪く,栄養比率でも脂質,動物性タンパク質,飽和脂肪酸などの摂取が過剰であり,摂取エネルギー中の穀類エネルギー比は低かった。また,骨形成に重要なカルシウム摂取も不足している対象者が多かった。これらの分布はいずれもカイ2乗検定の結果,両群に有意差は生じなかった。
【考察】骨密度は両群とも低下しており,有意差はなかったが教室群に比べて一般群はより低値の傾向があった。体力は膝伸展筋力では一般群が有意に優れていたが,上体起こし,6分間歩行,10m障害物歩行,TUGは教室群が有意に優れていた。教室の頻度は月1~2回なので,教室への参加だけではトレーニング効果はないと考えられる。教室では住民が主体となって運動の基本を体得し,続けるようにしている。教室の参加者は運動を習慣化させたため,一般群に比べて体力については優れていた項目が多かったと推察される。しかし,栄養・食事調査では,両群ともバランスの悪い食事,脂質・動物性タンパク質・飽和脂肪酸の過剰摂取,カルシウム不足が認められた。教室群では体力は良好な状態にもかかわらず,骨密度の減少が認められたのは,栄養の影響が大きいと考えられる。今後,骨粗鬆症予防の指導では運動だけでなく,栄養指導が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】寝たきりの原因として,循環器疾患についで骨折や関節疾患が挙げられている。高齢社会において健康寿命を延ばすためには,骨粗鬆症と転倒を予防することが必要である。そのためには運動とカルシウムの多いバランスの良い食事をとること重要とされている。本研究は,骨粗鬆症と転倒の予防に,理学療法士が関与している運動指導によって体力を維持増強できることを示している。しかし,それだけでは不十分で,他職種と連携して栄養指導にも関わることで,骨粗鬆症予防に一層貢献できる可能性があることを示唆している。