[1334] 自覚的疲労感と機能低下との関係
キーワード:疲労, 高齢者, 身体活動量
【はじめに,目的】覚的疲労感は,心理状態の一つであり身体機能や認知機能に影響を与えるだけでなく,精神疾患への移行や心大血管の罹患率とも関連しており,死亡率を上昇させる一因になるとされている。この自覚的疲労感を示す高齢者は増加の一途を辿っており,高齢期において予防すべき老年症候群の一つである。加齢と共に自覚的疲労感と関係する機能は変化し,中高齢期・高齢初期ではうつ傾向など精神状態との関連,高齢中期には認知機能との関連,高齢後期には活動量との関連が報告されている。しかし,これらは別々の研究であり,それぞれ自覚的疲労感の定義が異なっていること,また各研究によって検討している因子が異なっている。そこで本研究では,大規模サンプルの横断研究にて対象者を加齢変化に模した年代別グループに分け,自覚的疲労感と身体機能,身体活動,認知機能との間で年代別の特徴的な関係が認められるかどうか検討した。
【方法】本研究は,大規模横断研究Obe Study of Health Promotion for Elderlyに参加した5104名の内,除外基準(重篤な脳血管障害・神経変性疾患を有する,うつ病を有する,Mini Mental State Examination(MMSE)≤18)に該当しない地域在住高齢者4898名を対象とし,それらの対象者を60代グループ(n=1924,67.0±1.5歳,女性51.9%),70代グループn=2383,73.6±2.8歳,女性49.5%),80代グループ(n=591,83.4±3.4歳,女性51.3%)に群わけした。自覚的疲労感はStudy of Osteoporotic Fractures indexの基準に則って,評価を行った。その他の計測項目は,対象者属性,身体機能としてTimed Up & Go(TUG)と握力,身体活動として1日の平均的な歩行時間を示す(平均日歩行時間),認知機能としてMMSE,Trail Making Test Part AおよびB(TMT-A,TMT-B),Symbol digit substitution test(SDST)とした。統計解析は,年代別グループを群要因とした一元配置分散分析,およびカイ二乗検定を実施し,群間比較を行った。潜在的な交絡因子(性別,服薬数,うつ傾向(Geriatric Depression Scale≥6))で調整した上で,各年代別の自覚的疲労感と各機能・身体活動との関係を検討するために,従属変数に自覚的疲労感,独立変数に各機能・活動の変数を投入したロジスティック回帰分析を実施しOdds比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を算出した。なお,統計学的有意水準はすべて5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の主旨,目的を口頭と書面にて説明し,同意を得た。本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。本報告に関連し,開示すべきCOI関係にある企業はない。
【結果】各年代別グループおいて,性別を除く全ての変数に有意な群間差が認められ,自覚的疲労感を有する人数はそれぞれ60代グループ790名(41.1%),70代グループ1058名(44.4%),80代グループ303名(51.3%)であった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析により各年代別の自覚的疲労感と各機能・身体活動との関係を検討したところ,60代グループでは平均日歩行時間(Odds比=0.844,95%信頼区間=0.850-0.919),TUG(OR=1.101,95%CI=1.018-1.191),SDST(OR=0.974,95%CI=0.955-0.992)が独立して関係していた。70代グループでは平均日歩行時間(OR=0.933,95%CI=0.900-0.967),TUG(OR=1.079,95%CI=1.019-1.143),SDST(OR=0.981,95%CI=0.965-0.997),TMT-A(OR=0.743,95%CI=0.9565-0.977)が独立して関係していた。80代グループでは平均日歩行時間のみが独立して関係していた(OR=0.854,95%CI=0.784-0.929)。
【考察】本研究おいて,加齢変化に伴い自覚的疲労感を有する高齢者の割合が増加することが示唆された。これにより,自覚的疲労感の発症において加齢が一つのリスク因子である可能性が示された。各年代グループにおいて自覚的疲労感との関連を認めた機能は一貫性がなかったが,平均日歩行時間に関しては,どの年代グループにおいても独立した関係が認められた。先行研究においても,特に超高齢者においては,日常生活動作の際にも自覚的疲労感を示すことが明らかとなっており,本研究においても支持する結果が得られた。横断研究であるため,因果関係を明らかにすることは困難であるが,どの年代グループに他の機能で補正後も自覚的疲労感と日常における活動量との間に関連が見られたことは,どんな高齢者であっても活動量の維持・向上は,老年症候群の1つである自覚的疲労感の予防に繋がる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】地域在住高齢者に対して活動量を維持・向上させる介入方法が自覚的疲労感を予防しうる可能性を示唆したことは,運動を指導する理学療法士の研究発展に意義のあるものと考えられた。
【方法】本研究は,大規模横断研究Obe Study of Health Promotion for Elderlyに参加した5104名の内,除外基準(重篤な脳血管障害・神経変性疾患を有する,うつ病を有する,Mini Mental State Examination(MMSE)≤18)に該当しない地域在住高齢者4898名を対象とし,それらの対象者を60代グループ(n=1924,67.0±1.5歳,女性51.9%),70代グループn=2383,73.6±2.8歳,女性49.5%),80代グループ(n=591,83.4±3.4歳,女性51.3%)に群わけした。自覚的疲労感はStudy of Osteoporotic Fractures indexの基準に則って,評価を行った。その他の計測項目は,対象者属性,身体機能としてTimed Up & Go(TUG)と握力,身体活動として1日の平均的な歩行時間を示す(平均日歩行時間),認知機能としてMMSE,Trail Making Test Part AおよびB(TMT-A,TMT-B),Symbol digit substitution test(SDST)とした。統計解析は,年代別グループを群要因とした一元配置分散分析,およびカイ二乗検定を実施し,群間比較を行った。潜在的な交絡因子(性別,服薬数,うつ傾向(Geriatric Depression Scale≥6))で調整した上で,各年代別の自覚的疲労感と各機能・身体活動との関係を検討するために,従属変数に自覚的疲労感,独立変数に各機能・活動の変数を投入したロジスティック回帰分析を実施しOdds比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を算出した。なお,統計学的有意水準はすべて5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の主旨,目的を口頭と書面にて説明し,同意を得た。本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。本報告に関連し,開示すべきCOI関係にある企業はない。
【結果】各年代別グループおいて,性別を除く全ての変数に有意な群間差が認められ,自覚的疲労感を有する人数はそれぞれ60代グループ790名(41.1%),70代グループ1058名(44.4%),80代グループ303名(51.3%)であった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析により各年代別の自覚的疲労感と各機能・身体活動との関係を検討したところ,60代グループでは平均日歩行時間(Odds比=0.844,95%信頼区間=0.850-0.919),TUG(OR=1.101,95%CI=1.018-1.191),SDST(OR=0.974,95%CI=0.955-0.992)が独立して関係していた。70代グループでは平均日歩行時間(OR=0.933,95%CI=0.900-0.967),TUG(OR=1.079,95%CI=1.019-1.143),SDST(OR=0.981,95%CI=0.965-0.997),TMT-A(OR=0.743,95%CI=0.9565-0.977)が独立して関係していた。80代グループでは平均日歩行時間のみが独立して関係していた(OR=0.854,95%CI=0.784-0.929)。
【考察】本研究おいて,加齢変化に伴い自覚的疲労感を有する高齢者の割合が増加することが示唆された。これにより,自覚的疲労感の発症において加齢が一つのリスク因子である可能性が示された。各年代グループにおいて自覚的疲労感との関連を認めた機能は一貫性がなかったが,平均日歩行時間に関しては,どの年代グループにおいても独立した関係が認められた。先行研究においても,特に超高齢者においては,日常生活動作の際にも自覚的疲労感を示すことが明らかとなっており,本研究においても支持する結果が得られた。横断研究であるため,因果関係を明らかにすることは困難であるが,どの年代グループに他の機能で補正後も自覚的疲労感と日常における活動量との間に関連が見られたことは,どんな高齢者であっても活動量の維持・向上は,老年症候群の1つである自覚的疲労感の予防に繋がる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】地域在住高齢者に対して活動量を維持・向上させる介入方法が自覚的疲労感を予防しうる可能性を示唆したことは,運動を指導する理学療法士の研究発展に意義のあるものと考えられた。