[1388] サッカーのキック動作時における軸足側の足底圧分布
キーワード:サッカー, キック動作, 足底圧
【はじめに,目的】
サッカーという競技において,キック動作は最も特徴的であり,使用頻度の高い技術の一つである。サッカー選手に多いスポーツ障害の一つとして,第5中足骨疲労骨折が挙げられており,その発症は軸足(キック動作における支持側下肢)側に多かったという報告がある。しかし,第5中足骨疲労骨折の発症後・術後における理学療法に関して,患部への荷重負荷を軸足側の足底圧やキックの種類から検討した報告は少ない。キック動作時に軸足側第5中足骨へ加わる荷重負荷を明らかにすることは,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法の一助となり得る。そこで本研究では,軸足側の足底圧分布がキックの種類によって異なるかを比較・検討した。
【方法】
対象は,健常な男子アマチュアサッカー選手13名とした。対象には軸足側を裸足,蹴り足側はインドア用トレーニングシューズを着用させ,課題動作を行った。課題動作は,床面に置いて静止した5号球のサッカーボールを4m先の的(1m×1m)に向かって全力でキックする動作とした。その際,助走は任意の距離・角度からの一歩助走とし,軸足は足尖を的の方向へ真っすぐ向け,圧力分布測定装置(プレダスMD-1000,アニマ株式会社製)のセンサーマット上に踏み込むこととした。キック動作は,インサイド・インステップ・インフロントの3種類を利き足(ボールをキックする動作に関して,選手が主観的に得意とする側の下肢)でそれぞれ5試行ずつ行った。なお,3種類のキックの順番は順序効果を考慮し,無作為に決定した。
動作中に軸足側にかかった足底圧は,サンプリング周波数100Hzで測定した。解析には,軸足の踵接地から軸足の足尖離地までの最大値足底圧を用い,足底圧分布図を得た。得られた足底圧分布図を,前足部内側・前足部外側・後足部の3つの領域に分割した。各領域にかかった最大値足底圧を体重で除し,5試行のうち動作時間が最大・最小であった2試行を除いた3試行の平均値をもって各領域にかかった足底圧とした。
統計学的解析は有意水準を5%未満とし,各領域にかかった足底圧をキックの種類で比較するため反復測定の一元配置分散分析を用い,下位検定としてBonferroniの方法による多重比較検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,著者が所属する大学の研究倫理委員会に承認を得たものである(承認番号1303)。対象にはヘルシンキ宣言に則り,被検者の保護・権利の優先,自由参加,研究内容,研究による身体への影響の可能性などを口頭および文書にて説明し,同意を得た後に測定を行った。
【結果】
対象の属性および身体組成は,年齢18.9±1.2歳,競技歴10.3±2.8年,身長171.8±6.0cm,体重60.5±6.2kgであった。各領域における足底圧の平均値は,前足部内側では,インサイドで68.0±12.7kPa/kg,インステップで67.0±18.7kPa/kg,インフロントで67.3±16.3kPa/kgであった。前足部外側では,インサイドで80.4±17.4kPa/kg,インステップで104.1±21.6kPa/kg,インフロントで98.2±23.1kPa/kgであった。後足部では,インサイドで153.7±24.5kPa/kg,インステップで161.5±29.4kPa/kg,インフロントで170.1±30.7kPa/kgであった。これら3領域それぞれにかかった足底圧を3種類のキック動作間で比較したところ,前足部外側で有意差が認められた(p<0.001)。そのうち,インサイドとインステップ間(p<0.01),インサイドとインフロント間(p<0.05)において有意差が認められ,インステップとインフロントがインサイドと比較して前足部外側にかかる足底圧が大きかった。
【考察】
サッカーのキック動作では,軸足が外側へ大きく傾き外側荷重となることで,第5中足骨への荷重負荷が生じると考えられている。このことが第5中足骨疲労骨折の一因であると予想し,軸足側の足底圧分布がキックの種類によって異なるかを検討した。
インサイド・インステップ・インフロントの3種類のキック動作では軸足側の足底圧分布が異なり,特にインステップとインフロントで前足部外側の足底圧が大きかった。よってインステップとインフロントでは,軸足側の前足部外側への荷重が多くなり,第5中足骨への荷重負荷が大きい可能性がある。このことは,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法で,患部への荷重管理としてキックの種類を考慮する必要性を示唆している。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法のリスク管理の一助となり得るものである。
サッカーという競技において,キック動作は最も特徴的であり,使用頻度の高い技術の一つである。サッカー選手に多いスポーツ障害の一つとして,第5中足骨疲労骨折が挙げられており,その発症は軸足(キック動作における支持側下肢)側に多かったという報告がある。しかし,第5中足骨疲労骨折の発症後・術後における理学療法に関して,患部への荷重負荷を軸足側の足底圧やキックの種類から検討した報告は少ない。キック動作時に軸足側第5中足骨へ加わる荷重負荷を明らかにすることは,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法の一助となり得る。そこで本研究では,軸足側の足底圧分布がキックの種類によって異なるかを比較・検討した。
【方法】
対象は,健常な男子アマチュアサッカー選手13名とした。対象には軸足側を裸足,蹴り足側はインドア用トレーニングシューズを着用させ,課題動作を行った。課題動作は,床面に置いて静止した5号球のサッカーボールを4m先の的(1m×1m)に向かって全力でキックする動作とした。その際,助走は任意の距離・角度からの一歩助走とし,軸足は足尖を的の方向へ真っすぐ向け,圧力分布測定装置(プレダスMD-1000,アニマ株式会社製)のセンサーマット上に踏み込むこととした。キック動作は,インサイド・インステップ・インフロントの3種類を利き足(ボールをキックする動作に関して,選手が主観的に得意とする側の下肢)でそれぞれ5試行ずつ行った。なお,3種類のキックの順番は順序効果を考慮し,無作為に決定した。
動作中に軸足側にかかった足底圧は,サンプリング周波数100Hzで測定した。解析には,軸足の踵接地から軸足の足尖離地までの最大値足底圧を用い,足底圧分布図を得た。得られた足底圧分布図を,前足部内側・前足部外側・後足部の3つの領域に分割した。各領域にかかった最大値足底圧を体重で除し,5試行のうち動作時間が最大・最小であった2試行を除いた3試行の平均値をもって各領域にかかった足底圧とした。
統計学的解析は有意水準を5%未満とし,各領域にかかった足底圧をキックの種類で比較するため反復測定の一元配置分散分析を用い,下位検定としてBonferroniの方法による多重比較検定を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,著者が所属する大学の研究倫理委員会に承認を得たものである(承認番号1303)。対象にはヘルシンキ宣言に則り,被検者の保護・権利の優先,自由参加,研究内容,研究による身体への影響の可能性などを口頭および文書にて説明し,同意を得た後に測定を行った。
【結果】
対象の属性および身体組成は,年齢18.9±1.2歳,競技歴10.3±2.8年,身長171.8±6.0cm,体重60.5±6.2kgであった。各領域における足底圧の平均値は,前足部内側では,インサイドで68.0±12.7kPa/kg,インステップで67.0±18.7kPa/kg,インフロントで67.3±16.3kPa/kgであった。前足部外側では,インサイドで80.4±17.4kPa/kg,インステップで104.1±21.6kPa/kg,インフロントで98.2±23.1kPa/kgであった。後足部では,インサイドで153.7±24.5kPa/kg,インステップで161.5±29.4kPa/kg,インフロントで170.1±30.7kPa/kgであった。これら3領域それぞれにかかった足底圧を3種類のキック動作間で比較したところ,前足部外側で有意差が認められた(p<0.001)。そのうち,インサイドとインステップ間(p<0.01),インサイドとインフロント間(p<0.05)において有意差が認められ,インステップとインフロントがインサイドと比較して前足部外側にかかる足底圧が大きかった。
【考察】
サッカーのキック動作では,軸足が外側へ大きく傾き外側荷重となることで,第5中足骨への荷重負荷が生じると考えられている。このことが第5中足骨疲労骨折の一因であると予想し,軸足側の足底圧分布がキックの種類によって異なるかを検討した。
インサイド・インステップ・インフロントの3種類のキック動作では軸足側の足底圧分布が異なり,特にインステップとインフロントで前足部外側の足底圧が大きかった。よってインステップとインフロントでは,軸足側の前足部外側への荷重が多くなり,第5中足骨への荷重負荷が大きい可能性がある。このことは,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法で,患部への荷重管理としてキックの種類を考慮する必要性を示唆している。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,第5中足骨疲労骨折に対する理学療法のリスク管理の一助となり得るものである。