[1394] 両脚着地動作における足部アライメントと足部・足関節運動の関連
Keywords:足部アライメント, 着地動作, 足部詳細モデル
【はじめに,目的】
足底筋膜炎,第5中足骨疲労骨折などの足部オーバーユース障害は内側縦アーチ高といった足部アライメントと関連することが報告されており,足部アライメントが足部・足関節運動にどのような影響を与えるかを調査することは重要である。先行研究では静的な足部アライメントが足部・足関節運動と有意な相関を示すことや内側縦アーチの高さによって足部・足関節運動の差異が生じることが報告されているが,これらの研究の多くは歩行・走行を動作課題としている。オーバーユース障害は様々なスポーツ活動において認められるため,スポーツ活動で頻回に生じ,大きな衝撃を伴う着地動作を対象として,足部アライメントと足部・足関節運動の関連を調査することは重要であると考えられる。また,一般的に内側縦アーチが低い足部は柔軟性が大きいと考えられているが,アーチの高さが足部のセグメント間の運動にどのような影響を与えるかに関する報告も少ない。近年,体表マーカーより足部を複数のセグメントに設定するmulti-segment foot modelの発展により,動作時における足部のセグメント間の運動をより詳細に捉えることが可能であると報告されている。よって本研究の目的は,着地動作を対象とし,足部アライメントが足部・足関節運動に与える影響をmulti-segment foot modelを用いて検討することとした。
【方法】
対象を健常者17名(男性8名,女性9名,年齢21.8±1.1歳,身長166.9±9.1cm,体重57.1±7.5kg)とし,過去に下肢の骨折歴,手術歴,足関節捻挫の既往歴が無いこと,半年以内に下肢の整形外科的疾患を有さないことを条件とした。足部アライメント評価は内側縦アーチ高の指標としてアーチ高率(足趾を除く足長に対する舟状骨高の比率)を用いた。三次元動作解析には赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製,200Hz),床反力計2枚(Kistler社製,1000Hz)を用いた。30cm台からの両脚着地動作の成功試行3回を記録し,初期接地から接地後200msecを解析区間とした。足部モデルは先行研究で再現性が報告されているLeardiniら(2007)の方法に準じ,下腿,後足部,前足部に貼付したマーカーから各座標系を設定して1)下腿に対する後足部の角度(以下後足部),2)後足部に対する前足部の角度(以下前足部)を解析ソフトVisual 3D(C-motion社製)を用いて算出した。また,関節角度の算出は下腿踵骨角0°での立位を基準とした。解析区間における各関節角度最大値とアーチ高率の関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は0.05未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
各被験者には口頭と紙面を用いて実験内容を説明し,同意書に署名をいただいたうえで本研究に参加して頂いた。また,本研究は本学院倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
アーチ高率の平均値は23.2±2.0%であった。アーチ高率は前足部最大背屈角度(17.2±4.1°),前足部最大内転角度(2.6±3.6°),後足部最大外反角度(6.0±2.2°)において有意な相関関係を認めた(各々r=-0.601,p=0.011;r=-0.484,p=0.049;r=-0.608,p=0.01)。また,後足部最大外転角度(9.0±2.6°)も中等度な相関関係を認めた(r=-0.449,p=0.070)。その他の項目に有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
低い内側縦アーチ高で足部・足関節運動が大きくなる相関関係を示し,両脚着地動作においては低アーチ足で後足部外反,前足部背屈・内転が増大する結果を認め,加えて後足部外転も増大する傾向が認められた。
内側縦アーチ高と足部の性質に関しては,低アーチ足で足部柔軟性がより高いことが報告されている。着地動作においては,柔軟性が大きい低アーチ足で内側縦アーチの低下がより大きく生じたため,前足部背屈や後足部外反運動が大きく生じた可能性が考えられる。今回の所見は,内側縦アーチが低い傾向の足部では足部・足関節運動が大きく生じることによる軟部組織への伸張ストレスの増大が,一方,アーチが高い傾向の足部では足部における衝撃吸収能が低下することによる骨・関節へのストレスの増大がオーバーユース障害の発生と関連するとした仮説を支持する結果であった。また,本研究で認められた着地動作における足部アライメントと足部・足関節運動の関連は,歩行において認められる結果を一部支持する結果であった。
【理学療法学研究としての意義】
低い内側縦アーチ高では着地動作における足部・足関節運動がより大きく生じることで,軟部組織へのストレス増大を導く可能性が示唆された。オーバーユース障害発生・再発の予防のためには,低アーチ足における着地動作時の動的なアーチの低下を修正する必要があると考えられる。
足底筋膜炎,第5中足骨疲労骨折などの足部オーバーユース障害は内側縦アーチ高といった足部アライメントと関連することが報告されており,足部アライメントが足部・足関節運動にどのような影響を与えるかを調査することは重要である。先行研究では静的な足部アライメントが足部・足関節運動と有意な相関を示すことや内側縦アーチの高さによって足部・足関節運動の差異が生じることが報告されているが,これらの研究の多くは歩行・走行を動作課題としている。オーバーユース障害は様々なスポーツ活動において認められるため,スポーツ活動で頻回に生じ,大きな衝撃を伴う着地動作を対象として,足部アライメントと足部・足関節運動の関連を調査することは重要であると考えられる。また,一般的に内側縦アーチが低い足部は柔軟性が大きいと考えられているが,アーチの高さが足部のセグメント間の運動にどのような影響を与えるかに関する報告も少ない。近年,体表マーカーより足部を複数のセグメントに設定するmulti-segment foot modelの発展により,動作時における足部のセグメント間の運動をより詳細に捉えることが可能であると報告されている。よって本研究の目的は,着地動作を対象とし,足部アライメントが足部・足関節運動に与える影響をmulti-segment foot modelを用いて検討することとした。
【方法】
対象を健常者17名(男性8名,女性9名,年齢21.8±1.1歳,身長166.9±9.1cm,体重57.1±7.5kg)とし,過去に下肢の骨折歴,手術歴,足関節捻挫の既往歴が無いこと,半年以内に下肢の整形外科的疾患を有さないことを条件とした。足部アライメント評価は内側縦アーチ高の指標としてアーチ高率(足趾を除く足長に対する舟状骨高の比率)を用いた。三次元動作解析には赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製,200Hz),床反力計2枚(Kistler社製,1000Hz)を用いた。30cm台からの両脚着地動作の成功試行3回を記録し,初期接地から接地後200msecを解析区間とした。足部モデルは先行研究で再現性が報告されているLeardiniら(2007)の方法に準じ,下腿,後足部,前足部に貼付したマーカーから各座標系を設定して1)下腿に対する後足部の角度(以下後足部),2)後足部に対する前足部の角度(以下前足部)を解析ソフトVisual 3D(C-motion社製)を用いて算出した。また,関節角度の算出は下腿踵骨角0°での立位を基準とした。解析区間における各関節角度最大値とアーチ高率の関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は0.05未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
各被験者には口頭と紙面を用いて実験内容を説明し,同意書に署名をいただいたうえで本研究に参加して頂いた。また,本研究は本学院倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
アーチ高率の平均値は23.2±2.0%であった。アーチ高率は前足部最大背屈角度(17.2±4.1°),前足部最大内転角度(2.6±3.6°),後足部最大外反角度(6.0±2.2°)において有意な相関関係を認めた(各々r=-0.601,p=0.011;r=-0.484,p=0.049;r=-0.608,p=0.01)。また,後足部最大外転角度(9.0±2.6°)も中等度な相関関係を認めた(r=-0.449,p=0.070)。その他の項目に有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
低い内側縦アーチ高で足部・足関節運動が大きくなる相関関係を示し,両脚着地動作においては低アーチ足で後足部外反,前足部背屈・内転が増大する結果を認め,加えて後足部外転も増大する傾向が認められた。
内側縦アーチ高と足部の性質に関しては,低アーチ足で足部柔軟性がより高いことが報告されている。着地動作においては,柔軟性が大きい低アーチ足で内側縦アーチの低下がより大きく生じたため,前足部背屈や後足部外反運動が大きく生じた可能性が考えられる。今回の所見は,内側縦アーチが低い傾向の足部では足部・足関節運動が大きく生じることによる軟部組織への伸張ストレスの増大が,一方,アーチが高い傾向の足部では足部における衝撃吸収能が低下することによる骨・関節へのストレスの増大がオーバーユース障害の発生と関連するとした仮説を支持する結果であった。また,本研究で認められた着地動作における足部アライメントと足部・足関節運動の関連は,歩行において認められる結果を一部支持する結果であった。
【理学療法学研究としての意義】
低い内側縦アーチ高では着地動作における足部・足関節運動がより大きく生じることで,軟部組織へのストレス増大を導く可能性が示唆された。オーバーユース障害発生・再発の予防のためには,低アーチ足における着地動作時の動的なアーチの低下を修正する必要があると考えられる。