第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

スポーツ3

Sun. Jun 1, 2014 9:30 AM - 10:20 AM ポスター会場 (運動器)

座長:相澤純也(東京医科歯科大学医学部附属病院スポーツ医学診療センターアスレティックリハビリテーション部門)

運動器 ポスター

[1396] カーフレイズにおける足部構造の変化とCOPの関係性

大堀航輔1, 土居健次朗1, 河原常郎1, 大森茂樹1, 倉林準2, 門馬博2, 八並光信2 (1.医療法人社団鎮誠会, 2.杏林大学保健学部理学療法学科)

Keywords:カーフレイズ, COP, 足部構造

【はじめに,目的】
足部構造は全身の姿勢制御において大きな役割を担っている。足部構造はその上部にある下肢,骨盤,体幹部への運動に影響を及ぼしている。足部構造の変化は,動作によって全身のアライメントへ影響を与える。動作による足部構造の変化は,重心位置の変化を伴い,下肢,骨盤,体幹へ影響を伝搬していくと考えられた。
本報告の目的は,片脚立位時の足部構造を内側・外側縦アーチ高率(以下MAR・LAR)に着目し,カーフレイズ(以下CR)動作の際の足圧中心(COP)の変位との関係性を明らかにすることとした。
【方法】
対象は整形外科的疾患のない健常成人男性12名12肢(年齢23.8±1.8歳,身長170.4±6.2cm,体重65.6±9.0kg)とした。
1)足型計測
計測機器は(株)I-ware Laboratory社製のINFOOT USB Standard type(IFU-S-01)を使用した。計測肢位は片脚立位(荷重位)と座位(非荷重位)とした。片脚立位において上肢の支えは許可した。計測項目は足長,舟状骨点高,外踏まず長,インステップ囲最高点高,踵骨傾斜角とした。MARは舟状骨高点を足長で除したもの,LARはインステップ囲最高点高を外踏まず長で除したものと定義し,パーセント表記した。MAR・LARの変化率は,MAR・LARの荷重位と非荷重位における差分を体重で除し,正規化したものとした。
2)CR動作
計測機器はVICON MXシステム(VICON,カメラ7台,200Hz),床反力計OR6-7(AMTI1枚,1,000Hz),メトロノームとした。マーカは足部の4箇所(踵骨隆起,第2趾IP関節,第1MP関節,第5MP関節)に貼付した。運動課題は片脚でのCRとした。対象者はメトロノーム(60Hz)に合わせてCRを実施した。計測対象は片脚立位を開始とし,CR後,再び同肢位に戻るまでとした。解析項目はCOP移動量とした。解析方法は第2趾IP関節のマーカの値を基準点としてCOP(X,Y)の移動量を算出した。Xは足部に対して前後方向を示し,最も基準点に近づいた値を採用した。またYは足部に対して内外側方向を示し,基準点から最も離れた値を採用した。その後,算出したCOPの移動量とMAR・LARの変化率との相関をみた。
【倫理的配慮,説明と同意】
所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明した。同意が得られた者のみを対象に計測を行った。
【結果】
1)LAR・MARの変化率
LARの平均は非荷重時0.63±0.09%,荷重時0.59±0.09であった。MARの平均は非荷重時1.88±1.84%,荷重時16.39±2.15%であった。それぞれの荷重による変化率はLAR0.03±0.02%,MAR2.29±1.08%であった。
2)COPのX・Y軸方向の移動量
COP移動量の平均は前後方向-11.66±14.50mm,内外側方向10.65±21.70mmであった。
3)MAR・LAR変化率とCOP移動量の相関
MAR変化率とCOP前後移動量はr=0.18であった。MAR変化率とCOP内外側移動量はr=0.31であった。LAR変化率とCOP前後移動量はr=0.64であった。LAR変化率とCOP前後移動量はr=0.07であった。LAR変化率とCOP前後移動量のみ相関が認められた。また荷重位・非荷重位それぞれのMAR,LARはCOP移動量との相関はなかった。
【考察】
本研究は足部内側・外側縦アーチ高率(以下MAR・LAR)に着目し,カーフレイズ(以下CR)動作の際の足圧中心(COP)の変位との関係性を明らかにすることが目的であった。本結果から外側縦アーチ変化率が低いほど,CF動作時のCOPは前方へ移動する傾向が示された。外側縦アーチは可動性が少なく剛性が高いため,外在筋を足部に伝える役割を担うと言われる。カーフレイズ動作は下腿三頭筋が主動作筋として作用し踵骨が挙上しCOPが前方へ偏移する。よって,外側縦アーチの変化率は下腿三頭筋の作用と関連しているということが示唆された。
一方,MARの変化率とCOP移動量には統計学的に有意な相関関係が認められなかった。しかし,COPの内外側移動量に対してはLARの変化率よりもMARの変化率の方が強い関係性を示した。
【理学療法学研究としての意義】
臨床においてインソールやテーピングを用いて外側縦アーチの剛性を高めることはCOP制御をする上で有用であると考えた。一般的に足部の構造は個々で異なる。足部構造の変化は足部だけでなく膝関節や股関節,腰部へと影響をもたらす。足部構造の特徴を捉えることは足部だけでなく下肢疾患や腰部疾患のアプローチへの手がかりとなる。
今後は動作中の動的な足部構造の変化についても検討し,実際の歩行や動作に対するアプローチへと繋げていき本研究を発展させたいと考えた。