[1414] 荷重による足部横アーチ高の変化と足部形状の比較
キーワード:足部横アーチ, 荷重, 足部形状
【はじめに】
足部は身体の中で地面と唯一接触している部位であり,身体制御に重要な役割を担っている。その中でも足部のアーチ機能は体重を支える事,歩行時に力を地面に伝達する事及び接触時に衝撃緩衝する事である。足部アーチは構造上,内側縦・外側縦・横アーチに分類させることがあり,各々が異なった役割を担っている。横アーチは衝撃吸収と足趾機能向上に貢献している。横アーチは中足骨頭レベル,中足骨底レベル,足根骨レベルに分類される。本研究は荷重時における横アーチ各部位での高さ変化に着目し,足部形状を比較,検証した。
【方法】
対象は足部に変性疾患のない25名50足(男性23名,女性2名,年齢24.6±2.1歳)とした。足形計測には(株)I-ware Laboratory社製のINFOOT USB Standard type(IFU-S-01)を使用した。計測肢位は片脚立位(荷重位)と座位(非荷重位)にて行った。また,片脚立位時には(株)三進興産社製のDSIS横軸アーチパッド(5mm)を第2中足骨遠位部に頂点を合わせて挿入したものも同時に計測した。計測は以上の3条件で行った。計測項目は足囲最高点,インステップ囲最高点,内踏まず長,外踏まず長,第5趾側角度,第1趾側角度,踵骨傾斜角とした。荷重位(パッド挿入前)と非荷重位,荷重位(パッド挿入後)と非荷重位において各計測項目値の差分を体重で正規化し定数を算出した。荷重位と非荷重位における足囲最高点,インステップ囲最高点の変化率(荷重位/非荷重位/体重*100)を算出した。変化率を基に足囲最高点の変化が大きい群(以下,足囲群)とインステップ囲最高点の変化が大きい群(以下,インステップ群)に群分けを行った。群間におけるパッド挿入前後の計測項目の差分を体重で除した定数を算出し解析を行った。解析は各項目の群間差を2元配置分散分析にて検証した。有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。
【結果】
足囲群における内踏まず長定数はパッド挿入前0.072±0.160mm/kg,挿入後-0.018±0.119mm/kg,外踏まず長定数挿入前0.008±0.050mm/kg,挿入後0.010±0.026mm/kg,第1趾足角度定数挿入前0.021±0.090°/kg,挿入後0.003±0.050°/kg,第5趾足角度定数挿入前0.001±0.042°/kg,挿入後0.005±0.041°/kg,踵骨傾斜角挿入前-0.015±0.034°/kg,挿入後0.005±0.043°/kgであった。インステップ群における内踏まず長定数はパッド挿入前0.010±0.064 mm/kg,挿入後0.029±0.034 mm/kg,外踏まず長定数挿入前-0.011±0.038 mm/kg,挿入後0.028±0.081 mm/kg,第1趾足角度定数挿入前-0.004±0.061°/kg,挿入後0.014±0.049°/kg,第5趾足角度定数挿入前0.008±0.048°/kg,挿入後0.019±0.047°/kg,踵骨傾斜角挿入前0.003±0.042°/kg,挿入後-0.011±0.048°/kgであった。足囲群は内踏まず長,インステップ群は外踏まず長で有意差(p<0.05)を認めた。他の計測項目間の有意差は認められなかった。
【考察】
足部横アーチは中足骨頭レベル,中足骨底レベル,足根骨レベルに分類される。足囲最高点は中足骨頭部,インステップ囲最高点は中足骨底部,足根骨部に相当する。本研究では横アーチパッドを中足骨遠囲部に挿入したことから横アーチ中足骨頭レベルに影響を及ぼすと推測した。内側縦アーチは踵骨-舟状骨-楔状骨-第1~3中足骨,外側縦アーチは距骨-立方骨-第4~5中足骨から構成される。足囲群は中足骨遠位部の影響から内踏まず長の変化,インステップ群は外踏まず長の変化が認められた。足囲群はパッドを挿入した部位が内側縦アーチを構成する第2中足骨直下であることからパッド挿入前と比較し,内踏まず長の減少が認められた。また,中足骨遠位部にパッドを挿入する事は中足骨の矢状面の動きが得られるが前額面の動きは得られない事が示唆された。荷重は距骨を通じて前足部に伝達される為,中足骨前額面上の動きを得るには後足部の操作が必要となる可能性がある。横アーチは評価する際に部位ごとの変化に着目し夫々アプローチ方法が異なることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
横アーチの機能不全はモートン病や中足骨頭痛,外反母趾,内反小趾など足趾の障害を引き起こす。本研究より,中足骨遠位部のコントロールは中足骨の矢状面運動に関与することが示唆された。モートン病は中足骨矢状面運動が大きいため有効性が高い。外反母趾は中足骨前額面及び水平面運動が大きいため有効性が低いと考えられた。
足部は身体の中で地面と唯一接触している部位であり,身体制御に重要な役割を担っている。その中でも足部のアーチ機能は体重を支える事,歩行時に力を地面に伝達する事及び接触時に衝撃緩衝する事である。足部アーチは構造上,内側縦・外側縦・横アーチに分類させることがあり,各々が異なった役割を担っている。横アーチは衝撃吸収と足趾機能向上に貢献している。横アーチは中足骨頭レベル,中足骨底レベル,足根骨レベルに分類される。本研究は荷重時における横アーチ各部位での高さ変化に着目し,足部形状を比較,検証した。
【方法】
対象は足部に変性疾患のない25名50足(男性23名,女性2名,年齢24.6±2.1歳)とした。足形計測には(株)I-ware Laboratory社製のINFOOT USB Standard type(IFU-S-01)を使用した。計測肢位は片脚立位(荷重位)と座位(非荷重位)にて行った。また,片脚立位時には(株)三進興産社製のDSIS横軸アーチパッド(5mm)を第2中足骨遠位部に頂点を合わせて挿入したものも同時に計測した。計測は以上の3条件で行った。計測項目は足囲最高点,インステップ囲最高点,内踏まず長,外踏まず長,第5趾側角度,第1趾側角度,踵骨傾斜角とした。荷重位(パッド挿入前)と非荷重位,荷重位(パッド挿入後)と非荷重位において各計測項目値の差分を体重で正規化し定数を算出した。荷重位と非荷重位における足囲最高点,インステップ囲最高点の変化率(荷重位/非荷重位/体重*100)を算出した。変化率を基に足囲最高点の変化が大きい群(以下,足囲群)とインステップ囲最高点の変化が大きい群(以下,インステップ群)に群分けを行った。群間におけるパッド挿入前後の計測項目の差分を体重で除した定数を算出し解析を行った。解析は各項目の群間差を2元配置分散分析にて検証した。有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。
【結果】
足囲群における内踏まず長定数はパッド挿入前0.072±0.160mm/kg,挿入後-0.018±0.119mm/kg,外踏まず長定数挿入前0.008±0.050mm/kg,挿入後0.010±0.026mm/kg,第1趾足角度定数挿入前0.021±0.090°/kg,挿入後0.003±0.050°/kg,第5趾足角度定数挿入前0.001±0.042°/kg,挿入後0.005±0.041°/kg,踵骨傾斜角挿入前-0.015±0.034°/kg,挿入後0.005±0.043°/kgであった。インステップ群における内踏まず長定数はパッド挿入前0.010±0.064 mm/kg,挿入後0.029±0.034 mm/kg,外踏まず長定数挿入前-0.011±0.038 mm/kg,挿入後0.028±0.081 mm/kg,第1趾足角度定数挿入前-0.004±0.061°/kg,挿入後0.014±0.049°/kg,第5趾足角度定数挿入前0.008±0.048°/kg,挿入後0.019±0.047°/kg,踵骨傾斜角挿入前0.003±0.042°/kg,挿入後-0.011±0.048°/kgであった。足囲群は内踏まず長,インステップ群は外踏まず長で有意差(p<0.05)を認めた。他の計測項目間の有意差は認められなかった。
【考察】
足部横アーチは中足骨頭レベル,中足骨底レベル,足根骨レベルに分類される。足囲最高点は中足骨頭部,インステップ囲最高点は中足骨底部,足根骨部に相当する。本研究では横アーチパッドを中足骨遠囲部に挿入したことから横アーチ中足骨頭レベルに影響を及ぼすと推測した。内側縦アーチは踵骨-舟状骨-楔状骨-第1~3中足骨,外側縦アーチは距骨-立方骨-第4~5中足骨から構成される。足囲群は中足骨遠位部の影響から内踏まず長の変化,インステップ群は外踏まず長の変化が認められた。足囲群はパッドを挿入した部位が内側縦アーチを構成する第2中足骨直下であることからパッド挿入前と比較し,内踏まず長の減少が認められた。また,中足骨遠位部にパッドを挿入する事は中足骨の矢状面の動きが得られるが前額面の動きは得られない事が示唆された。荷重は距骨を通じて前足部に伝達される為,中足骨前額面上の動きを得るには後足部の操作が必要となる可能性がある。横アーチは評価する際に部位ごとの変化に着目し夫々アプローチ方法が異なることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
横アーチの機能不全はモートン病や中足骨頭痛,外反母趾,内反小趾など足趾の障害を引き起こす。本研究より,中足骨遠位部のコントロールは中足骨の矢状面運動に関与することが示唆された。モートン病は中足骨矢状面運動が大きいため有効性が高い。外反母趾は中足骨前額面及び水平面運動が大きいため有効性が低いと考えられた。