[1455] 都市高齢者の不安に影響を与える要因
Keywords:不安, 背景因子, 地域在住高齢者
【はじめに,目的】
不安は,高齢期の健康,生活にとって大きな負の影響を及ぼし,社会参加や友人・親戚との交流はこれを緩和すると考えられる。しかし,都市高齢者では,壮年期の社会参加が地域から離れた就業に偏在し,高齢期に進んで地域社会を基盤とした社会参加は難しく,また核家族化から親戚などとの交流も希薄になりがちである。高齢化率の増加に伴い大きく変化が見られる領域と考えられるが,それに先立って現在の都市高齢者の不安がどのような要因によって影響を受けているのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
東京都23区のI区9丁目に在住する65歳以上高齢者を対象に悉皆郵送調査を行った。不安は,犯罪,体の具合が悪いときなど助けを呼べない,災害,家計,医療や介護などのサービスが受けられないこと,友人が少なくなること,体調不良,孤立の8つについて,大いに不安があるから不安が無いまで4件法で調査した。社会参加は何らかの団体への参加,親戚,友人のそれぞれ対面,非対面での交流頻度,老研式活動能力指標,疾患の既往についても調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究計画は,所属機関の倫理委員会によって審査され,研究実行の許可を得た。また,郵送質問紙には,研究の趣旨を記述し,本人の署名をもって同意とした。
【結果】
送付数は6944通で回収数は3744通,回収率は53.4%であった。そのうち有効な回答は3696通であった。有効回答者は,男性が1671名,女性が2025名。年齢は男性が73±5歳,女性が73±6歳であった。回答者と未回答者の間に年齢,性に有意差は無かった(p>.05)。社会参加が無いとしたものは男性で40.1%,女性で33.1%であった。社会参加の種類では,男性では町内会が最も多く(27.0%),女性では趣味関係(36.5%)であった。スポーツ関係も頻度が高く男性で16.8%,女性で22.7%が参加していた。
因子分析の結果,社会参加は,業界・宗教団体参加因子,趣味・スポーツ団体参加因子,町内会・老人クラブ参加因子,その他団体参加因子(+:頻度が高い,-:頻度が少ない)の4因子に集約された。一方,親族,友人,それぞれ対面,非対面交流頻度は,親族との交流因子,友人との交流因子の2因子に集約できた。また,疾患の既往については,血管疾患因子,悪性新生物・肺疾患因子,整形外科・歯科疾患因子の3因子に集約された。
紙幅の都合により詳細は割愛するが,これらの影響要因を独立変数にし,不安をそれぞれ従属変数とした回帰分析を行いステップワイズ法で因子を選択すると,男性,女性ともに,暮らし向き,健康度,整形外科・歯科疾患の因子が残った。男性では,社会参加の寄与が女性に比較してやや大きく特に,業界・宗教団体参加因子の寄与が大きかった。一方,女性では,暮らし向き,健康度,整形外科疾患因子がおおむね共通した要因としてあげられた。家計やサービス受給に関する不安は影響要因の寄与が大きく(調整済みR自乗)それぞれ男性で0.361,0.208,女性で0.379,0.156であったが,犯罪や災害などは寄与が小さかった。それぞれ男性で0.034,0.058,女性で0.028,0.059であった。
【考察】
本調査の結果,都市高齢者では社会参加の状況が少なく,また,参加していたとしても不安を緩衝する効果が限られており,量・質とも不十分であると考えられた。
直井らは,都市高齢者での経済的な状況が不安と直接結びつきやすいとしているが,本研究においてもどの不安についても暮らし向きが最も寄与の高い因子で有った。都市高齢者では,ちょっとしたことでもお金を払いサービスを買わなければならない。たとえば病院への通院なども地域の助け合いが充実していれば,誰かが病院に行くときに一緒に連れて行くといったようにお金を支払う必要はないが,そのような機能がない都市部では,自費のヘルパーを雇うなど金銭の支出が必要となる。これが経済的な状況が不安に大きく影響している理由では無いかと考えられた。都市高齢者の不安を減少するには,少しの困りごとをお互いに助け合うような社会参加が必要では無いか。
また,整形外科・歯科疾患因子が不安に関与していることに注目すべきである。都市のもう一つの特徴である公共交通機関を使った広域の移動が,整形外科疾患などによって損なわれることが不安が増大につながっていると考えられる。理学療法士による地域の健康増進活動が都市高齢者の不安の解消に直接役立つと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
地域包括ケアの推進に,理学療法士が主体的な関与をする事が期待されるが,本調査は,その直接的な必要性を示すものであり意義が大きいと考えられる。
不安は,高齢期の健康,生活にとって大きな負の影響を及ぼし,社会参加や友人・親戚との交流はこれを緩和すると考えられる。しかし,都市高齢者では,壮年期の社会参加が地域から離れた就業に偏在し,高齢期に進んで地域社会を基盤とした社会参加は難しく,また核家族化から親戚などとの交流も希薄になりがちである。高齢化率の増加に伴い大きく変化が見られる領域と考えられるが,それに先立って現在の都市高齢者の不安がどのような要因によって影響を受けているのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
東京都23区のI区9丁目に在住する65歳以上高齢者を対象に悉皆郵送調査を行った。不安は,犯罪,体の具合が悪いときなど助けを呼べない,災害,家計,医療や介護などのサービスが受けられないこと,友人が少なくなること,体調不良,孤立の8つについて,大いに不安があるから不安が無いまで4件法で調査した。社会参加は何らかの団体への参加,親戚,友人のそれぞれ対面,非対面での交流頻度,老研式活動能力指標,疾患の既往についても調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究計画は,所属機関の倫理委員会によって審査され,研究実行の許可を得た。また,郵送質問紙には,研究の趣旨を記述し,本人の署名をもって同意とした。
【結果】
送付数は6944通で回収数は3744通,回収率は53.4%であった。そのうち有効な回答は3696通であった。有効回答者は,男性が1671名,女性が2025名。年齢は男性が73±5歳,女性が73±6歳であった。回答者と未回答者の間に年齢,性に有意差は無かった(p>.05)。社会参加が無いとしたものは男性で40.1%,女性で33.1%であった。社会参加の種類では,男性では町内会が最も多く(27.0%),女性では趣味関係(36.5%)であった。スポーツ関係も頻度が高く男性で16.8%,女性で22.7%が参加していた。
因子分析の結果,社会参加は,業界・宗教団体参加因子,趣味・スポーツ団体参加因子,町内会・老人クラブ参加因子,その他団体参加因子(+:頻度が高い,-:頻度が少ない)の4因子に集約された。一方,親族,友人,それぞれ対面,非対面交流頻度は,親族との交流因子,友人との交流因子の2因子に集約できた。また,疾患の既往については,血管疾患因子,悪性新生物・肺疾患因子,整形外科・歯科疾患因子の3因子に集約された。
紙幅の都合により詳細は割愛するが,これらの影響要因を独立変数にし,不安をそれぞれ従属変数とした回帰分析を行いステップワイズ法で因子を選択すると,男性,女性ともに,暮らし向き,健康度,整形外科・歯科疾患の因子が残った。男性では,社会参加の寄与が女性に比較してやや大きく特に,業界・宗教団体参加因子の寄与が大きかった。一方,女性では,暮らし向き,健康度,整形外科疾患因子がおおむね共通した要因としてあげられた。家計やサービス受給に関する不安は影響要因の寄与が大きく(調整済みR自乗)それぞれ男性で0.361,0.208,女性で0.379,0.156であったが,犯罪や災害などは寄与が小さかった。それぞれ男性で0.034,0.058,女性で0.028,0.059であった。
【考察】
本調査の結果,都市高齢者では社会参加の状況が少なく,また,参加していたとしても不安を緩衝する効果が限られており,量・質とも不十分であると考えられた。
直井らは,都市高齢者での経済的な状況が不安と直接結びつきやすいとしているが,本研究においてもどの不安についても暮らし向きが最も寄与の高い因子で有った。都市高齢者では,ちょっとしたことでもお金を払いサービスを買わなければならない。たとえば病院への通院なども地域の助け合いが充実していれば,誰かが病院に行くときに一緒に連れて行くといったようにお金を支払う必要はないが,そのような機能がない都市部では,自費のヘルパーを雇うなど金銭の支出が必要となる。これが経済的な状況が不安に大きく影響している理由では無いかと考えられた。都市高齢者の不安を減少するには,少しの困りごとをお互いに助け合うような社会参加が必要では無いか。
また,整形外科・歯科疾患因子が不安に関与していることに注目すべきである。都市のもう一つの特徴である公共交通機関を使った広域の移動が,整形外科疾患などによって損なわれることが不安が増大につながっていると考えられる。理学療法士による地域の健康増進活動が都市高齢者の不安の解消に直接役立つと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
地域包括ケアの推進に,理学療法士が主体的な関与をする事が期待されるが,本調査は,その直接的な必要性を示すものであり意義が大きいと考えられる。