[1460] キネシオテーピング貼付後の時間経過が筋パワーおよびジャンプ能力に与える影響
キーワード:キネシオテーピング, 筋パワー, ジャンプ
【はじめに,目的】
キネシオテーピング(以下,KT)は,筋膜の調整,筋や皮膚への刺激,循環の改善という効果から,筋力との関係を検討している研究が多い。しかし,経時的にKTが及ぼす影響を検討したり,筋パワーについて検討した研究は渉猟し得ない。そのため,本研究では,KT貼付後の時間経過が,筋パワーの変化およびジャンプ能力に与える影響について検証することを目的とする。
【方法】
本研究では健常男性14名の右脚14脚(年齢:22.6±2.2歳,身長:174.0±4.3cm,体重:64.8±7.7kg)を対象とした。KTは大腿直筋直上に貼付した。KT貼付,KT非貼付(以下,非貼布)のどちらの条件から測定するかはランダムとし,1週間以上2週間未満の間隔をあけて,もう一方の条件の測定を実施した。筋パワーとジャンプ能力は1時間おきに計4回実施した。なおKT貼付条件の評価は,1時間おきに1回目(貼付前),2回目(貼付直後),3回目(貼付1時間後),4回目(貼付2時間後)とした。筋パワーの測定は,Biodex system4を使用し,60,120,180deg/sの3角速度にて,右膝関節の求心性(以下,CON)ならびに遠心性(以下,ECC)等速性伸展運動を5往復実施させた。ジャンプ能力に関しては,右下肢による片脚幅跳び(以下,幅跳び)を2回ずつ測定し,その平均値を採用した。筋パワーは,5往復の中での最大仕事量を時間で除した値を,幅跳び長は平均値を用いて,1回目に対する2~4回目の変化量を算出した。統計解析として,KT貼付ならびに非貼付における違い,ならびに時間経過に伴う変化を,反復測定による二元配置分散分析により比較した。各要因のいずれかに有意差が認められた場合,post-hoc testとして,Dunnet検定または対応のあるt検定を実施した。有意水準はすべての検定で5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,弘前大学大学院医学研究科倫理委員会の承認を受けた上で実施した。また,すべての対象者には本研究の内容と方法について事前に説明し,研究協力への同意を書面により得た。
【結果】
筋パワーの測定結果は,CON60deg/sでは,非貼付にて1回目と比較して3回目が有意に向上し(p<0.01),KT貼付にて3,4回目が向上した(それぞれp<0.01)。CON120deg/sでは,有意な交互作用が認められ,post-hoc testの結果,KT貼付にて3,4回目が向上した(それぞれp<0.01)。また,3回目において,KT貼付の方が非貼付よりも有意に高値を示した(p<0.01)。CON180deg/sでは,同様に,有意な交互作用が認められ,post-hoc testの結果,KT貼付にて2,3,4回目が向上した(それぞれp<0.05,p<0.01,p<0.01)。また,3,4回目において,KT貼付の方が非貼付よりも有意に高値を示した(それぞれp<0.05)。ECC60,120deg/sでは,有意な変動はみられず,ECC180deg/sでは,非貼付にて4回目に有意な筋パワーの低下をみとめた(p<0.01)。幅跳び長については,有意な交互作用が認められ,post-hoc testの結果,KT貼付にて2,3,4回目に有意に幅跳び長が延長した(それぞれp<0.05,p<0.05,p<0.01)。
【考察】
本研究結果から,KTを貼付することで,BiodexにおけるCONパワーが向上することが示唆された。KTと筋力との関係は,KTを貼付してもCON筋力は変化しないことや,ECC筋力の低下を,KT貼付によって抑えられることが報告されている。さらに,KT貼付により,ピークトルク到達時間を短縮すると報告されている。したがって,筋パワーは筋力と収縮速度の積であらわされため,筋力が一定と仮定すると,筋パワーが向上した要因は筋の収縮速度の向上と考えられる。それゆえ,ECC180deg/sにおいて,非貼付では筋パワーが低下したが,KT貼付では有意な低下を認めなかったことは,筋力低下を収縮速度向上によって補ったと考えられる。また,本研究では,KT貼付によりCONパワーの発揮に大きな影響があったために幅跳び長が向上したと考えられる。ジャンプ動作において,ECCによる筋の伸張が,その後のCONを支援すると報告されている。この運動におけるECC-CONの切り替えが遅延した場合より,円滑に行われた場合の方が,筋活動が増加すると報告されている。したがって,今回は,筋の収縮速度向上やECC-CONの切り換えの円滑さの向上などの可能性が推測される。上記のことより,KTはECCパワー,そしてそれに続くCONパワーの向上に寄与することが示唆された。今後は,KT貼付が収縮特性に及ぼす影響など生理学的な検討や,姿勢に与える影響を明らかにしていくことが必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
各スポーツの運動特性によって,KTを貼付する筋や,KTに期待する効果を精選することにより,高いパフォーマンスが得られると考えられる。
キネシオテーピング(以下,KT)は,筋膜の調整,筋や皮膚への刺激,循環の改善という効果から,筋力との関係を検討している研究が多い。しかし,経時的にKTが及ぼす影響を検討したり,筋パワーについて検討した研究は渉猟し得ない。そのため,本研究では,KT貼付後の時間経過が,筋パワーの変化およびジャンプ能力に与える影響について検証することを目的とする。
【方法】
本研究では健常男性14名の右脚14脚(年齢:22.6±2.2歳,身長:174.0±4.3cm,体重:64.8±7.7kg)を対象とした。KTは大腿直筋直上に貼付した。KT貼付,KT非貼付(以下,非貼布)のどちらの条件から測定するかはランダムとし,1週間以上2週間未満の間隔をあけて,もう一方の条件の測定を実施した。筋パワーとジャンプ能力は1時間おきに計4回実施した。なおKT貼付条件の評価は,1時間おきに1回目(貼付前),2回目(貼付直後),3回目(貼付1時間後),4回目(貼付2時間後)とした。筋パワーの測定は,Biodex system4を使用し,60,120,180deg/sの3角速度にて,右膝関節の求心性(以下,CON)ならびに遠心性(以下,ECC)等速性伸展運動を5往復実施させた。ジャンプ能力に関しては,右下肢による片脚幅跳び(以下,幅跳び)を2回ずつ測定し,その平均値を採用した。筋パワーは,5往復の中での最大仕事量を時間で除した値を,幅跳び長は平均値を用いて,1回目に対する2~4回目の変化量を算出した。統計解析として,KT貼付ならびに非貼付における違い,ならびに時間経過に伴う変化を,反復測定による二元配置分散分析により比較した。各要因のいずれかに有意差が認められた場合,post-hoc testとして,Dunnet検定または対応のあるt検定を実施した。有意水準はすべての検定で5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,弘前大学大学院医学研究科倫理委員会の承認を受けた上で実施した。また,すべての対象者には本研究の内容と方法について事前に説明し,研究協力への同意を書面により得た。
【結果】
筋パワーの測定結果は,CON60deg/sでは,非貼付にて1回目と比較して3回目が有意に向上し(p<0.01),KT貼付にて3,4回目が向上した(それぞれp<0.01)。CON120deg/sでは,有意な交互作用が認められ,post-hoc testの結果,KT貼付にて3,4回目が向上した(それぞれp<0.01)。また,3回目において,KT貼付の方が非貼付よりも有意に高値を示した(p<0.01)。CON180deg/sでは,同様に,有意な交互作用が認められ,post-hoc testの結果,KT貼付にて2,3,4回目が向上した(それぞれp<0.05,p<0.01,p<0.01)。また,3,4回目において,KT貼付の方が非貼付よりも有意に高値を示した(それぞれp<0.05)。ECC60,120deg/sでは,有意な変動はみられず,ECC180deg/sでは,非貼付にて4回目に有意な筋パワーの低下をみとめた(p<0.01)。幅跳び長については,有意な交互作用が認められ,post-hoc testの結果,KT貼付にて2,3,4回目に有意に幅跳び長が延長した(それぞれp<0.05,p<0.05,p<0.01)。
【考察】
本研究結果から,KTを貼付することで,BiodexにおけるCONパワーが向上することが示唆された。KTと筋力との関係は,KTを貼付してもCON筋力は変化しないことや,ECC筋力の低下を,KT貼付によって抑えられることが報告されている。さらに,KT貼付により,ピークトルク到達時間を短縮すると報告されている。したがって,筋パワーは筋力と収縮速度の積であらわされため,筋力が一定と仮定すると,筋パワーが向上した要因は筋の収縮速度の向上と考えられる。それゆえ,ECC180deg/sにおいて,非貼付では筋パワーが低下したが,KT貼付では有意な低下を認めなかったことは,筋力低下を収縮速度向上によって補ったと考えられる。また,本研究では,KT貼付によりCONパワーの発揮に大きな影響があったために幅跳び長が向上したと考えられる。ジャンプ動作において,ECCによる筋の伸張が,その後のCONを支援すると報告されている。この運動におけるECC-CONの切り替えが遅延した場合より,円滑に行われた場合の方が,筋活動が増加すると報告されている。したがって,今回は,筋の収縮速度向上やECC-CONの切り換えの円滑さの向上などの可能性が推測される。上記のことより,KTはECCパワー,そしてそれに続くCONパワーの向上に寄与することが示唆された。今後は,KT貼付が収縮特性に及ぼす影響など生理学的な検討や,姿勢に与える影響を明らかにしていくことが必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
各スポーツの運動特性によって,KTを貼付する筋や,KTに期待する効果を精選することにより,高いパフォーマンスが得られると考えられる。