第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

その他4

Sun. Jun 1, 2014 10:25 AM - 11:15 AM ポスター会場 (神経)

座長:白石成明(日本福祉大学健康科学部)

神経 ポスター

[1472] 当院回復期病棟における脳血管障害患者の栄養状態に関する調査研究

小林和樹, 橋本重倫, 茂内暁子, 櫻井瑞紀, 直井俊祐, 可児利明 (竹川病院リハビリテーション部理学療法科)

Keywords:栄養, 脳血管障害, 移動能力

【はじめに,目的】
自宅復帰には移動自立度が影響されるとの報告が多く挙げられており,回復期病棟ではその改善が求められている。移動能力の改善には運動療法による介入と共に栄養状態が重要と考えられるが,回復期病棟入院時から栄養障害を認める患者を多く経験する。当院直井らは回復期病棟全入院患者の入院時栄養状態と退院時移動能力に関係があることを報告し,湧上は回復期病棟入院時の脳血管障害患者の血清アルブミン値(以下Alb値)とFunctional Independence Measure(以下FIM)運動項目の関係性を報告している。しかし,脳血管障害患者の移動能力と栄養状態の関係性を述べた報告は少ない。そこで我々は,脳血管障害患者の退院時移動能力が栄養状態,運動麻痺と関係があるかを検討し,退院時移動能力の予後予測をすることを目的とした。
【方法】
平成23年10月から平成25年3月に当院回復期病棟を退院した脳血管障害患者で,当院評価データベースを基に不備がなかった244名(平均年齢70.8±13.1歳)を対象とした。調査項目は年齢,入院時Body mass Index(以下BMI),栄養状態は入院時Alb値,運動麻痺は入院時下肢Brunnstrom recovery stage(以下BRS),移動能力は退院時FIM移動とした。また,入院時Alb値は標準群(3.6g/dl以上),低栄養群(3.6g/dl未満),退院時FIM移動は自立群(6点以上),非自立群(5点以下)に分類した。
検討方法は,(1)各項目平均値または中央値の集計,(2)栄養状態と退院時FIM移動の両群に対してピアソンのχ二乗検定を実施,(3)退院時FIM移動自立度を従属変数,年齢・入院時BMI・入院時Alb値・入院時下肢BRSを独立変数としてステップワイズ多重ロジスティック回帰分析による解析を行った。統計的解析にはR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】
(1)全対象の入院時BMI平均値は21.9±3.9kg/m2,入院時Alb値平均は3.7±0.4g/dl,入院時下肢BRS中央値はV,退院時FIM移動中央値は6点であった。(2)栄養状態標準群は177名(72.5%)で入院時Alb値平均3.9±0.3g/dl,低栄養群は67名(27.5%)で入院時Alb値平均3.1±0.3g/dlであった。退院時FIM移動自立群は166名(62.0%)で中央値7点,非自立群は78名(38.0%)で中央値4点であった。栄養状態と移動能力には有意な関係を認めた。(3)modelχ二乗検定,Wald検定ともに有意と判定された。また,標準化したオッズ比は入院時Alb値3.89,入院時下肢BRS1.90,年齢0.96であった。
【考察】
当院の脳血管障害患者のうち低栄養群は27.5%であった。これは,丸山の報告から急性期の脳血管障害患者では過度な活動性低下から二次的なサルコペニアを呈し,廃用性筋委縮を生じていることが関与していると考えられる。また,望月は運動器疾患では骨折や手術による侵襲で栄養状態の低下を認めることを報告し,若林は廃用症候群の91%に低栄養を認めることを報告している。この為,当院直井らの報告にある入院患者全体の低栄養群48.3%と比較すると少ない傾向であったことが考えられる。退院時FIM移動に影響する要因は入院時Alb値,入院時下肢BRS,年齢の順で示された。移動自立には身体機能や高次脳機能などが関係していることは多く報告されており,今回も同様に運動麻痺との関係が示された。それに加え,栄養状態が関係していることが示された。以上から,移動自立には運動療法による介入と共に栄養状態の管理が重要であると再確認された。横山らは脳卒中の栄養障害に関わる要因に意識障害,高次脳機能障害,嚥下障害なども挙げている。特に脳卒中急性期に嚥下障害を認める割合は50%とも報告されている。今回はこれらの項目を考慮していないため,今後は栄養管理状態や高次脳機能障害を含めた検討をする必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
当院回復期病棟において脳血管障害患者の移動自立には栄養状態が関係することが示された。そのため,理学療法士としてNST(Nutrition Support Team)に積極的に働きかけ,他職種と協働して早期から栄養状態の管理をすることが必要である。