[1528] 在宅要介護高齢者の災害時の避難方法に関する実態調査と避難方法における不安要因の特徴
Keywords:在宅, 災害, 避難
【はじめに,目的】
災害時における要介護高齢者の死亡割合は6割以上と高く,その原因は逃げ遅れによるものと報告されている(野竹ら・2003)。これまでの災害時避難に関する研究は,主に災害後の避難所生活場面での介入が多く,災害前の在宅要介護高齢者の避難方法に関する実態や特徴についての研究は少ない。在宅リハビリテーションにおいて,ADL指導のみならず,災害時の避難方法指導は重要であると考える。その際に取り組むべき具体的な避難指導方法を明確にするためには,避難方法の実態や避難にあたっての不安要因の特徴を明らかにする必要がある。
本研究では,災害時の避難方法(避難経路・避難動作方法・避難訓練)に関する認識,避難方法の想定状況および不安要因の実態と特徴について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は,介護老人保健施設にて通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを利用している要介護高齢者のうち,長谷川式簡易知能評価スケールが21点以上かつ高次脳機能障害の診断がない者111名(平均年齢75.9±9.5歳 男性46名,女性65名)とした。
調査項目は,基本情報として要介護度・屋内移動手段・歩行補助具,災害時避難に関する調査として,避難方法の認識に関する4項目・避難方法の想定状況に関する3項目・避難方法の不安要因に関する3項目について担当理学療法士または作業療法士により聞き取り調査を実施した。
分析方法は,災害時の避難方法に関する認識,避難方法の想定状況,避難方法における不安要因の実態を明らかにするために,避難方法の認識・想定状況・不安要因の全10項目について記述的統計を行った。
避難方法における不安要因の特徴を明らかにするために,不安要因を避難経路・避難動作方法・転倒・迅速な動作方法の4つに絞り,それらについて要介護度別に記述的統計を行った。不安場面については,歩行可能な者を対象として歩行補助具別に記述的統計を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
協力施設および対象者には,研究の目的・主旨・調査方法等について十分な説明を行い,書面にて同意を得た上で実施した。
【結果】
災害時の避難方法に関する認識について,要介護度が高い程,避難方法の想定の必要度・避難訓練の関心度・自力および介助による避難動作の自信の程度は低い傾向にあった。また,避難訓練は要介護度によらず98.2%が実施していなかった。
避難方法の想定状況について,要介護度が高い程,想定していない者が多い傾向にあった。しかし,要介護度が低い者でも5割以上の者が想定していない状況にあった。
避難方法の不安要因について全体では,77.5%の者が災害時の避難方法に不安を感じ,14.4%の者が逃げることをあきらめていた。要介護度別では,要介護度が高い程,特に避難経路・動作方法に対して不安を有し,また要介護度が低い程,特に転倒・迅速な動作方法に不安を有する者が多い傾向にあった。
歩行補助具別における避難時の不安場面の相違として,歩行器ではドアの開閉時・方向転換時,一本杖は段差昇降時,補助具無しでは段差昇降時に加え,靴の着脱時について不安を有する者が多い傾向にあった。
【考察】
要介護度が高い者は,避難方法に関する認識が低下しており,避難方法が未想定であり,さらに不安要因として避難経路や避難動作方法に不安を有する者が多いという特徴が確認された。したがって,要介護度が高い者に対しては,避難経路・避難動作方法を中心に具体的かつ実践的な練習によって,避難動作イメージを構築させることが重要であり,それによって災害時避難に関する認識も向上させることができると考える。
要介護度が低い者は,避難方法に関する認識は高いが,具体的な避難方法について半数が未想定であり,避難訓練も未実施であった。さらに不安要因では転倒・迅速な動作方法に対して不安を有する者が多いという特徴が確認された。したがって,要介護度が低い者に対しては,迅速な避難動作方法を想定することが必要であり,また迅速な動作の中でも転倒しない避難動作方法の確立が重要と考える。
使用歩行補助具別では,歩行器使用者はドアの開閉動作・方向転換に重点を置いた避難動作方法の練習が必要であり,一本杖・補助具無しの者は段差練習・靴の着脱動作を含めた一連の避難動作練習に取り組むべきと考える。いずれにおいても転倒・迅速性に対しての考慮も重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
避難方法の実態や避難にあたっての不安要因の特徴を明確にすることは,災害に備えた予防体制の確立や,具体的な避難指導方法を提案できる実践的な理学療法プログラムの立案を行うための研究として意義があると考える。
災害時における要介護高齢者の死亡割合は6割以上と高く,その原因は逃げ遅れによるものと報告されている(野竹ら・2003)。これまでの災害時避難に関する研究は,主に災害後の避難所生活場面での介入が多く,災害前の在宅要介護高齢者の避難方法に関する実態や特徴についての研究は少ない。在宅リハビリテーションにおいて,ADL指導のみならず,災害時の避難方法指導は重要であると考える。その際に取り組むべき具体的な避難指導方法を明確にするためには,避難方法の実態や避難にあたっての不安要因の特徴を明らかにする必要がある。
本研究では,災害時の避難方法(避難経路・避難動作方法・避難訓練)に関する認識,避難方法の想定状況および不安要因の実態と特徴について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は,介護老人保健施設にて通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを利用している要介護高齢者のうち,長谷川式簡易知能評価スケールが21点以上かつ高次脳機能障害の診断がない者111名(平均年齢75.9±9.5歳 男性46名,女性65名)とした。
調査項目は,基本情報として要介護度・屋内移動手段・歩行補助具,災害時避難に関する調査として,避難方法の認識に関する4項目・避難方法の想定状況に関する3項目・避難方法の不安要因に関する3項目について担当理学療法士または作業療法士により聞き取り調査を実施した。
分析方法は,災害時の避難方法に関する認識,避難方法の想定状況,避難方法における不安要因の実態を明らかにするために,避難方法の認識・想定状況・不安要因の全10項目について記述的統計を行った。
避難方法における不安要因の特徴を明らかにするために,不安要因を避難経路・避難動作方法・転倒・迅速な動作方法の4つに絞り,それらについて要介護度別に記述的統計を行った。不安場面については,歩行可能な者を対象として歩行補助具別に記述的統計を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
協力施設および対象者には,研究の目的・主旨・調査方法等について十分な説明を行い,書面にて同意を得た上で実施した。
【結果】
災害時の避難方法に関する認識について,要介護度が高い程,避難方法の想定の必要度・避難訓練の関心度・自力および介助による避難動作の自信の程度は低い傾向にあった。また,避難訓練は要介護度によらず98.2%が実施していなかった。
避難方法の想定状況について,要介護度が高い程,想定していない者が多い傾向にあった。しかし,要介護度が低い者でも5割以上の者が想定していない状況にあった。
避難方法の不安要因について全体では,77.5%の者が災害時の避難方法に不安を感じ,14.4%の者が逃げることをあきらめていた。要介護度別では,要介護度が高い程,特に避難経路・動作方法に対して不安を有し,また要介護度が低い程,特に転倒・迅速な動作方法に不安を有する者が多い傾向にあった。
歩行補助具別における避難時の不安場面の相違として,歩行器ではドアの開閉時・方向転換時,一本杖は段差昇降時,補助具無しでは段差昇降時に加え,靴の着脱時について不安を有する者が多い傾向にあった。
【考察】
要介護度が高い者は,避難方法に関する認識が低下しており,避難方法が未想定であり,さらに不安要因として避難経路や避難動作方法に不安を有する者が多いという特徴が確認された。したがって,要介護度が高い者に対しては,避難経路・避難動作方法を中心に具体的かつ実践的な練習によって,避難動作イメージを構築させることが重要であり,それによって災害時避難に関する認識も向上させることができると考える。
要介護度が低い者は,避難方法に関する認識は高いが,具体的な避難方法について半数が未想定であり,避難訓練も未実施であった。さらに不安要因では転倒・迅速な動作方法に対して不安を有する者が多いという特徴が確認された。したがって,要介護度が低い者に対しては,迅速な避難動作方法を想定することが必要であり,また迅速な動作の中でも転倒しない避難動作方法の確立が重要と考える。
使用歩行補助具別では,歩行器使用者はドアの開閉動作・方向転換に重点を置いた避難動作方法の練習が必要であり,一本杖・補助具無しの者は段差練習・靴の着脱動作を含めた一連の避難動作練習に取り組むべきと考える。いずれにおいても転倒・迅速性に対しての考慮も重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
避難方法の実態や避難にあたっての不安要因の特徴を明確にすることは,災害に備えた予防体制の確立や,具体的な避難指導方法を提案できる実践的な理学療法プログラムの立案を行うための研究として意義があると考える。