第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

その他2

Sun. Jun 1, 2014 11:20 AM - 12:10 PM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:大籔弘子(兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンターリハビリ療法部)

生活環境支援 ポスター

[1529] 日本におけるリハビリテーション災害支援システムの現状と流れ

三浦和1, 伊藤智典2, 河野眞3, 森下賀子4 (1.国際医療福祉大学小田原保健医療学部, 2.日本理学療法士協会, 3.杏林大学, 4.日本医科大学病医院)

Keywords:災害支援, リハビリテーション, 地域連携

【はじめに,目的】
日本で今後生じると想定されている南海トラフ巨大地震,首都直下地震に備え,国をはじめとし県,市,自治体等各地で防災,減災への取り組みがされている。2013年の東日本大震災からリハビリテーション職種の支援に関しても徐々に中心団体をはじめ,県士会,地域レベルでシステム化しつつある。よって,その支援システムの現状と今後の流れを明らかにし,把握することで,より団体間の連携を強め,施設レベルにおいても支援に行く療法士と支援に送り出す療法士の相互の協力体制を築くことを目的にこの研究を行ったので報告する。
【方法】
現在,リハビリテーション災害支援に関する団体に関わっている医師(以下Dr),理学療法士(以下PT),作業療法士(以下OT)に対し,インタビュー調査を実施した。質問項目は各団体で取り組んでいる支援システムの現状と今後の展開とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
大学倫理審査委員会の承認を得てから実施した(承認番号12P-11)。対象者には事前に連絡を取り,了承を得てインタビュー調査を実施した。
【結果】
国際リハビリテーション医学会が,活動方針の重要な柱の一つとして災害支援を掲げ,ガイドラインやインターネットを使用した情報提供,DART(Disaster acute rehabilitation team)の育成,WHOや国際赤十字との連携などを計画しており,日本リハビリテーション医学会も参加し,活動を行っていく予定となっている。それを受けて,日本リハビリテーション病院・施設協会を中心に大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会が発足され,2013年より各県からDr,看護師,PT,OT,言語聴覚士,介護支援専門員を1名ずつ集め,1チームとし,研修を行っており,47都道府県すべての地域に支援チームを設立することを目指している。チームは,Drや看護師を中心とした災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)とともに発災から72時間以内に活動を開始し,リハトリアージ,リハニーズの把握,避難所環境整備,情報収集,現地リハビリテーション関係者との協議を行うDART(Disaster Acute Rehabilitation Team),発災4日目より病院,施設,避難所,在宅で支援活動を行い,障害者への通常のリハ介入の維持,生活不活発病の予防,医師の指示のもと直接的にリハビリテーション支援を行うJRAT(Japan Rehabilitation Assistance Team),また,発災後6か月以降に地域にて活動を開始し,在宅,仮設住宅居住者に対する地域リハビリテーションを実施し,コミュニティの再建を目的としたイベント企画や実践,地域医療スタッフへの申し送り,健康維持活動を行うCBRT(地域リハチーム)の育成を考えている。現在,東京都,愛知県,大阪府,神奈川県等,各都道府県レベルでも研修会が開催され,今後さらに小ブロック地域での研修会,それに伴う顔のみえるネットワークつくりが予定されている。
また,政府において東日本大震災から防災基本計画が修正され,その計画に基づいて防災業務計画,地域防災計画が各機関で作成された。その中で要支援者など災害弱者に対する支援対策が注目され,福祉避難所の設定,防災マップや要支援者特性情報カードの作成と配布が行われ始めている。今後,自治体や要支援者を対象とした研修会が行われ,より具体的な防災・減災への取り組みが計画されている。
【考察】
今回のインタビュー調査により,大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会が中心組織となり,各県から地域ブロックへと活動が広がり,顔の見えるネットワークつくりや知識向上に向けて支援システムが稼働してきていることが明らかとなった。また,市町村において障害と防災に関する取り組みがされており,平時より積極的に関わりを持っていくことが重要と考えられた。
2012年の災害復興省の発表によると,東日本大震災後,持病の悪化や避難生活での心身のストレスが大きく,十分なケアを受けられずに亡くなった方は2688人と深刻な状況であり,特に高齢者が多い状況である。この震災関連死を減少させる為にも,リハビリテーション職種の介入は必要不可欠と考える。
理学療法士も所属する地域において,平時より顔の見える関係を築き,地域の状態を把握するとともに研修会で知識を深め,災害時にどのように動くかシミュレーションを行っておくことが重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
日本でのリハビリテーション災害支援システム構築の動向についてまとめた第1報である。今後さらなる支援システム構築に関する取り組みに対し,基盤となる調査研究であると考える。