[1532] 予測条件の違いが片脚ジャンプ動作に与える影響
キーワード:ジャンプ, ACL損傷, 予測条件
【はじめに,目的】
スポーツによるACL損傷は,着地動作やカッティング動作といった急激な減速や方向転換を伴う動作で多く発生するとされている。またACL損傷は着地後50ms以内で生じるとの報告がされており,着地後のフィードバックによる回避行動が困難な可能性を示唆している。つまりスポーツ場面においては,様々な情報を処理しつつ,適確な体幹・下肢アライメントをフィードフォワード的に生成し,着地動作を迎える必要がある。近年,着地直前・直後の筋活動についての報告はみられるが,ジャンプ動作と着地動作のアライメントの関連について報告された研究は少ない。また予測条件の違いがそれらの関連に与える影響について報告された研究はみられない。そこで本研究では,予測条件の違いが片脚ジャンプ・着地動作前後の体幹・下肢アライメントに与える影響について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常男性20名(平均年齢21.6±1.0歳)とした。基本姿勢は利き足を支持側とした片脚立位とし,運動課題として左右方向への片脚ジャンプ・着地を行った。ジャンプ距離は身長の40%とし,着地後3秒間姿勢を保持できたものを成功とし,対側方向への成功試技が3回となるまで実施した。予測条件は,ジャンプまでのカウントの有無,並びにジャンプ方向の事前指示の2点とし,カウントあり・方向指示あり(条件1),カウントなし・方向指示あり(条件2),カウントなし・方向指示なし(条件3)の3条件とした。ハイスピードカメラ(サンプリング周波数:120Hz)を使用し,側方と前方より動作の撮影を行った。ランドマークは両側の肩峰前方,上前腸骨棘,支持側の肩峰側方,大転子,膝関節外側裂隙,膝関節内外側裂隙中央,外果,内外果中央とした。得られた画像から,体幹側屈角度,体幹前傾角度,膝関節外反角度,膝関節屈曲角度,下腿前傾角度を計測した。なお,成功試技の3回の動作の平均値を代表値とした。上記角度について,着地動作前(ジャンプ前膝関節最大屈曲時)及び着地動作時(着地後膝関節最大屈曲時)の2相について,それぞれ測定を行った。各相における各関節角度について,すべての条件間の組み合わせについて比較検討した。統計学的解析にはSPSS21.0を使用し,Holmの方法に基づいて有意確率を調整したWilcoxonの符号付き順位検定を用いて多重比較を行った。有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者に対し,研究内容と起こり得る危険について口頭および書面を用いて十分に説明を行い,同意を得た。
【結果】
体幹側屈角度及び体幹前傾角度では,得られた角度は条件1,2,3の順で大きくなる傾向があった。体幹側屈角度ではジャンプ前において,条件1と条件2,条件1と条件3の組み合わせにて有意差が確認された。一方,着地後においては条件1と条件3の間のみ有意差が確認された。体幹前傾角度ではジャンプ前において,すべての条件間で有意差が確認された。一方,着地後においてはいずれの組み合わせにおいても有意差は確認されなかった。下腿前傾角度ではジャンプ前において,条件1と条件2の間に有意差が確認された。一方,着地後においてはいずれの組み合わせにおいても有意差は確認されなかった。膝関節外反角度及び膝関節屈曲角度においては,すべての条件間に有意差は確認されなかった。
【考察】
今回の結果から,予測条件の難易度が増すにつれ,体幹部の運動が増加する傾向が確認された。このことから,予測条件の違いによる影響を,質量の大きい体幹部の運動により代償していることが考えられる。また,予測条件の違いによる影響は,着地前動作に大きくあらわれるものの着地後の動作への影響は少なかったことから,ジャンプ中あるいは着地後早期にアライメントが修正されている可能性が考えられる。今後の課題として,より難易度の高い課題を付加した場合,あるいは筋力や静的アライメントの影響を受けやすい女性を対象とした場合等,アライメントにどのような影響があらわれるかの検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において,予測条件の違いにより片脚ジャンプ・着地動作が変化し,ACL損傷のリスクが増加する可能性が示唆された。今後,より難易度の高い条件の付加や,女性を対象とした研究を行うことで,スポーツ場面におけるACL損傷のリスクの評価や予防プログラム立案の一助となると考える。
スポーツによるACL損傷は,着地動作やカッティング動作といった急激な減速や方向転換を伴う動作で多く発生するとされている。またACL損傷は着地後50ms以内で生じるとの報告がされており,着地後のフィードバックによる回避行動が困難な可能性を示唆している。つまりスポーツ場面においては,様々な情報を処理しつつ,適確な体幹・下肢アライメントをフィードフォワード的に生成し,着地動作を迎える必要がある。近年,着地直前・直後の筋活動についての報告はみられるが,ジャンプ動作と着地動作のアライメントの関連について報告された研究は少ない。また予測条件の違いがそれらの関連に与える影響について報告された研究はみられない。そこで本研究では,予測条件の違いが片脚ジャンプ・着地動作前後の体幹・下肢アライメントに与える影響について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常男性20名(平均年齢21.6±1.0歳)とした。基本姿勢は利き足を支持側とした片脚立位とし,運動課題として左右方向への片脚ジャンプ・着地を行った。ジャンプ距離は身長の40%とし,着地後3秒間姿勢を保持できたものを成功とし,対側方向への成功試技が3回となるまで実施した。予測条件は,ジャンプまでのカウントの有無,並びにジャンプ方向の事前指示の2点とし,カウントあり・方向指示あり(条件1),カウントなし・方向指示あり(条件2),カウントなし・方向指示なし(条件3)の3条件とした。ハイスピードカメラ(サンプリング周波数:120Hz)を使用し,側方と前方より動作の撮影を行った。ランドマークは両側の肩峰前方,上前腸骨棘,支持側の肩峰側方,大転子,膝関節外側裂隙,膝関節内外側裂隙中央,外果,内外果中央とした。得られた画像から,体幹側屈角度,体幹前傾角度,膝関節外反角度,膝関節屈曲角度,下腿前傾角度を計測した。なお,成功試技の3回の動作の平均値を代表値とした。上記角度について,着地動作前(ジャンプ前膝関節最大屈曲時)及び着地動作時(着地後膝関節最大屈曲時)の2相について,それぞれ測定を行った。各相における各関節角度について,すべての条件間の組み合わせについて比較検討した。統計学的解析にはSPSS21.0を使用し,Holmの方法に基づいて有意確率を調整したWilcoxonの符号付き順位検定を用いて多重比較を行った。有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者に対し,研究内容と起こり得る危険について口頭および書面を用いて十分に説明を行い,同意を得た。
【結果】
体幹側屈角度及び体幹前傾角度では,得られた角度は条件1,2,3の順で大きくなる傾向があった。体幹側屈角度ではジャンプ前において,条件1と条件2,条件1と条件3の組み合わせにて有意差が確認された。一方,着地後においては条件1と条件3の間のみ有意差が確認された。体幹前傾角度ではジャンプ前において,すべての条件間で有意差が確認された。一方,着地後においてはいずれの組み合わせにおいても有意差は確認されなかった。下腿前傾角度ではジャンプ前において,条件1と条件2の間に有意差が確認された。一方,着地後においてはいずれの組み合わせにおいても有意差は確認されなかった。膝関節外反角度及び膝関節屈曲角度においては,すべての条件間に有意差は確認されなかった。
【考察】
今回の結果から,予測条件の難易度が増すにつれ,体幹部の運動が増加する傾向が確認された。このことから,予測条件の違いによる影響を,質量の大きい体幹部の運動により代償していることが考えられる。また,予測条件の違いによる影響は,着地前動作に大きくあらわれるものの着地後の動作への影響は少なかったことから,ジャンプ中あるいは着地後早期にアライメントが修正されている可能性が考えられる。今後の課題として,より難易度の高い課題を付加した場合,あるいは筋力や静的アライメントの影響を受けやすい女性を対象とした場合等,アライメントにどのような影響があらわれるかの検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において,予測条件の違いにより片脚ジャンプ・着地動作が変化し,ACL損傷のリスクが増加する可能性が示唆された。今後,より難易度の高い条件の付加や,女性を対象とした研究を行うことで,スポーツ場面におけるACL損傷のリスクの評価や予防プログラム立案の一助となると考える。