[1534] 体幹肢位の違いが片脚スクワット動作時に下肢3関節へ与える影響
Keywords:体幹回旋, スクワット動作, strategy
【はじめに,目的】
膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷はスポーツ外傷の中でも重篤な外傷である。受傷機転としては,接触型・非接触型がある。非接触型損傷では,ジャンプ動作やカッティング動作中に見られる。受傷肢位は膝関節軽度屈曲位,膝関節外反位,後方重心が多い。ACL損傷の受傷肢位は,下肢アライメントや下肢筋活動についての報告を散見する。しかし,体幹肢位に関する報告は少ない。本報告は,体幹回旋を加えた肢位から片脚スクワット動作をすることで,体幹肢位が下肢3関節に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は下肢に主な整形外科疾患のない健常成人男性7名(年齢24.1±1.2歳,身長172.0±6.6cm,体重65.1±7.8kg)とした。計測機器は,VICON MXシステム(VICON,カメラ7台,200Hz),床反力計OR6-7(AMTI,2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS1.7.1を用いた。マーカは,Helen Hayes Marker setの35ヵ所とした。運動課題は,体幹肢位を正中位N,内旋位IR,外旋位ERの3群に分け,非利き脚による片脚立位の姿勢からスクワット動作を行い開始肢位に戻るまでの一連の動作とした。計測時間は,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列から,全データのサンプル数が同じ長さになるようにデータを正規化した。運動速度はメトロノーム(66bpm)に合わせて2拍で下降,2拍で上昇した。解析項目は,各群の下肢3関節角度,身体重心位置(以下COG)を算出した。統計は二元配置分散分析,多重比較はBonferroniを用いて行った(P<0.05)。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に準じ事前に対象者に研究の目的と方法を十分に説明し,同意を得たうえで研究を開始した。
【結果】
体幹の回旋角度は,運動開始角度N:-0.8±3.4度,IR:-39.5±8.1度,ER:42.4±10.9度であった。股関節最大屈曲角度は,N:79.5±9.0度,IR:76.8±7.1度,ER:71.1±12.0度を示し,N-ER間に有意差を認めた。膝関節最大屈曲角度は,N:82.7±9.3度,IR:84.3±8.0度,ER:80.7±7.5度で各群間に有意差を認めなかった。足関節最大背屈はN:37.7±2.1度,IR:39.2±3.4度,ER:42.7±4.3度でN-ER間に有意差を認めた。膝関節最大外反角度はN:25.5±22.2度,IR:19.4±20.8度,ER:30.0±23.7度,足関節最大回内角度はN:4.6±1.4度,IR:4.3±1.7度,ER:5.7±1.7度でIR-ER間に有意差を認めた。COGの側方変位量はN:17.7±7.6mm,IR:19.4±2.8mm,ER:24.1±4.1mmで有意差を認めなかった。
【考察】
IRは股関節内旋角度の増加によって,大腿骨頭が股関節臼蓋の被覆率が増加する肢位となり,運動全体を通して股関節が安定する肢位になったと考えられた。さらに足関節は重心を支持基底面内にとどめる足関節戦略を行いバランス保持に関与したと考えられる。ERは大腿骨に対して体幹部が開くことで,股関節外旋となり股関節がloosed packed positionとなった。下肢関節の中で最も大きい自由度を持つ股関節が自由な状態となることで,身体重心の移動量も大きくなる。バランスを保つためには足関節戦略では補いきれず股関節戦略として膝関節外反方向への運動が増加したと考えられた。よって,ERによる動作を行うことで,運動初期に股関節,膝関節軽度屈曲位,膝関節外反位となる事が考えられ,これはACL損傷の受傷肢位に近似した肢位である。本研究より,片脚スクワット動作時にERとなることは,股関節戦略によって膝関節外反角度を増加する要因となったと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究より,体幹肢位の違いが下肢3関節に与える影響を明らかにすることは,片脚着地動作やカッティング動作における体幹肢位と下肢3関節の関連性を知るため重要であると考えられた。
膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷はスポーツ外傷の中でも重篤な外傷である。受傷機転としては,接触型・非接触型がある。非接触型損傷では,ジャンプ動作やカッティング動作中に見られる。受傷肢位は膝関節軽度屈曲位,膝関節外反位,後方重心が多い。ACL損傷の受傷肢位は,下肢アライメントや下肢筋活動についての報告を散見する。しかし,体幹肢位に関する報告は少ない。本報告は,体幹回旋を加えた肢位から片脚スクワット動作をすることで,体幹肢位が下肢3関節に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は下肢に主な整形外科疾患のない健常成人男性7名(年齢24.1±1.2歳,身長172.0±6.6cm,体重65.1±7.8kg)とした。計測機器は,VICON MXシステム(VICON,カメラ7台,200Hz),床反力計OR6-7(AMTI,2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS1.7.1を用いた。マーカは,Helen Hayes Marker setの35ヵ所とした。運動課題は,体幹肢位を正中位N,内旋位IR,外旋位ERの3群に分け,非利き脚による片脚立位の姿勢からスクワット動作を行い開始肢位に戻るまでの一連の動作とした。計測時間は,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列から,全データのサンプル数が同じ長さになるようにデータを正規化した。運動速度はメトロノーム(66bpm)に合わせて2拍で下降,2拍で上昇した。解析項目は,各群の下肢3関節角度,身体重心位置(以下COG)を算出した。統計は二元配置分散分析,多重比較はBonferroniを用いて行った(P<0.05)。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に準じ事前に対象者に研究の目的と方法を十分に説明し,同意を得たうえで研究を開始した。
【結果】
体幹の回旋角度は,運動開始角度N:-0.8±3.4度,IR:-39.5±8.1度,ER:42.4±10.9度であった。股関節最大屈曲角度は,N:79.5±9.0度,IR:76.8±7.1度,ER:71.1±12.0度を示し,N-ER間に有意差を認めた。膝関節最大屈曲角度は,N:82.7±9.3度,IR:84.3±8.0度,ER:80.7±7.5度で各群間に有意差を認めなかった。足関節最大背屈はN:37.7±2.1度,IR:39.2±3.4度,ER:42.7±4.3度でN-ER間に有意差を認めた。膝関節最大外反角度はN:25.5±22.2度,IR:19.4±20.8度,ER:30.0±23.7度,足関節最大回内角度はN:4.6±1.4度,IR:4.3±1.7度,ER:5.7±1.7度でIR-ER間に有意差を認めた。COGの側方変位量はN:17.7±7.6mm,IR:19.4±2.8mm,ER:24.1±4.1mmで有意差を認めなかった。
【考察】
IRは股関節内旋角度の増加によって,大腿骨頭が股関節臼蓋の被覆率が増加する肢位となり,運動全体を通して股関節が安定する肢位になったと考えられた。さらに足関節は重心を支持基底面内にとどめる足関節戦略を行いバランス保持に関与したと考えられる。ERは大腿骨に対して体幹部が開くことで,股関節外旋となり股関節がloosed packed positionとなった。下肢関節の中で最も大きい自由度を持つ股関節が自由な状態となることで,身体重心の移動量も大きくなる。バランスを保つためには足関節戦略では補いきれず股関節戦略として膝関節外反方向への運動が増加したと考えられた。よって,ERによる動作を行うことで,運動初期に股関節,膝関節軽度屈曲位,膝関節外反位となる事が考えられ,これはACL損傷の受傷肢位に近似した肢位である。本研究より,片脚スクワット動作時にERとなることは,股関節戦略によって膝関節外反角度を増加する要因となったと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究より,体幹肢位の違いが下肢3関節に与える影響を明らかにすることは,片脚着地動作やカッティング動作における体幹肢位と下肢3関節の関連性を知るため重要であると考えられた。