[1565] 姫路市における歩道環境の客観的類型化の試み(第一報)
キーワード:車椅子介助, 環境調査, クラスター分析
【はじめに】今日,ユニバーサルデザインの概念が普及し,高齢者や障害者の外出頻度も向上している。しかし,実際に街が高齢者や障害者にとってやさしい環境に整備されているのか疑問である。そこで,我々は目的地に出かける際,必ず通らなければいけない歩道に着目した。本研究では,姫路市内の歩道の環境を把握する目的で調査を行い,多変量解析のクラスター分析を用いて車椅子を利用する高齢者や障害者の視点から歩道の客観的類型化を試みたので報告する。
【方法】本研究では,姫路市の代表的な運行ルートである,神姫バス株式会社の姫路城ループと手柄山ループのバス停留所付近の歩道19地点を調査対象とした。各バス停留所の標識柱から進行方向3m地点を起点とし,車椅子の前輪から後輪の長さ分の帯状のエリアを測定した。測定項目は,車椅子走行の可否,路面性状,街路樹など固定されている障害物の有無,歩道の端から障害物までの幅,歩道傾斜(縦断・横断),障害物の幅,障害物から縁石までの幅,縁石高さ,縁石幅,縁石傾斜(縦断・横断),車道傾斜(縦断・横断),ボルグスケール(以下BS)の15項目とした。測定方法は,歩道幅,障害物の幅,障害物から縁石までの幅,縁石幅はメジャーにて測定した。歩道傾斜を正確に測定するために車椅子上に鉄板を固定して土台を作製し,その鉄板上に2個のデジタル傾斜計(シンワ社製,ブルーレベルデジタル450mm)を横断方向と縦断方向に設置した。縁石と車道の傾斜は小型のデジタル傾斜計(新潟精機製,BB-180A)を直接路面に接地させ測定した。BSは車椅子の座面に鉄板との合計が50kgとなるように重りを設置し,エリアを縦断するように検者3名(男性2名,女性1名,年齢26±1歳)が押した時の主観的疲労度を記録した。歩道環境の客観的な類型化を行うために,多変量解析のクラスター分析(社会情報サービス,エクセル統計2012)を行った。類似度はウォード法を用いてユークリッド法によりクラスター化を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】環境調査実施にあたっては,道路交通法を遵守し,公共交通と歩行者の通行の妨げとならないよう十分に配慮した。
【結果】今回の調査対象はすべて車椅子が通行可能であった。クラスター分析の結果よりIからIVのタイプ(以下C-I~C-IV)に類型化できた。C-Iは13地点が属し,その特徴は,路面性状はアスファルト舗装が主であり,障害物がない地点が多く,障害物がある地点では障害物の幅が狭く,車道寄りに位置していた。BSは9.5±1.7であり4タイプの中で最も高く,介助の負担感が大きかった。C-IIは3地点が属し,その特徴は,路面性状はブロックが主であり,障害物がない,縁石幅が広い,歩道側の高さが高いであった。BSは7.9±0.3であった。C-IIIは1地点が属し,その特徴は,路面性状がブロックであり,障害物が歩道の端に位置したため,歩道の端から障害物までの幅が狭かった。BSは6.7であった。C-IVは2地点が属し,その特徴は,路面性状がブロックであり,障害物が歩道の中央部に位置し障害物の両側ともに通行可能で,縁石幅が広かった。BSは8.2±0.2であった。歩道傾斜については,縦断と横断ともに各タイプの平均値の間にははっきりとした傾向はなかった。また,車道側の縁石高さも各タイプ間で違いはみられなかった。
【考察】歩道には様々な種類の環境が想定されるため,環境を把握する足がかりとして,高齢者や障害者の利用頻度が高いと考えられる市街地のバス停留所付近の歩道環境を対象とした。調査対象は整備されており,すべての地点において車椅子が通行できたことより,すでにバリアフリー化が図られていた。しかし,一様にみられた歩道環境にも特徴的な4タイプがあることがわかった。今回のクラスター分析による客観的な類型化は,障害物の有無とその位置,そして縁石幅によりタイプ分けされ,歩道傾斜や段差は類型化にほとんど影響がなかったと考えられる。これは,傾斜が障害物の大きさに対し,比較的小さい数値であったためと考えられる。一方,今回の分析結果より問題点もあることがわかった。C-IIとC-IVは縁石幅が広いため歩道と車道との間の通行に制限が大きい。車道との距離が広がるため安全性は向上するが,出入りの利便性は低下する。そのため,縁石の連続距離を短くする必要がある。C-IIIとC-IVは障害物があるため,交通量が多い場合にはすれ違いなどで障害になる可能性がある。今後,調査対象を増やしていく事で,より明確に類型化でき,日常的な環境だけでなく特異的な環境までも評価できる可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】歩道環境を客観的に類型化することで,ユニバーサルデザインの取り組みを促進するための課題をみつけることができることを示唆した点に意義がある。
【方法】本研究では,姫路市の代表的な運行ルートである,神姫バス株式会社の姫路城ループと手柄山ループのバス停留所付近の歩道19地点を調査対象とした。各バス停留所の標識柱から進行方向3m地点を起点とし,車椅子の前輪から後輪の長さ分の帯状のエリアを測定した。測定項目は,車椅子走行の可否,路面性状,街路樹など固定されている障害物の有無,歩道の端から障害物までの幅,歩道傾斜(縦断・横断),障害物の幅,障害物から縁石までの幅,縁石高さ,縁石幅,縁石傾斜(縦断・横断),車道傾斜(縦断・横断),ボルグスケール(以下BS)の15項目とした。測定方法は,歩道幅,障害物の幅,障害物から縁石までの幅,縁石幅はメジャーにて測定した。歩道傾斜を正確に測定するために車椅子上に鉄板を固定して土台を作製し,その鉄板上に2個のデジタル傾斜計(シンワ社製,ブルーレベルデジタル450mm)を横断方向と縦断方向に設置した。縁石と車道の傾斜は小型のデジタル傾斜計(新潟精機製,BB-180A)を直接路面に接地させ測定した。BSは車椅子の座面に鉄板との合計が50kgとなるように重りを設置し,エリアを縦断するように検者3名(男性2名,女性1名,年齢26±1歳)が押した時の主観的疲労度を記録した。歩道環境の客観的な類型化を行うために,多変量解析のクラスター分析(社会情報サービス,エクセル統計2012)を行った。類似度はウォード法を用いてユークリッド法によりクラスター化を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】環境調査実施にあたっては,道路交通法を遵守し,公共交通と歩行者の通行の妨げとならないよう十分に配慮した。
【結果】今回の調査対象はすべて車椅子が通行可能であった。クラスター分析の結果よりIからIVのタイプ(以下C-I~C-IV)に類型化できた。C-Iは13地点が属し,その特徴は,路面性状はアスファルト舗装が主であり,障害物がない地点が多く,障害物がある地点では障害物の幅が狭く,車道寄りに位置していた。BSは9.5±1.7であり4タイプの中で最も高く,介助の負担感が大きかった。C-IIは3地点が属し,その特徴は,路面性状はブロックが主であり,障害物がない,縁石幅が広い,歩道側の高さが高いであった。BSは7.9±0.3であった。C-IIIは1地点が属し,その特徴は,路面性状がブロックであり,障害物が歩道の端に位置したため,歩道の端から障害物までの幅が狭かった。BSは6.7であった。C-IVは2地点が属し,その特徴は,路面性状がブロックであり,障害物が歩道の中央部に位置し障害物の両側ともに通行可能で,縁石幅が広かった。BSは8.2±0.2であった。歩道傾斜については,縦断と横断ともに各タイプの平均値の間にははっきりとした傾向はなかった。また,車道側の縁石高さも各タイプ間で違いはみられなかった。
【考察】歩道には様々な種類の環境が想定されるため,環境を把握する足がかりとして,高齢者や障害者の利用頻度が高いと考えられる市街地のバス停留所付近の歩道環境を対象とした。調査対象は整備されており,すべての地点において車椅子が通行できたことより,すでにバリアフリー化が図られていた。しかし,一様にみられた歩道環境にも特徴的な4タイプがあることがわかった。今回のクラスター分析による客観的な類型化は,障害物の有無とその位置,そして縁石幅によりタイプ分けされ,歩道傾斜や段差は類型化にほとんど影響がなかったと考えられる。これは,傾斜が障害物の大きさに対し,比較的小さい数値であったためと考えられる。一方,今回の分析結果より問題点もあることがわかった。C-IIとC-IVは縁石幅が広いため歩道と車道との間の通行に制限が大きい。車道との距離が広がるため安全性は向上するが,出入りの利便性は低下する。そのため,縁石の連続距離を短くする必要がある。C-IIIとC-IVは障害物があるため,交通量が多い場合にはすれ違いなどで障害になる可能性がある。今後,調査対象を増やしていく事で,より明確に類型化でき,日常的な環境だけでなく特異的な環境までも評価できる可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】歩道環境を客観的に類型化することで,ユニバーサルデザインの取り組みを促進するための課題をみつけることができることを示唆した点に意義がある。