[1605] 頚部筋力測定時に頭部固定具の有無が測定値信頼性へ与える影響
キーワード:頚部筋力, 頚部外傷, 信頼性
【はじめに,目的】アメリカンフットボールやラグビーなどのコンタクトスポーツでは,しばしば頭頚部の外傷が生じる。大学アメフト選手を対象に頚部筋力を測定したものでは,頚部外傷がある選手は頚部筋力が弱い傾向があるとされており,頚部筋力の測定は頚部の状態を把握するために有用な評価法として臨床で使用されている(渡邊ら,1996)。先行研究では,頚部筋力の測定にハンドヘルドダイナモメーターを使用しているものが多い。筆者らは徒手的に頚部筋力を測定する方法は,信頼性が低くなるのではないかと感じている。また,先行研究では大腿四頭筋の筋力測定において,ベルト等の固定具を使用することで信頼性が高まることが示されている(加藤ら,2002)。頚部筋力の測定に関しては頭部の固定の有無による信頼性については報告がない。筆者らは信頼性が高く,容易に測定が可能な頚部筋力の測定方法の確立が必要と考え,頭部の固定具を制作し,頭部を固定しないものよりも信頼性が高いかどうか検討することとした。本研究の目的は,固定具を使用した頚部筋力測定方法と固定具を使用しない頚部筋力測定方法の信頼性を検証することである。仮説は固定具を使用した頚部筋力測定方法は固定しないものに比べ,信頼性が高くなるとした。
【方法】対象は健常成人男性9名とした。年齢(平均±SD)は25.0±1.0歳,身長は171.7±7.0cm,体重は61.3±10.0kgであった。測定課題は等尺性での頚部筋力測定とし,固定具を使用した条件と使用しない条件をそれぞれ1週間間隔で2度ずつ実施した。頚部筋力は背臥位にて頚部屈曲筋力,腹臥位にて頚部伸展筋力,側臥位にて左右の頚部側屈筋力を測定した。固定具は金属で,ベッド上臥位にてハンドヘルドダイナモメーター(Power TrackII:J Tech Medical Co. USA,以下HHD)を頭部に垂直にあてた状態で固定する機能を有するよう作製された。HHDをあてる部位は頚部屈曲筋力では前頭部,頚部伸展筋力では後頭部,頚部側屈筋力では側頭部とした。固定具を使用しない条件はHelenらの新・徒手筋力検査法第8版に準じて測定した(2008)。測定は2回ずつ実施し,平均値を分析に使用した。統計処理にはstatcel2(エクセルアドインソフト)を使用し,信頼性の検討に級内相関係数ICC(1,1)を使用した。有意水準を5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】全対象に本研究の趣旨と方法を十分に説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究はサザンクリニック整形外科・内科倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号1304)。
【結果】固定具を使用しない頚部屈曲筋力の平均値は初回は73.9±30.8N,2回目は94.7±31.6N,ICCは0.66であった。固定具を使用した頚部屈曲筋力の初回は83.7±27.9N,2回目は90.9±29.9N,ICCは0.84であった。固定具を使用しない頚部伸展筋力の初回は157.8±65.6N,2回目は148.7±73.1N,ICCは0.68であった。固定具を使用した頚部伸展筋力の初回165.9±64.6N,2回目は171.1±70.29N,ICCは0.79であった。固定具を使用しない頚部右側屈筋力の初回98.8±43.3N,2回目は115.7±64.9N,ICCは0.71であった。固定具を使用した頚部右側屈筋力の平均値は初回139.6±59.3N,2回目は142.8±63.9N,ICCは0.95であった。固定具を使用しない頚部左側屈筋力は初回122.5±57.4N,2回目は137.4±72.4N,ICCは0.64であった。固定具を使用した頚部左側屈筋力は初回144.5±58.1N,2回目は148.6±63.3N,ICCは0.76であった。
【考察】本研究の結果から固定具を使用しない条件ではICCが0.64から0.71の範囲であり,固定具を使用した条件では0.76から0.95であった。固定具を使用しない条件は栗原ら(1993)の判断基準を参考にすると「可能」から「普通」の範囲であり,中等度の信頼性があることが示された。固定具を使用した条件は「普通」から「優秀」の範囲であり,高い信頼性があることが示された。HHDにおける信頼性については多くの報告があるが,足関節の底屈筋力の信頼性を検討したものでICCが0.97というものがある(杉本ら,2005)。本研究では頭部を固定した場合,0.76から0.95とばらつきがみられた。本研究では頭部を固定し頚部筋力を測定したが,頭部の形状から固定の程度にばらつきが生じ,ICCに影響をおよぼした可能性がある。HHDを使用し膝伸展筋力の測定を行う際に固定具を用いないことで信頼性が欠けるという報告もある(加藤ら,2003)。これらの点から本研究で固定具と併せてHHDを使用した方法は信頼性を高めるうえで効果的な方法であったといえる。
【理学療法学研究としての意義】頭頚部外傷後に頚部筋力を測定する場面は多くあり,頚部筋力測定時に固定具を用いることで信頼性が高まるという結果は理学療法の評価を行う上で,意義の大きいものである。
【方法】対象は健常成人男性9名とした。年齢(平均±SD)は25.0±1.0歳,身長は171.7±7.0cm,体重は61.3±10.0kgであった。測定課題は等尺性での頚部筋力測定とし,固定具を使用した条件と使用しない条件をそれぞれ1週間間隔で2度ずつ実施した。頚部筋力は背臥位にて頚部屈曲筋力,腹臥位にて頚部伸展筋力,側臥位にて左右の頚部側屈筋力を測定した。固定具は金属で,ベッド上臥位にてハンドヘルドダイナモメーター(Power TrackII:J Tech Medical Co. USA,以下HHD)を頭部に垂直にあてた状態で固定する機能を有するよう作製された。HHDをあてる部位は頚部屈曲筋力では前頭部,頚部伸展筋力では後頭部,頚部側屈筋力では側頭部とした。固定具を使用しない条件はHelenらの新・徒手筋力検査法第8版に準じて測定した(2008)。測定は2回ずつ実施し,平均値を分析に使用した。統計処理にはstatcel2(エクセルアドインソフト)を使用し,信頼性の検討に級内相関係数ICC(1,1)を使用した。有意水準を5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】全対象に本研究の趣旨と方法を十分に説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究はサザンクリニック整形外科・内科倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号1304)。
【結果】固定具を使用しない頚部屈曲筋力の平均値は初回は73.9±30.8N,2回目は94.7±31.6N,ICCは0.66であった。固定具を使用した頚部屈曲筋力の初回は83.7±27.9N,2回目は90.9±29.9N,ICCは0.84であった。固定具を使用しない頚部伸展筋力の初回は157.8±65.6N,2回目は148.7±73.1N,ICCは0.68であった。固定具を使用した頚部伸展筋力の初回165.9±64.6N,2回目は171.1±70.29N,ICCは0.79であった。固定具を使用しない頚部右側屈筋力の初回98.8±43.3N,2回目は115.7±64.9N,ICCは0.71であった。固定具を使用した頚部右側屈筋力の平均値は初回139.6±59.3N,2回目は142.8±63.9N,ICCは0.95であった。固定具を使用しない頚部左側屈筋力は初回122.5±57.4N,2回目は137.4±72.4N,ICCは0.64であった。固定具を使用した頚部左側屈筋力は初回144.5±58.1N,2回目は148.6±63.3N,ICCは0.76であった。
【考察】本研究の結果から固定具を使用しない条件ではICCが0.64から0.71の範囲であり,固定具を使用した条件では0.76から0.95であった。固定具を使用しない条件は栗原ら(1993)の判断基準を参考にすると「可能」から「普通」の範囲であり,中等度の信頼性があることが示された。固定具を使用した条件は「普通」から「優秀」の範囲であり,高い信頼性があることが示された。HHDにおける信頼性については多くの報告があるが,足関節の底屈筋力の信頼性を検討したものでICCが0.97というものがある(杉本ら,2005)。本研究では頭部を固定した場合,0.76から0.95とばらつきがみられた。本研究では頭部を固定し頚部筋力を測定したが,頭部の形状から固定の程度にばらつきが生じ,ICCに影響をおよぼした可能性がある。HHDを使用し膝伸展筋力の測定を行う際に固定具を用いないことで信頼性が欠けるという報告もある(加藤ら,2003)。これらの点から本研究で固定具と併せてHHDを使用した方法は信頼性を高めるうえで効果的な方法であったといえる。
【理学療法学研究としての意義】頭頚部外傷後に頚部筋力を測定する場面は多くあり,頚部筋力測定時に固定具を用いることで信頼性が高まるという結果は理学療法の評価を行う上で,意義の大きいものである。