[1614] 理学療法士養成を支援する装着型内反尖足ダミー
キーワード:内反尖足, 足関節, 痙性麻痺
【はじめに,目的】
PTの技術習得には様々な症状の体験が必要であるが,養成機関ではそれらを体験する機会が限られている。また,臨床実習では,資格を取得していない学生が患者の治療に携わることが倫理的な観点から問題視されており,ここでも症状を体験する機会は十分ではないのが現状である。そこで,筆者らは症状を模擬するダミーロボットを開発し,PTの養成を支援することを目指している。本研究では,PTが臨床現場で体験することが多く,患者のQOLへの影響が大きい内反尖足を模擬するロボットの開発を行っている。尖足は足部の多自由度の関節挙動を伴うため,ロボットによってこれを模擬することは課題が多い。そこで,著者らは,装着型の機構によって尖足を模擬する。また,機構が有する設計パラメータを調整することにより,尖足の個人差を表現することが可能であることを測定実験により示す。
【方法】
本研究では装着型ダミーのプロトタイプの開発を行った。この枠組みでは,機構を健常者の下腿と足に装着し,アクチュエータによりに足部に力を加え,尖足の症状を模擬する。尖足の要因となる後脛骨筋に沿った腱駆動により,手技の学習を妨げないコンパクトな機構を実現した。さらに,この機構によって,足部の内転に伴う,回外と底屈のような複雑な関節動作を実現した。また,装着型ダミーは皮膚や骨,人体の重さや形状などの特徴を表現することができる。このように装着型ダミーにより,人体の特徴を維持したまま,アクチュエータにより内反尖足や痙性などの症状の模擬が可能となる。
開発した装着型ダミーは,膝関節下部に装着されたカフと足底を覆う装具から成る。足底から延びたワイヤが後脛骨筋に沿っており,そのワイヤを下腿のカフに取付けたDCモータで巻き取ることにより,後脛骨筋の緊張亢進による内反尖足を模擬する。また,DCモータのトルクを制御することにより,ROM制限や痙性の症状を提示することができる。
装着型ダミーは後脛骨筋に沿ったワイヤの終点位置を変えることにより,足部に加わる張力の向きが変化する。その結果,手技の学習者が感じる内転方向の抵抗力が主に変化する。著者らは足部に加わる力が,どのように変化するかを力センサを用いて測定した。足部を基本肢位の状態に保ち,内側に力センサを配置した。その状態から,モータに張力を発生させ,それにより発生する内転方向の力を測定した。ワイヤ終点を拇指球にあたる位置から踵にかけてほぼ均等に配置されたI―IIIの3点のいずれかとした。各終点において20回,内転方向の抵抗力を測定し,それらの平均値を算出した。この間,ワイヤの張力が8.3 Nとなるようにモータを制御した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はダミーロボットの開発を目的としており,参加者実験を行っていない。
【結果】
ワイヤの終点をIにしたときの内転方向の抵抗力の平均が4.68±0.96 N,終点IIでは3.58±0.72 N,終点IIIでは2.58±0.42 Nであった。また,装着型機構により,足部の内転,底屈,回外の動作が同時に生起されることを確認した。
【考察】
計測によりワイヤ終点をIからIIIへ変更するにつれ,ダミーが発生させる足部内転方向の力が減少した。この結果は事前に作成した装着型ダミーの物理モデルの結果と一致した。以上からワイヤの終点を変更することにより,模擬する内反尖足の程度が調整され,患者間の個人差が表現され得ることがわかった。
【理学療法学研究としての意義】
複雑な関節動作を伴う内反尖足を,装着型ダミーにより模擬した。ダミーを用いることにより,臨床実習以外で患者に触れることができない学生が,内反尖足の症状を体験したり,手技を学習することができるようになる。また,患者間の個人差を表現できる本ダミーを用いて,Ashworth scaleなどの評価指標の採点基準をPT間で統一することができ,評価の信頼性向上に貢献することができる。
PTの技術習得には様々な症状の体験が必要であるが,養成機関ではそれらを体験する機会が限られている。また,臨床実習では,資格を取得していない学生が患者の治療に携わることが倫理的な観点から問題視されており,ここでも症状を体験する機会は十分ではないのが現状である。そこで,筆者らは症状を模擬するダミーロボットを開発し,PTの養成を支援することを目指している。本研究では,PTが臨床現場で体験することが多く,患者のQOLへの影響が大きい内反尖足を模擬するロボットの開発を行っている。尖足は足部の多自由度の関節挙動を伴うため,ロボットによってこれを模擬することは課題が多い。そこで,著者らは,装着型の機構によって尖足を模擬する。また,機構が有する設計パラメータを調整することにより,尖足の個人差を表現することが可能であることを測定実験により示す。
【方法】
本研究では装着型ダミーのプロトタイプの開発を行った。この枠組みでは,機構を健常者の下腿と足に装着し,アクチュエータによりに足部に力を加え,尖足の症状を模擬する。尖足の要因となる後脛骨筋に沿った腱駆動により,手技の学習を妨げないコンパクトな機構を実現した。さらに,この機構によって,足部の内転に伴う,回外と底屈のような複雑な関節動作を実現した。また,装着型ダミーは皮膚や骨,人体の重さや形状などの特徴を表現することができる。このように装着型ダミーにより,人体の特徴を維持したまま,アクチュエータにより内反尖足や痙性などの症状の模擬が可能となる。
開発した装着型ダミーは,膝関節下部に装着されたカフと足底を覆う装具から成る。足底から延びたワイヤが後脛骨筋に沿っており,そのワイヤを下腿のカフに取付けたDCモータで巻き取ることにより,後脛骨筋の緊張亢進による内反尖足を模擬する。また,DCモータのトルクを制御することにより,ROM制限や痙性の症状を提示することができる。
装着型ダミーは後脛骨筋に沿ったワイヤの終点位置を変えることにより,足部に加わる張力の向きが変化する。その結果,手技の学習者が感じる内転方向の抵抗力が主に変化する。著者らは足部に加わる力が,どのように変化するかを力センサを用いて測定した。足部を基本肢位の状態に保ち,内側に力センサを配置した。その状態から,モータに張力を発生させ,それにより発生する内転方向の力を測定した。ワイヤ終点を拇指球にあたる位置から踵にかけてほぼ均等に配置されたI―IIIの3点のいずれかとした。各終点において20回,内転方向の抵抗力を測定し,それらの平均値を算出した。この間,ワイヤの張力が8.3 Nとなるようにモータを制御した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はダミーロボットの開発を目的としており,参加者実験を行っていない。
【結果】
ワイヤの終点をIにしたときの内転方向の抵抗力の平均が4.68±0.96 N,終点IIでは3.58±0.72 N,終点IIIでは2.58±0.42 Nであった。また,装着型機構により,足部の内転,底屈,回外の動作が同時に生起されることを確認した。
【考察】
計測によりワイヤ終点をIからIIIへ変更するにつれ,ダミーが発生させる足部内転方向の力が減少した。この結果は事前に作成した装着型ダミーの物理モデルの結果と一致した。以上からワイヤの終点を変更することにより,模擬する内反尖足の程度が調整され,患者間の個人差が表現され得ることがわかった。
【理学療法学研究としての意義】
複雑な関節動作を伴う内反尖足を,装着型ダミーにより模擬した。ダミーを用いることにより,臨床実習以外で患者に触れることができない学生が,内反尖足の症状を体験したり,手技を学習することができるようになる。また,患者間の個人差を表現できる本ダミーを用いて,Ashworth scaleなどの評価指標の採点基準をPT間で統一することができ,評価の信頼性向上に貢献することができる。