第49回日本理学療法学術大会

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脳損傷理学療法22

2014年6月1日(日) 12:15 〜 13:05 ポスター会場 (神経)

座長:柿澤雅史(札幌医科大学附属病院リハビリテーション部)

神経 ポスター

[1624] 脳卒中発症後早期の基本動作能力および日常生活活動改善度と最終転帰との関連

藤原亜希子1,2, 萩原晃1,2, 高橋和宏1,2, 臼田滋2, 白倉賢二1,3 (1.群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.群馬大学大学院保健学研究科, 3.群馬大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学分野)

キーワード:FIM利得, FIM効率, 脳卒中地域連携パス

【はじめに,目的】急性期脳卒中患者の予後予測は,急性期病院からの転帰における関連や歩行の予後に関与する要因の検討は報告されてきているが,発症直後からの経過全般を追跡した最終転帰に関する報告は少ない。そして,急性期病院入院中の変化と最終転帰との関連性は,明らかではない。本研究の目的は,急性期病院入院中の日常生活活動(ADL)改善度および基本動作の獲得状況と,連携病院入院中のADL改善度や最終転帰との関連を検討することである。
【方法】平成21年8月から平成25年7月までに,急性期病院である当院の脳卒中ケアユニット(SCU)に脳卒中対象疾患である脳梗塞,脳出血,くも膜下出血(SAH)の治療目的に入院し,脳卒中地域連携パス(以下,パス)を利用して連携病院へ転院した189例のうち,H25年10月までに当院へパス返却のあった175例で,連携病院にてバリアンス(リハビリテーション実施困難または死亡離脱)のあった者,パスに連携病院退院時のFunctional Independence Measure(FIM)の記載がなかった者を除外した157例を分析対象とした。分析方法は,年齢,性別,疾患名,麻痺側,開始時と当院からの転院時(以下,転院時)におけるJapan Coma Scale(JCS)および基本動作能力の自立か非自立(端坐位,立ち上がり,立位,歩行),入院日数(当院・連携病院・合計),開始時・転院時・連携病院退院時(以下,退院時)におけるFIM得点(合計点・運動項目・認知項目)をパスより後方視的に調査し,FIM利得(転院時または退院時FIM得点-開始時または転院時FIM得点),FIM効率(FIM利得/入院日数)を算出した。統計学的分析は,連携病院からの退院時転帰として自宅退院群(以下,自宅群)と非自宅退院群(以下,非自宅群)の2群間について,属性やFIM得点,各基本動作の自立群と非自立群の割合を比較した。平均値の比較はt検定,度数分布の比較はχ2検定を行った。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】連携における脳卒中地域連携パスの使用については入院時に患者および家族より匿名化された情報をもとに研究に使用することに同意,署名を得ている。また,転記したデータは施錠できる場所に保管し,情報の分析に使用するコンピュータを含め個人情報の保護に十分に留意した。
【結果】対象となった157例の属性については,性別は,男性88例,女性69例,疾患名は,脳梗塞83例,脳出血55例,SAH19例であり,麻痺側は,右が71例,左が71例,両側またはなしが15例であった。連携病院からの最終転帰は,自宅群119例,非自宅群38例であった。疾患別の自宅群と非自宅群の発症年齢(平均±標準偏差)は,脳梗塞が72.6±10.3歳(n=63)/76.5±10.5歳(n=20),脳出血が61.9±13.2歳(n=41)/70.9±10.9歳(n=14)(p<0.05),SAHが66.6±12.8歳(n=15)/69.6±7.6歳(n=4)で,当院入院日数は,脳梗塞が25.1±9.5日/45.6±27.0日(p<0.01),脳出血が25.8±10.6日/35.9±11.6日(p<0.01),SAHが48.0±22.7日/46.3±13.3日であり,脳梗塞の開始時JCSと脳出血の開始および転院時JCSで自宅群のほうが有意に軽度であった。最終転帰の2群と,各基本動作の可否は,脳梗塞における開始時と転院時の端坐位,転院時の立ち上がり,立位,歩行,脳出血における開始時の端坐位,転院時の立ち上がり,立位と有意な関連を認め,自立群の方が,各基本動作の自立の対象が多かった。自宅群/非自宅群のFIM合計点の利得は,当院23.8±15.5点/11.5±10.7点,連携病院25.7±20.8点/11.1±19.6点で,FIM合計点の効率は,当院0.99±0.67/0.34±0.36,連携病院0.32±0.32/0.11±0.27と2群間で有意差を認め,FIM運動項目の利得および効率においても有意差を認めた。また,FIM利得(合計点・運動項目・認知項目)は,FIM運動項目の効率のみ,脳梗塞の当院と連携病院間に有意な相関を認めた。
【考察】今回,最終転帰が自宅退院であった患者は,若年,発症後早期および転院時における意識障害が軽度,基本動作の早期獲得,急性期病院入院期間が短い,運動面のADL改善度が高かった。今回は基本動作能力に関しては,病棟での実行状況ではなく,能力を理学療法士が評価したため実行状況を評価した場合と関連性が異なる可能性がある。また,ADL改善度に関しては認知面の影響も考慮されるが,今回の結果では運動面の向上と関連があり,発症後早期からリスク管理下での動作の早期自立に向けた積極的なアプローチが重要であると考えられた。また,早期に動作を獲得していたにもかかわらず自宅退院に至らなかった症例について,病巣部位やサイズ,合併症の有無なども加えた,より詳細な検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】発症後早期における基本動作能力と,最終転帰との関連性が明らかとなり,臨床における予後予測の一助となる。