第49回日本理学療法学術大会

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生活を支えるための環境―飛び出そう街へ―

2014年5月30日(金) 13:30 〜 15:00 第2会場 (1F メインホール)

座長:佐藤史子(横浜市総合リハビリテーションセンター地域支援課)

シンポジウムⅠ

[2013] 活動への提言

宮地秀行 (横浜ラポールスポーツ指導員)

リハビリテーションの専門職は皆,機能回復訓練やADL訓練によって,目の前の患者が自立度を高め,退院後の地域生活を充実して欲しいと願っている。ところが患者さんの中には,退院後「病院を追い出された」とか「医者に見放された」と感じながら機能回復に対するこだわりを強め,訓練人生を歩む人が少なくない。一方,福祉制度の整備によってさまざまな福祉機器や人的支援の活用が可能になり,障害者や高齢者の生活利便性は向上しているが,その半面,便利さは身体活動の機会を減らし,廃用症候群や生活習慣病のリスクを高めている。また,介護保険は条件付きとは言え40歳からサービスの利用ができ,多くの人がその恩恵を受けているものの,自立度を向上させ,積極的な社会参加を促すという点では矛盾や課題も感じられる。
リハビリテーションは,たとえ機能の回復が望めない状況にあっても,潜在的な能力を引き出してできることを増やし,障害者自らがその能力を活かして生きがいのある豊かな生活を送れるように支援することを指す。とすれば,「街に飛び出す!」にしても,主体的に行動し,主体的に人と関われるようにするために,医療からのリハビリテーションのバトンを次のステージに引き継ぎ,医療リハの範疇では充足しきれない課題に対して具体的な自立支援のアプローチを試みる必要があると言えるだろう。



横浜ラポールでは隣接する横浜市総合リハビリテーションセンターと連携し,主に生活期の障害者を対象に,様々な余暇活動を通じた自立と社会参加支援のプログラムを実践している。中でも特徴的な事業として挙げられる「リハビリテーション・スポーツ」は,医療的な訓練から自立したスポーツ活動(生涯スポーツ)への橋渡しを担うもので,多くの参加者がプログラム修了後も仲間とともに活動を継続し,さらに活動の幅,生活の幅を広げている。また,障害を理由にあきらめている活動に「旅行」を挙げる人が多かったことから,リハビリテーション・スポーツのノウハウを応用し,旅行をツールにした自立支援プログラム「旅リハ」を立ち上げた。非日常的な公共交通機関の利用や宿泊施設での生活,アクティビティへの参加,人や文化との交流…,こうした経験が自信や意欲といったチカラになり,日常生活に大きな行動変容をもたらしている。
本シンポジウムでは,リハビリテーションの考え方をもとに実施される余暇支援の試み,「リハビリテーション・スポーツ」と「旅リハ」を通じて引き出される彼らの笑顔や可能性をお伝えしたい。これらは,皆さんの現場から引き継がれた仕事の結果であり,逆に,臨床にあたる皆さんが退院後の生活の広がりをイメージできれば,それ自体が活動の後押しとなるのではないだろうか。