第49回日本理学療法学術大会

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大会企画 » 理学療法士の生活を支える ―仕事を続けていくための問題について考えよう―

第Ⅱ部:ライフスタイルの変化と就業継続に関する問題―様々な立場からの問題提起―

Sat. May 31, 2014 2:40 PM - 4:10 PM 第9会場 (4F 413)

司会:大槻かおる(大和市立病院), 大島奈緒美(ふれあい平塚ホスピタルリハビリテーション科)

ライフサポートセミナー

[2019] 離職した立場から考える就業継続~妊娠・出産・育児の経験から~

杉山さおり (GoodPosture(自宅))

理学療法士の資格取得から18年。
理学療法士として勤務したのは5年足らずで,そのほとんどを専業主婦として過ごしてきました。
その選択には,いろいろな背景があり,葛藤の中で仕事を辞める選択をし,1)仕事をしたくても出来なかった時期,2)子育てに専念することを選択して,復職に向けた準備をした時期,3)フリーランスで仕事を始めるに至った時期を過ごしました。
そんな私の経験を,「働き続けるためには,どうすれば良かったのか?」という視点で振り返り,『出産・育児を経験する女性が,理学療法士として働き続けるためには何が必要か?』考えるきっかけにして頂けたらと思います。
I.妊娠・出産から復職までの経緯
1)仕事をしたくても出来なかった時期
就職して4年。結婚を機に転職して半年足らずで妊娠。妊娠3カ月で,肺炎を起こし入院。妊娠の報告をした時に,「業務負担の軽減はしない」と宣告された職場で働き続けることを断念して退職。切迫早産で約2ヶ月の入院を経ての出産。姉の出産,実家の引っ越しも重なり,実家を頼れない状況での子育てのスタート。働くことについての周囲の反対。体力・気力の低下もあり,不本意ながら周囲の状況に流され,「働くためにはどうしたらいいか?」と具体的に考えることも出来なかった時期を過ごす。
2)子育てに専念することを選択した時期(復職に向けた準備)
第1子の出産から3年後,第2子を出産。この間,夫に思いをぶつけ続け,私の理学療法士の仕事に対する思い,将来的に仕事をするために復職が必要であることを理解してもらえるようになる。娘は幼稚園,息子は一時保育に預け,1年間,月2回のパートの仕事をした後,週1回の訪問リハのパートの仕事に就く。その1ヶ月半後,夫の転勤が決まり,わずか3カ月でパートの仕事を辞め,福岡へ転居。
5歳と2歳の子どもを連れての引っ越し。社宅住まいになり,「夫の妻」「母」として過ごす日々。保育環境が違い,パート勤務が難しい状況の中で,次の転勤の目途も立たず,復職を断念。転居前に受けた介護予防の研修会で知ったウィメンズヘルスの分野が,自分自身の妊娠・出産の経験を活かすことが出来る分野だと感じ,地道に勉強を続けることでモチベーションを維持。年に1回は講習会などに参加。自ら産後の不調を改善するべく,理学療法士のコンディショニングを受ける。
理学療法士としてだけではない自分の生き方を考えた時期。母の関わり(存在)が子どもに与える影響の大きさを実感し,その時しかない子どもと過ごす時間に価値を見い出し,専業主婦だからこそ出来る経験を積むことに決め,勉強の傍ら主婦業に専念する。
3)フリーランスで仕事を始めるに至った時期
5年間の福岡での生活から,一昨年夫の転勤で川崎へ戻る。子ども達が二人共小学生になり,時間的にも余裕ができた時期。
産後リハビリテーションに関わることを目指し,いろいろな産後ケアを体験。現在の制度や医療の状況等を踏まえ,地域でフリーランスの形で仕事をすることを選択。
GoodPostureという屋号で,フリーランス宣言。ウィメンズヘルス分野を中心に,セルフコンディショニングサポートという形でヘルスプロモーションの仕事を始める。
II.就業継続に必要なこと
このような経緯を振り返り,私が働き続けるためには,いくつかのハードルがあったことがわかってきました。
パーソナルな問題としては,私の場合,育った環境や親から受け継いだ価値観の影響が強く,自分自身の思考を変えることにもかなりの時間を要したこと,産後の抑うつ状態に陥っていた時期もあったこと,妊娠・出産に伴う体力低下や出産後の不調の影響もありました。
仕事が忙しい夫の生活を前提に考えると,自分一人で子育てと家事を全て負わなくてはいけないというプレッシャーがあり,復職を遠ざけた要因になりました。
パーソナルな問題を除くと,妊娠中の女性を保護する制度を知らなかったこと,職場の同僚や直属の上司とのコミュニケーション不足も離職に繋がった要因として考えられます。また,家庭での夫とのコミュニケーションも十分ではなかったために,働くことについて夫の理解を得るのに時間がかかったと感じています。
結婚して2年,夫は仕事が忙しい時期で子育てに関わる余裕がなく,私は子育てに追われる中,働きたいのに働けない不満や,一人で子育てに向き合う毎日の不安な気持ちの整理ができず,思いをぶつけるばかりのコミュニケーションになっていました。
私が働くことに理解を示した夫は,一転,家事の負担を軽くすることを一緒に考え,家事も手伝い,講習会などに参加する際にも,子ども達の世話を引き受け,私が出かけやすい環境を作ってくれるなど,とても協力的になりました。
この経験から,一人で抱えてしまうと,周囲には,どのような悩みがあるのか?どうしたいのか?も伝わらず,理解を得ることが難しいということがわかり,コミュニケーションの手段として,“理解を得る”ためには,まず“どう伝えるか?”が重要であると考えます。
妊娠・出産は,想像以上に女性の心身に影響を与え,乳幼児期の子育ては,生活スタイルを一変させます。“人”を育てる,『子育て』という名の一大事業は,時間も労力も必要なことで,女性は,お腹の中にいる時から命を育んでいます。個人差はありますが,妊娠・出産前と同じように働くことが,体力的にも時間的にも難しい時期があり,その時期をどう乗り切るか?家庭でも職場でも十分にコミュニケーションを図り,就業を継続して行く環境を整えることが必要であると考えます。