[O-0139] 当院における歩行自立判定シートの作成
Keywords:回復期, 歩行, 自立判定
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟において,患者のADLは日々向上し,活動範囲は拡大していくが,同時に転倒リスクは高くなる。そのため,リハでは転倒を起こさずに自主的な活動を高めることが求められる。しかし,過度な見守りにより自主的な活動を阻害したり,根拠に乏しい評価や主観的判断のみで自立判定を行うことで転倒を誘発することも認められている。これまで地域高齢者や脳卒中患者を対象にした報告は多くみられるが,回復期リハの対象患者で脳血管疾患,整形外科疾患,廃用症候群を包含した報告はない。そこで本研究では,さまざまな疾患に対し,簡便且つ精度の高い歩行自立判定を行うため,病棟内歩行自立に関わる因子を検討し,歩行自立判定シートを作成することを目的とした。
【方法】
2013年7月1日から2014年5月31日に彩都リハビリテーション病院(以下,当院)2階病棟に入院した180症例のうち,包含基準を満たし除外基準に該当しなかった60症例(平均年齢75.4±12.7歳,平均在院日数68.4±28.4日)をトレーニングサンプルとした。包含基準は,疾患区分が脳血管疾患・整形外科疾患・廃用症候群,発症前Functional Ambulation Classification(以下,FAC)3以上とし,除外基準は,入院時FAC4以上,検査実施が困難な著しい認知症,下肢免荷の指示,義足使用とした。調査項目は,年齢,転倒歴,認知症の有無,補助具,下肢装具の有無とし,転倒リスク評価項目は,10m歩行時間,片脚立位時間とした。転倒リスク評価項目は,補助具の種類や使用の有無に関わらず,リハ中にFAC3となった時点で初回評価を実施し,病棟内歩行自立時,退院時に再評価した。なお,連続変数はカテゴリー化するためにreceiver operating characteristic(以下,ROC)曲線によって,10m歩行時間,健側片脚立位時間,患側片脚立位時間それぞれの退院時歩行自立に対するカットポイントを求めた。
統計解析としては,退院時歩行自立の可否を従属変数に,調査項目と転倒リスク評価項目を独立変数に投入したロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。ロジスティック回帰分析にて抽出された項目より歩行自立リスク得点を求め,ROC曲線によって実際の歩行自立に対するカットポイントを求めた。さらに,妥当性検証のため2014年6月と8月に当院入院中のFAC3以上の89症例をバリデーションサンプルとして,歩行自立の可否,前述のロジスティック回帰分析で抽出された項目について調査し,トレーニングサンプルと同様の結果が得られるのか検証した。いずれの検定も有意水準は5%未満とした。
【結果】
転倒リスク評価項目を独立変数とするROC曲線から得られたカットポイントは,10m歩行時間が10秒(感度:64.7%,特異度:69.0%),健側片脚立位時間が3秒(感度:71.4%,特異度:70.6%),患側片脚立位時間が2秒(感度:64.3%,特異度:76.5%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,認知症の有無,10m歩行時間が10秒以上,健側片脚立位時間が3秒以下の3項目が,歩行を非自立と予測する因子として抽出された(p<0.05)。また,トレーニングサンプルを用いたROC曲線から得られたリスク得点のカットポイントは1.5(AUC:0.847,感度:64.7%,特異度:83.3%)であり,3項目のうち2項目以上該当すれば歩行自立の可能性が低下するという結果となった。なお,バリデーションサンプルのカットポイントも同様に1.5(AUC:0.829,感度:95.7%,特異度:62.1%)であった。
【考察】
本研究の結果から,病棟内歩行自立の可否を判定する因子として,認知症の有無,10m歩行時間が10秒以上,健側片脚立位時間が3秒以下の3項目が抽出された。歩行自立判定シートは,1つの項目が陽性であれば1点とする0~3点の4段階評価で,病棟内歩行自立と判定するのは0点と1点であった。先行研究では,転倒危険因子として認知的要因や身体的要因が重要であることは報告されているが,本研究の歩行自立判定シートはその両方を包含している。なお,本研究ではバリデーションサンプルによる妥当性検証も行っていることから,汎用性の高いシートであると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
歩行自立判定シートを作成することで,さまざまな疾患を呈する回復期リハ患者に対して簡便に病棟内歩行自立判定が可能となった。簡便且つ早期に歩行自立判定が行えることで,早期に院内ADL向上や活動範囲の拡大が見込める。
回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟において,患者のADLは日々向上し,活動範囲は拡大していくが,同時に転倒リスクは高くなる。そのため,リハでは転倒を起こさずに自主的な活動を高めることが求められる。しかし,過度な見守りにより自主的な活動を阻害したり,根拠に乏しい評価や主観的判断のみで自立判定を行うことで転倒を誘発することも認められている。これまで地域高齢者や脳卒中患者を対象にした報告は多くみられるが,回復期リハの対象患者で脳血管疾患,整形外科疾患,廃用症候群を包含した報告はない。そこで本研究では,さまざまな疾患に対し,簡便且つ精度の高い歩行自立判定を行うため,病棟内歩行自立に関わる因子を検討し,歩行自立判定シートを作成することを目的とした。
【方法】
2013年7月1日から2014年5月31日に彩都リハビリテーション病院(以下,当院)2階病棟に入院した180症例のうち,包含基準を満たし除外基準に該当しなかった60症例(平均年齢75.4±12.7歳,平均在院日数68.4±28.4日)をトレーニングサンプルとした。包含基準は,疾患区分が脳血管疾患・整形外科疾患・廃用症候群,発症前Functional Ambulation Classification(以下,FAC)3以上とし,除外基準は,入院時FAC4以上,検査実施が困難な著しい認知症,下肢免荷の指示,義足使用とした。調査項目は,年齢,転倒歴,認知症の有無,補助具,下肢装具の有無とし,転倒リスク評価項目は,10m歩行時間,片脚立位時間とした。転倒リスク評価項目は,補助具の種類や使用の有無に関わらず,リハ中にFAC3となった時点で初回評価を実施し,病棟内歩行自立時,退院時に再評価した。なお,連続変数はカテゴリー化するためにreceiver operating characteristic(以下,ROC)曲線によって,10m歩行時間,健側片脚立位時間,患側片脚立位時間それぞれの退院時歩行自立に対するカットポイントを求めた。
統計解析としては,退院時歩行自立の可否を従属変数に,調査項目と転倒リスク評価項目を独立変数に投入したロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。ロジスティック回帰分析にて抽出された項目より歩行自立リスク得点を求め,ROC曲線によって実際の歩行自立に対するカットポイントを求めた。さらに,妥当性検証のため2014年6月と8月に当院入院中のFAC3以上の89症例をバリデーションサンプルとして,歩行自立の可否,前述のロジスティック回帰分析で抽出された項目について調査し,トレーニングサンプルと同様の結果が得られるのか検証した。いずれの検定も有意水準は5%未満とした。
【結果】
転倒リスク評価項目を独立変数とするROC曲線から得られたカットポイントは,10m歩行時間が10秒(感度:64.7%,特異度:69.0%),健側片脚立位時間が3秒(感度:71.4%,特異度:70.6%),患側片脚立位時間が2秒(感度:64.3%,特異度:76.5%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,認知症の有無,10m歩行時間が10秒以上,健側片脚立位時間が3秒以下の3項目が,歩行を非自立と予測する因子として抽出された(p<0.05)。また,トレーニングサンプルを用いたROC曲線から得られたリスク得点のカットポイントは1.5(AUC:0.847,感度:64.7%,特異度:83.3%)であり,3項目のうち2項目以上該当すれば歩行自立の可能性が低下するという結果となった。なお,バリデーションサンプルのカットポイントも同様に1.5(AUC:0.829,感度:95.7%,特異度:62.1%)であった。
【考察】
本研究の結果から,病棟内歩行自立の可否を判定する因子として,認知症の有無,10m歩行時間が10秒以上,健側片脚立位時間が3秒以下の3項目が抽出された。歩行自立判定シートは,1つの項目が陽性であれば1点とする0~3点の4段階評価で,病棟内歩行自立と判定するのは0点と1点であった。先行研究では,転倒危険因子として認知的要因や身体的要因が重要であることは報告されているが,本研究の歩行自立判定シートはその両方を包含している。なお,本研究ではバリデーションサンプルによる妥当性検証も行っていることから,汎用性の高いシートであると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
歩行自立判定シートを作成することで,さまざまな疾患を呈する回復期リハ患者に対して簡便に病棟内歩行自立判定が可能となった。簡便且つ早期に歩行自立判定が行えることで,早期に院内ADL向上や活動範囲の拡大が見込める。