第50回日本理学療法学術大会

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口述

セレクション 口述3

生体評価学

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM 第5会場 (ホールB5)

座長:臼田滋(群馬大学 大学院保健学研究科)

[O-0138] 非特異的腰痛者におけるサイドブリッジ持久力テスト・疼痛の関係について

櫻井瑞紀, 畠山真未 (医療法人社団健育会竹川病院リハビリテーション部)

Keywords:非特異的腰痛, JOABPEQ, side bridge

【はじめに,目的】
腰痛は約60~80%の人が人生で一度は経験し(Nachemson, 2004),器質的原因が不明な非特異的腰痛(NLBP)が80~90%を占める(荒木,2012)。NLBPは慢性化し難治性となりやすく,社会的損失の一因となっている(荒木,2012)。NLBPは疼痛に左右差を生じる傾向があり,腹横筋や多裂筋の筋断面積は疼痛により委縮し疼痛消失後も筋断面積の左右差が残存することが報告されている(Hides, 1996)。腰痛リスクを評価する方法として,体幹筋群の持久力により腰痛リスクの高い者を予測できるとの報告がある(McGill, 1999)。中でもサイドブリッジ(side bridge:SB)は主に内腹斜筋・外腹斜筋・腰方形筋・腹横筋の収縮が生じる。SBを維持するSB持久力テスト(SBET)のICCは0.98と報告されており,左右差が5%を超える場合は筋持久力の崩れがあるとされる(McGill, 2002)。筋持久力エクササイズは表在筋が過剰に活動している場合は悪影響を及ぼすが,深部筋の機能が確立されることにより安全に行われる(Hodges, 2004)。また,総合的な腰痛評価として,日本整形外科学会腰痛疾患質問票(JOABPEQ)は理学療法診療ガイドラインにて推奨グレードAとされており,信頼性・妥当性が確認されている。非特異的腰痛に対しては,JOABPEQの各スコアとVisual Analog Scale(VAS)に中等度の負の相関があることが確認されている(松井,2009)。しかし,NLBP者におけるSBETとJOABPEQ・疼痛の程度・頻度の関係については明らかとなっていない。本研究の目的は,NLBP者の体幹等尺性持久力と疼痛程度・頻度の関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は初発腰痛から3ヶ月以上経過し,且つ測定日から1週間以内に腰痛を呈したNLBP者19名(年齢27.6±4.2歳,身長1.66±0.08m,体重60.2±8.4kg,男性9名,女性10名)とした。器質的な腰椎疾患を有する者は除外した。測定項目は疼痛の指標としてVAS(0~100mm)・腰痛頻度(週1回未満・週1回以上)・JOABPEQ(疼痛関連障害・腰椎機能障害・社会生活障害・心理的障害の5項目,各100点満点)を質問紙にて聴取した。疼痛程度は過去1週間で最も疼痛が強かった場合に統一した。体幹等尺性持久力の指標として左右のSBET持続時間を計測した。SBET測定側の順序は無作為とし,試行間には十分な休憩をとった。SBET測定肢位・方法はMcGillらの方法に順じ,再現性を確認して行った。SBET持続時間は疼痛側を非疼痛側で除してSBET比率を算出した。統計解析は各測定項目総当たりで単相関分析を実施し,関係性を検討した。統計処理にはR2.8.1を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
各項目の平均値±標準偏差はVAS41.2±18.6mm,疼痛側SBET60.2±27.7秒,非疼痛側SBET77.6±40.6秒,SBET比率0.79±0.12,疼痛関連障害61.5±22.2,腰椎機能障害82.0±20.1,歩行機能障害91.1±15.7,社会生活障害74.9±18.3,心理的障害53.6±11.8あり,疼痛頻度は週1回未満10名・週1回以上9名だった。疼痛側と非疼痛側のSBET持続時間に有意差(p<0.01)を認めた。相関を認めたものはVASと疼痛関連障害(r=-0.36)・腰椎機能障害(r=-0.49),歩行機能障害と疼痛側SBET(r=-0.46)・非疼痛側SBET(r=-0.61),腰椎機能障害と社会生活障害(r=0.72)であった。
【考察】
疼痛側SBET持続時間が非疼痛側よりも優位に低値を示したことから,NLBP者の腰痛側の体幹等尺性持久力の低下が明らかとなり,慢性腰痛かつNLBPを有する者においても対筋等尺性持久力の崩れが生じていることを支持する結果となった。SBET比率0.79はMcGillらの報告では腰痛により離職となった対象者のSBET比率0.93より左右差の大きい結果となった。しかし,McGillらの対象者は測定時点での疼痛を有していない者を対象としているため直接的に比較することは難しいと考える。また,JOABPEQの各スコアとVASに対しては一定の関係を認めたものの,SBET左右比と疼痛程度・頻度について一定の関係は認められなかった。各被験者の疼痛部位やそれに伴って委縮していると考えられる筋が統一されておらず,SBET実施時の筋活動様式や疲労筋の特定には至っていないため,各被験者の活動筋や疲労程度が一定でなかったことが問題として挙げられる。今後は疼痛部位や委縮筋による影響や,等尺性収縮持続時の表在・深部筋活動と疼痛の関係についても明らかにしていく。
【理学療法学研究としての意義】
慢性腰痛・非特異的腰痛者の運動特性として体幹等尺性持久力の低下と左右不均等の存在を示すことができた。