[O-0163] 訪問リハビリテーションの長期的な利用効果
継続利用1年以上者に着目して
Keywords:訪問リハビリテーション, 長期利用効果, 障害高齢者の日常生活自立度
【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(以下,訪リハ)は,2025年から実施される地域包括ケアシステムにおいて,唯一の在宅リハサービスであり,今後,入院期間の短縮・高齢者数の増加に伴い,さらなる質的サービスの向上及び量的サービスの充実が求められている。しかし,現在,3ヶ月~6ヶ月における訪リハの効果は報告されているものの,サービス利用開始から1年以上継続した効果については,ほとんど報告されていない。そこで,訪リハの長期的な経過の中で,基本的な動作能力・生活機能評価に加え,障害高齢者の日常生活自立度(以下,寝たきり度),介護度の変化を調査し,訪リハの長期的な効果を示すことを目的とした。
【方法】
対象者は,2008年8月以降で,当院の訪リハを継続1年以上利用もしくは利用していた78名中,利用中の病態悪化により介護保険の再申請を行った者もしくは3ヶ月以上の入院・中断を挟んだ者を除いた73名とした。なお,調査途中で急変し,長期入院・死亡された対象者は,対象者数の減少を抑えるため,急変直前の生活状況を最終時として扱った。調査内容は,基本情報として,性別・訪リハ開始時の年齢・主疾患名・介護度・利用サービス内容・寝たきり度・認知症高齢者の日常生活自立度・訪リハ利用期間等を,基本的な動作能力・生活機能評価として,Bedside Mobility Scale(以下,BMS)・Barthel Index(以下,BI)を測定した。なお,寝たきり度はJ1~C2を1~8点に,介護度は要支援1~要介護5を1~7点に変換し評価した。調査時点は,訪リハ開始時・開始1年後・最終時(訪リハ終了時もしくは2014年9月時点)とした。統計学的分析として,多重比較にBonferroni法を,開始時・最終時の各評価の関連にSpearmanの順位相関係数を用いた。また,開始時と終了時の寝たきり度の変化量を従属変数とし,説明変数を年齢,性別,主疾患名,通所系サービスの有無,合計訪リハ時間,1週間当たりの訪リハ時間,訪リハの利用期間,開始時介護度及び認知症高齢者の日常生活自立度とし,強制投入した重回帰分析を行った。統計学的解析には,SPSS Statistics 22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
対象者の基本属性として,性別は男性35名・女性38名,平均年齢は76.9±10.0歳(男性75.8±9.5歳,女性77.9±10.4歳)であった。訪リハ利用期間は26.9±14.4ヶ月(1年以上2年未満40名,2年以上3年未満16名,3年以上17名),主疾患は脳血管障害28名・骨関節疾患27名・廃用症候群11名・進行性神経疾患7名であった。BMSは,訪リハ開始時:30.0±1.5,1年後:31.5±1.5,最終時:30.8±1.6となり,開始時と開始1年後において有意な改善がみられた。BIは,訪リハ開始時:59.3±3.8,1年後:62.9±3.8,最終時:62.6±3.9となり,開始時と開始1年後において有意な改善がみられた。寝たきり度は,訪リハ開始時:4.6±0.20,1年後:4.3±0.23,最終時:4.3±0.23となり,開始時と開始1年後,最終時において有意な改善がみられた。開始時・終了時での寝たきり度変化量と有意な相関がみられた項目は,BMS変化量(r=-0.550,p<0.01),BI変化量(r=-0.676,p<0.01),介護度変化量(r=0.256,p<0.05)であった。開始時と終了時の寝たきり度の変化量に関し,重回帰分析をした結果,有意な関係を示した項目は見られなかった。介護度は,訪リハ開始時:4.2±0.22,1年後:4.2±0.22,最終時:4.2±0.21となり,各期間において有意な差はみられず,1年後の介護度平均改善率は0.068±0.73(N=73),2年後は-0.091±0.58(N=33),3年後は0.059±0.56(N=17)であった。
【考察】
今回,訪リハの長期的な利用効果を測定するために基本的な動作能力・生活機能評価に加え,寝たきり度,介護度の変化を調査し,訪リハ開始1年後のBMS・BI・寝たきり度に加え,最終時の寝たきり度に,有意な改善が認められた。このことから,1年以上の継続した訪リハ介入することで,基本的な動作能力や生活機能の維持・改善だけでなく,その人に合った福祉用具の使用や適切な動作方法の指導を通し,その人の能力を生かした生活スタイルの構築に関与していると考える。また,訪リハが関わる以外の時間においても,日常生活での活動量の確保に繋がり,長期に渡って生活機能・介護度を維持・改善することが出来ると考える。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハビリを1年以上継続した効果に関する報告は少なく,その効果は明確に示されていない。今回,1年以上の継続した利用効果を示したことで,長期での訪問リハビリの有効性を示唆することが出来たと考える。
訪問リハビリテーション(以下,訪リハ)は,2025年から実施される地域包括ケアシステムにおいて,唯一の在宅リハサービスであり,今後,入院期間の短縮・高齢者数の増加に伴い,さらなる質的サービスの向上及び量的サービスの充実が求められている。しかし,現在,3ヶ月~6ヶ月における訪リハの効果は報告されているものの,サービス利用開始から1年以上継続した効果については,ほとんど報告されていない。そこで,訪リハの長期的な経過の中で,基本的な動作能力・生活機能評価に加え,障害高齢者の日常生活自立度(以下,寝たきり度),介護度の変化を調査し,訪リハの長期的な効果を示すことを目的とした。
【方法】
対象者は,2008年8月以降で,当院の訪リハを継続1年以上利用もしくは利用していた78名中,利用中の病態悪化により介護保険の再申請を行った者もしくは3ヶ月以上の入院・中断を挟んだ者を除いた73名とした。なお,調査途中で急変し,長期入院・死亡された対象者は,対象者数の減少を抑えるため,急変直前の生活状況を最終時として扱った。調査内容は,基本情報として,性別・訪リハ開始時の年齢・主疾患名・介護度・利用サービス内容・寝たきり度・認知症高齢者の日常生活自立度・訪リハ利用期間等を,基本的な動作能力・生活機能評価として,Bedside Mobility Scale(以下,BMS)・Barthel Index(以下,BI)を測定した。なお,寝たきり度はJ1~C2を1~8点に,介護度は要支援1~要介護5を1~7点に変換し評価した。調査時点は,訪リハ開始時・開始1年後・最終時(訪リハ終了時もしくは2014年9月時点)とした。統計学的分析として,多重比較にBonferroni法を,開始時・最終時の各評価の関連にSpearmanの順位相関係数を用いた。また,開始時と終了時の寝たきり度の変化量を従属変数とし,説明変数を年齢,性別,主疾患名,通所系サービスの有無,合計訪リハ時間,1週間当たりの訪リハ時間,訪リハの利用期間,開始時介護度及び認知症高齢者の日常生活自立度とし,強制投入した重回帰分析を行った。統計学的解析には,SPSS Statistics 22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
対象者の基本属性として,性別は男性35名・女性38名,平均年齢は76.9±10.0歳(男性75.8±9.5歳,女性77.9±10.4歳)であった。訪リハ利用期間は26.9±14.4ヶ月(1年以上2年未満40名,2年以上3年未満16名,3年以上17名),主疾患は脳血管障害28名・骨関節疾患27名・廃用症候群11名・進行性神経疾患7名であった。BMSは,訪リハ開始時:30.0±1.5,1年後:31.5±1.5,最終時:30.8±1.6となり,開始時と開始1年後において有意な改善がみられた。BIは,訪リハ開始時:59.3±3.8,1年後:62.9±3.8,最終時:62.6±3.9となり,開始時と開始1年後において有意な改善がみられた。寝たきり度は,訪リハ開始時:4.6±0.20,1年後:4.3±0.23,最終時:4.3±0.23となり,開始時と開始1年後,最終時において有意な改善がみられた。開始時・終了時での寝たきり度変化量と有意な相関がみられた項目は,BMS変化量(r=-0.550,p<0.01),BI変化量(r=-0.676,p<0.01),介護度変化量(r=0.256,p<0.05)であった。開始時と終了時の寝たきり度の変化量に関し,重回帰分析をした結果,有意な関係を示した項目は見られなかった。介護度は,訪リハ開始時:4.2±0.22,1年後:4.2±0.22,最終時:4.2±0.21となり,各期間において有意な差はみられず,1年後の介護度平均改善率は0.068±0.73(N=73),2年後は-0.091±0.58(N=33),3年後は0.059±0.56(N=17)であった。
【考察】
今回,訪リハの長期的な利用効果を測定するために基本的な動作能力・生活機能評価に加え,寝たきり度,介護度の変化を調査し,訪リハ開始1年後のBMS・BI・寝たきり度に加え,最終時の寝たきり度に,有意な改善が認められた。このことから,1年以上の継続した訪リハ介入することで,基本的な動作能力や生活機能の維持・改善だけでなく,その人に合った福祉用具の使用や適切な動作方法の指導を通し,その人の能力を生かした生活スタイルの構築に関与していると考える。また,訪リハが関わる以外の時間においても,日常生活での活動量の確保に繋がり,長期に渡って生活機能・介護度を維持・改善することが出来ると考える。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハビリを1年以上継続した効果に関する報告は少なく,その効果は明確に示されていない。今回,1年以上の継続した利用効果を示したことで,長期での訪問リハビリの有効性を示唆することが出来たと考える。