第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

口述

口述27

地域理学療法3

Fri. Jun 5, 2015 3:00 PM - 4:00 PM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:風間章好(株式会社 富士リハビリステーション 機能訓練プラザ)

[O-0204] 通所リハでのTime Study法による要介護1の利用者の調査結果

赤瀬諒市, 久山弥生, 上原一輝, 久保大輔, 松本彬, 西聡太, 辻本真也, 宮部伸子, 真栄城一郎, 大久保智明, 野尻晋一, 山永裕明 (介護老人保健施設清雅苑)

Keywords:Time Study, 要介護1, 通所リハ

【はじめに,目的】
我々は先行研究で通所リハ利用者の活動場所や活動内容をTimeStudy法により測定し,介護度別にその特徴を示した。しかし,要介護1に限っては活動場所,内容にばらつきが大きく活動の特徴を捉えることが困難であった。そこで今回,要介護1の利用者をさらに3群に分け,活動内容,場所を比較検討したので報告する。
【方法】
対象は平成25年6月から清雅苑(当苑)通所リハビリテーションセンター(通所リハ)を利用した要介護1の方で無作為抽出された60名とした。内訳は男性29名,女性31名,年齢は80±9.5歳。
当苑通所リハでは全利用者に対して定期的に体力測定を行っている。その中のTimed Up & Go test(TUG)の値を17秒以内の群(高度群),17秒から30秒の群(中等度群),30秒以上の群(低度群)に分類した。また,来苑されてから帰宅までの活動場所と活動内容を10分刻みに用紙へ記録した。TUGで分けた3群を目的変数,活動場所と活動内容を記録した各項目を説明変数として統計処理を行った。統計処理は,カイ二乗検定を行い,下位検定として残差分析を行った。
【結果】
活動場所の項目の頻度が有意に高かったのは,高度群でリハセンター,多目的ホール。中等度群で通所ホール。低度群で浴室,ベッドルーム,レクルーム,浴室前ロビー,廊下であった。また,活動場所の項目の頻度が有意に低かったのは,高度群でレクルーム,浴室前ロビー,浴室,ベッドルーム。中等度群で,売店,ベッドルーム,リハセンター。低度群で,多目的ホール,リハセンター,通所ホール。
活動内容の項目の頻度が有意に高かったのは,高度群でリハビリ,カルチャー,団欒。中等度群で待機。低度群で趣味活動,レクリエーション,待機。活動内容の項目の頻度が有意に低かったのは,高度群でレクリエーション,待機。中等度群で趣味活動。低度群でカルチャー,リハビリ,団欒であった。
【考察】
今回の結果から軽度群ではリハ室や入所ホールといった広い活動範囲でリハビリやカルチャーといった活動的な内容が多く,レクルーム,浴室前ロビー,浴室やベッドルームといった,狭い範囲でのレクリエーションや待機といった非活動的な内容が少ない。団欒が多くコミュニケーション能力も高く有意義な時間の使い方をされている事が示唆される。
中等度群では通所ホールの狭い場所で待機といった非活動的な内容が特徴的である。また,売店,リハ室など広い範囲の場所や休息場所であるベッドルーム滞在時間が少ない。このことから積極的な活動が出来ていないだけではなく,受動的で何かを待っている事が多い群であることが示唆される。この群はADLにおける移動機能において自立と介助レベルの境界部分であると考え,これらの要因が行動範囲の狭小化,趣味活動時間の短縮を生じているのではないかと考える。
低度群では,浴室前ロビー,浴室,廊下の場所が多く待機の時間が多くなっており,入浴サービスに関係する項目が多い。また,レクルームでのレクリエーションの時間も多い。当苑のレクリエーションは介護度の重い方でも参加できるような環境になっているが,カルチャーやリハビリは自主的な活動となるため少なかったと思われる。
TUGは高齢者の生活機能の指標として多く報告されている。Podsiadloらは20秒以下で遂行できる高齢者はADLにおける移動課題が自立し,屋外移動のための十分な歩行速度があるとしている。また,30秒以上になるとADLにおいて介助が必要で移動のためには自助具を要すると報告されており,今回の研究ではこれを参考に,グループ分けを行った。そこで,要介護1の利用者の過ごし方の特徴を得ることができた。要介護1の方は身体的にも精神的にも環境的にも様々な状況の方がいる為にアプローチ方法も多様である。しかし,今回の研究が指標の一つとなり,個別アプローチの手助けになると思われる。自主的な行動が少なくなる中等度群や重度群に対して活動できる場所の提供や声掛けなどを行い,自主性や活動時間を向上できるように取り組む必要がある。身体機能向上だけではなく,活動や参加を向上させる取り組みを行う事で身体機能も維持向上できること考える。我々の取り組みが利用者のQOLの向上についても貢献できるよう取り組んでいきたい。
【理学療法学研究としての意義】
生活期のリハビリテーションでは,身体機能だけでなく,生活機能の向上に焦点を当てたサービスを提供していくことが求められる。通所リハは在宅サービスの要であり,家庭から社会参加へ繋げる重要な役割を担っている。要介護1の利用者の今後の介入に対しての取り組み方の一つとして今回の研究が活かせると考える。