[O-0220] 慢性期脳卒中患者に対する間欠入院のADL重症度別での理学療法効果
キーワード:慢性期脳卒中, 間欠入院, 理学療法効果
【はじめに,目的】
慢性期の脳卒中後遺症患者において,在宅・施設生活の中で,加齢や活動量の低下により廃用性の機能低下を生じ,今までの生活を継続していく事が困難となる者をしばしば見受ける。我々は,そのような患者が再び活動的な生活を送れるよう支援するための間欠入院によるリハビリテーション(リハ)は有効であると考えている。これまでに,慢性期脳卒中患者の間欠入院によるリハについての報告は散見されるが,そのエビデンスは十分でない。また,患者の重症度により,リハ効果に違いが生じるのか検討した報告はほとんど無い。本研究の目的は,慢性期脳卒中患者に対する間欠入院での理学療法効果を検討するとともに,日常生活動作(ADL)の重症度によりその効果に違いがあるのか検討する事である。
【方法】
対象は,在宅・施設生活の中で廃用性の機能低下を生じ,一旦低下した動作能力を集中的リハにより再び獲得する事を目的として,2006年1月から2014年8月の間に,当院リハ科で間欠入院を行った慢性期脳卒中後遺症患者の内,10mの歩行が可能であった24例とし,熊本脳卒中地域連携ネットワーク研究会のFunctional Independence Measure(FIM)重症度分類に沿って,入院時FIMの得点から軽度群(110~126点)13例(男性7例女性6例,年齢62.6±9.1歳,発症後期間1223.4±777.3日,入院日数43.6±15.6日),中等度群(80~109点)11例(男性7例女性4例,年齢66.4±4.5歳,発症後期間2254.4±2024.2日,入院日数55.5±17.7日)に分類した。尚,重度群(18~79点)に該当する症例は無かった。理学療法介入は,筋力増強運動や基本動作練習などの一般的な理学療法を行うとともに,リハ時間以外にも各症例に適した自主トレーニングを積極的に行わせた。また,作業療法や言語聴覚療法が実施された。入院中,軽度群,中等度群ともに4例でボツリヌス療法がなされた。主な評価項目は,Berg Balance Scale(BBS),10m歩行時間,下肢の上田式片麻痺回復グレード(下肢グレード),FIM運動項目,FIM認知項目,FIM合計点とし,入院時及び退院時に測定した。各項目において正規性の検定を行った後,対応のあるt検定もしくはウィルコクソン符号付順位和検定を用い,軽度群,中等度群それぞれの群内での入院時と退院時の比較を行った。また,二元配置分散分析法にて両群間における入院時から退院時にかけての変化の違いについて検討した。さらに,BBS,10m歩行時間,FIMについては,入院時の値を基準とした退院時点での改善率を算出し,ウェルチのt検定或いはマンホイットニ検定を用いて2群間で比較した。
【結果】
年齢,発症後期間,入院日数について,2群間に有意な違いは無かった。BBS(軽度群;入院時41.6±8.2点,退院時46.2±6.9点,中等度群;入院時29.2±11.0点,退院時34.1±8.7点),10m歩行(軽度群;入院時19.4±9.4秒,退院時13.7±5.4秒,中等度群;入院時37.0±19.9秒,退院時29.0±15.7秒)では,両群ともに入院時から退院時にかけて有意(p<0.05)な改善を認めた。下肢グレード,FIM運動項目,FIM認知項目,FIM合計点では,両群ともに有意な改善は認めなかった。2群間における入院時から退院時にかけての変化の違いについては,全ての評価項目で有意な交互作用は無かった。また,入院時から退院時にかけての改善率においても,全ての項目で2群間での有意な違いは認めなかった。
【考察】
一般的に,脳卒中患者の理学療法効果については,発症後6ヶ月を経過すると回復の伸びが悪くなると考えられている。しかし,新藤(1996年)や小泉(1992年,1998年)らは,一定のリハを受け在宅生活を経験した後に,能力低下をきたした慢性期脳卒中患者に対する間欠入院でのリハの有効性を示しており,機能低下が進行しないうちに間欠入院を行う必要性を訴えている。本研究では,ADL重症度における軽度群,中等度群ともにバランス機能,10m歩行時間において,間欠入院での理学療法により有意な改善を認め,その改善の程度に両群間で差は無かった。今回の介入では,在宅・施設生活の中で廃用性の機能低下を生じた者の中で,歩行不可能になってしまわないうちに再訓練を積極的に行えた事が改善を認めた要因と考える。今回,ADLが軽度,中等度に障害されている患者においては,間欠入院での集中的な理学療法が有効である事が示唆されたが,今後の課題として,重症例のデータを蓄積し,その効果を検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
慢性期脳卒中患者の機能向上を支援するための間欠入院の効果を示すとともに,どのような患者に対して有効であるのか検討する事は意義深い。
慢性期の脳卒中後遺症患者において,在宅・施設生活の中で,加齢や活動量の低下により廃用性の機能低下を生じ,今までの生活を継続していく事が困難となる者をしばしば見受ける。我々は,そのような患者が再び活動的な生活を送れるよう支援するための間欠入院によるリハビリテーション(リハ)は有効であると考えている。これまでに,慢性期脳卒中患者の間欠入院によるリハについての報告は散見されるが,そのエビデンスは十分でない。また,患者の重症度により,リハ効果に違いが生じるのか検討した報告はほとんど無い。本研究の目的は,慢性期脳卒中患者に対する間欠入院での理学療法効果を検討するとともに,日常生活動作(ADL)の重症度によりその効果に違いがあるのか検討する事である。
【方法】
対象は,在宅・施設生活の中で廃用性の機能低下を生じ,一旦低下した動作能力を集中的リハにより再び獲得する事を目的として,2006年1月から2014年8月の間に,当院リハ科で間欠入院を行った慢性期脳卒中後遺症患者の内,10mの歩行が可能であった24例とし,熊本脳卒中地域連携ネットワーク研究会のFunctional Independence Measure(FIM)重症度分類に沿って,入院時FIMの得点から軽度群(110~126点)13例(男性7例女性6例,年齢62.6±9.1歳,発症後期間1223.4±777.3日,入院日数43.6±15.6日),中等度群(80~109点)11例(男性7例女性4例,年齢66.4±4.5歳,発症後期間2254.4±2024.2日,入院日数55.5±17.7日)に分類した。尚,重度群(18~79点)に該当する症例は無かった。理学療法介入は,筋力増強運動や基本動作練習などの一般的な理学療法を行うとともに,リハ時間以外にも各症例に適した自主トレーニングを積極的に行わせた。また,作業療法や言語聴覚療法が実施された。入院中,軽度群,中等度群ともに4例でボツリヌス療法がなされた。主な評価項目は,Berg Balance Scale(BBS),10m歩行時間,下肢の上田式片麻痺回復グレード(下肢グレード),FIM運動項目,FIM認知項目,FIM合計点とし,入院時及び退院時に測定した。各項目において正規性の検定を行った後,対応のあるt検定もしくはウィルコクソン符号付順位和検定を用い,軽度群,中等度群それぞれの群内での入院時と退院時の比較を行った。また,二元配置分散分析法にて両群間における入院時から退院時にかけての変化の違いについて検討した。さらに,BBS,10m歩行時間,FIMについては,入院時の値を基準とした退院時点での改善率を算出し,ウェルチのt検定或いはマンホイットニ検定を用いて2群間で比較した。
【結果】
年齢,発症後期間,入院日数について,2群間に有意な違いは無かった。BBS(軽度群;入院時41.6±8.2点,退院時46.2±6.9点,中等度群;入院時29.2±11.0点,退院時34.1±8.7点),10m歩行(軽度群;入院時19.4±9.4秒,退院時13.7±5.4秒,中等度群;入院時37.0±19.9秒,退院時29.0±15.7秒)では,両群ともに入院時から退院時にかけて有意(p<0.05)な改善を認めた。下肢グレード,FIM運動項目,FIM認知項目,FIM合計点では,両群ともに有意な改善は認めなかった。2群間における入院時から退院時にかけての変化の違いについては,全ての評価項目で有意な交互作用は無かった。また,入院時から退院時にかけての改善率においても,全ての項目で2群間での有意な違いは認めなかった。
【考察】
一般的に,脳卒中患者の理学療法効果については,発症後6ヶ月を経過すると回復の伸びが悪くなると考えられている。しかし,新藤(1996年)や小泉(1992年,1998年)らは,一定のリハを受け在宅生活を経験した後に,能力低下をきたした慢性期脳卒中患者に対する間欠入院でのリハの有効性を示しており,機能低下が進行しないうちに間欠入院を行う必要性を訴えている。本研究では,ADL重症度における軽度群,中等度群ともにバランス機能,10m歩行時間において,間欠入院での理学療法により有意な改善を認め,その改善の程度に両群間で差は無かった。今回の介入では,在宅・施設生活の中で廃用性の機能低下を生じた者の中で,歩行不可能になってしまわないうちに再訓練を積極的に行えた事が改善を認めた要因と考える。今回,ADLが軽度,中等度に障害されている患者においては,間欠入院での集中的な理学療法が有効である事が示唆されたが,今後の課題として,重症例のデータを蓄積し,その効果を検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
慢性期脳卒中患者の機能向上を支援するための間欠入院の効果を示すとともに,どのような患者に対して有効であるのか検討する事は意義深い。