第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

口述

口述32

運動器 その他

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM 第10会場 (ガラス棟 G602)

座長:高倉保幸(埼玉医科大学 保健医療学部)

[O-0244] 有効な腰方形筋エクササイズの検討

三橋彩乃1, 三上尚悟1, 大久保雄1, 乙戸崇寛1, 澤田豊1, 赤坂清和1, 金岡恒治2 (1.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 2.早稲田大学スポーツ科学学術院)

Keywords:超音波画像解析, 筋厚, 腰椎安定性

【はじめに,目的】
腰方形筋は,脊柱の安定性に重要な役割を果たすというエビデンスが示されている(McGill et al., 1996)。腰方形筋に筋力低下や萎縮が生じると筋による安定性が低下し,その分を骨-靭帯によって代償しなければならないため,骨・関節・椎間板などへのメカニカルストレスが増大する。よって,腰方形筋のエクササイズは重要であると考えられている。ワイヤ筋電図を用いた先行研究においては,腰方形筋のエクササイズとしてside bridgeが有効と報告されている(McGill et al., 1997)。しかし,腰方形筋の筋活動を非侵襲的に定量的に計測をした研究は少ない。そこで本研究では,超音波診断装置を用いて,様々なエクササイズ時の腰方形筋の筋厚変化を測定し,有効な腰方形筋のエクササイズ方法を検討することとした。

【方法】
対象は,腰部・股関節に整形外科的疾患の既往や手術歴が無く,現在疼痛を有さない,健常成人男性10名(年齢:20.9±1.0歳,身長:171.1±5.2cm,体重:58.3±4.0kg,mean±SD)とした。機器は超音波診断装置(GE Healthcare社製LOGIQ e),プローブはリニア式プローブを使用した。L3/4高位の側背部から利き足側の腰方形筋を短軸像にて描出し,その際のプローブの位置を皮膚上にマーキングし,すべての試技において統一して腰方形筋を抽出できるようにした。腰方形筋の筋厚の測定は,安静時(背臥位。側臥位,背臥位,立位)と9つの試技時(①骨盤挙上,②膝関節伸展位でのside bridge,③膝関節屈曲位でのside bridge,④side bending,⑤側臥位股関節外転,⑥非測定側のSLR30°,⑦測定側のSLR30°,⑧非測定側の重錘把持,⑨測定側の重錘把持)に行った。試技はランダムに各3回行い,検者内信頼性を検討するため,3回の測定値の級内相関係数ICC(1,1)を算出した。3回の測定の平均値を解析に用いて,安静時と試技時の筋厚変化率[(試技時の筋厚-安静時の筋厚)×100/安静時の筋厚]を一元配置分散分析にて比較した。有意差を認めた際,Tukey-Kramer法を用いて多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】
級内相関係数ICC(1,1)は0.86であった。
測定側の重錘把持(2.22±7.82%)に比べ,Side bending(16.65±13.30%),膝伸展位でのSide bridge(15.41±7.98%),側臥位股関節外転(14.65±8.28%),測定側のSLR30°(4.79±6.13%)に比べ,side bendingで,有意に筋厚変化率が大きかった。

【考察】
ICC(1,1)は0.86であったことから,検者内信頼性は良好であった。
ワイヤ筋電図を用いて試技中の筋活動を計測した先行研究においては,side bridge中に腰方形筋は54%MVCの活動量を示し,その他の体幹筋の中でも高い結果となることが報告されており(MacGill1 et al., 1996),本結果でもside bridgeに大きな筋厚を示した。また,side bridge,side bendingの2つの試技は,体幹の側屈モーメントを要する試技であり,体幹側屈の動筋である腰方形筋の筋厚が増加したものと考える。さらに,本結果では側臥位股関節外転時にも筋厚変化が有意に大きかった。Heon et al.は,側臥位股関節外転時に腰方形筋活動が大きくなることを報告しており(Heon et al., 2006),本研究も同様の結果を示した。Hodges et al.は,股関節外転時に体幹深部筋(腹横筋,内腹斜筋)が股関節外転筋(大腿筋膜張筋)に先行して活動し,フィードフォワード制御が生じていることを報告している(Hodges PW et al., 1996)。腰方形筋内側線維は腹横筋と同様に脊椎に直接している体幹深部筋であることから,股関節外転時のフィードフォワード制御に関与している可能性があり,今後更なる検討が必要である。

【理学療法学研究としての意義】
本研究により,side bending,side bridge,側臥位股関節外転が腰方形筋の促通に有効であり,臨床現場でのエクササイズ処方に有用であると考える。