[O-0368] 当院「女性のための骨盤底リハビリ外来」における患者背景の実態調査
Keywords:ウィメンズヘルス, 尿失禁, 骨盤臓器脱
【はじめに,目的】当院では,骨盤臓器脱や尿失禁に対する専門的治療を行うウロギネ科や,便失禁などに対する専門的治療を行う直腸肛門科が開設されており,尿失禁や骨盤臓器脱,便失禁を訴える患者が多数来院する。これらの疾患に対する理学療法は近年その有効性が報告されているが,本邦においては保険診療の適応となっていないため普及が進んでいないのが現状である。これまで当院においては手術希望がない,もしくは手術の適応とならないこれらの疾患の患者は経過観察とするのみであった。そこで,当院では2013年9月より自費診療の外来として「女性のための骨盤底リハビリ外来(骨盤底リハビリ外来)」を開設した。本研究では,骨盤底リハビリ外来の患者背景,対象疾患,紹介元の診療科,および転帰を調査し,骨盤底リハビリ外来の利点および問題点を検討した。
【方法】2013年9月から2014年11月までの間に骨盤底リハビリ外来を受診した76名を対象とした。平均年齢は57.1歳,平均出産回数は1.8回であった。後方視的にカルテを参照し,骨盤底リハビリ外来の患者背景,対象疾患,紹介元の診療科,および転帰を調査した。
【結果】対象者の年齢層の内訳は20歳代が1.3%,30歳代が15.8%,40歳代が17.1%,50歳代が18.4%,60歳代が26.3%,70歳代が11.8%,80歳代が9.2%であった。対象疾患は骨盤臓器脱が40.8%,腹圧性尿失禁が36.8%,便失禁が18.4%,切迫性尿失禁が13.2%,頻尿が13.2%,ガス失禁が10.5%,下腹部の違和感が4.0%であった(重複回答)。紹介元の診療科はウロギネ科が73.7%と最も多く,次いで直腸肛門科が15.8%,婦人科が9.2%であった。転帰はリハビリ継続中であるものが31.6%,経過良好のため終診となったものが22.4%,自身でトレーニングを継続する,あるいは遠方に居住しているため頻回の来院が困難などの理由などにより終診となったものが17.1%,来院なく終診となったものが17.1%,手術に移行したものが11.8%(予め手術予定であったものも含む)であった。
【考察】今回,骨盤底リハビリ外来を開設したところ,骨盤臓器脱や尿失禁,便失禁などを訴える患者に対する治療の選択肢が広がり,受け口が広がったことで,骨盤底リハビリ外来は急速に普及した。このことより,これらの疾患に対する理学療法のニーズは高いことが推測される。また,骨盤底リハビリ外来の対象患者の年齢層は20歳代から80歳代まで幅広く,骨盤臓器脱や尿失禁,便失禁などに対する理学療法は中高年の女性のみならず,比較的若年層の女性にもニーズがあることが明らかとなった。骨盤底リハビリ外来の主たる対象疾患は骨盤臓器脱,腹圧性尿失禁,および便失禁であり,切迫性尿失禁や頻尿,ガス失禁も比較的多く認められた。当院ではウロギネ科や婦人科科だけでなく直腸肛門科が開設されており,これらの特性を反映したものと思われる。骨盤底リハビリ外来の利点は手術希望のない患者や,手術の適応とならない患者に対しても治療の選択肢を提供することができる点であると考える。また,手術に踏み切れない患者に対しては,手術を決断するまでのワンクッションとなりうると推察される。骨盤底リハビリ外来の問題点は個別指導であるため患者一人あたりに要する時間が長く,指導のためのプライベートスペースを確保する必要がある点であると考える。また,経過良好にて終診となったもの,およびリハビリ継続中であるものが過半数である一方で,来院を自己中断するものも少数見受けられ,この点は今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】本研究は骨盤臓器脱や尿失禁,便失禁などに対する理学療法が幅広い年齢層の女性においてニーズがあることを明らかにした。自費診療で骨盤底リハビリ外来を行うという新たな取り組みを報告することで,ウィメンズヘルス領域における理学療法の新たな可能性を提示することができるものと考える。
【方法】2013年9月から2014年11月までの間に骨盤底リハビリ外来を受診した76名を対象とした。平均年齢は57.1歳,平均出産回数は1.8回であった。後方視的にカルテを参照し,骨盤底リハビリ外来の患者背景,対象疾患,紹介元の診療科,および転帰を調査した。
【結果】対象者の年齢層の内訳は20歳代が1.3%,30歳代が15.8%,40歳代が17.1%,50歳代が18.4%,60歳代が26.3%,70歳代が11.8%,80歳代が9.2%であった。対象疾患は骨盤臓器脱が40.8%,腹圧性尿失禁が36.8%,便失禁が18.4%,切迫性尿失禁が13.2%,頻尿が13.2%,ガス失禁が10.5%,下腹部の違和感が4.0%であった(重複回答)。紹介元の診療科はウロギネ科が73.7%と最も多く,次いで直腸肛門科が15.8%,婦人科が9.2%であった。転帰はリハビリ継続中であるものが31.6%,経過良好のため終診となったものが22.4%,自身でトレーニングを継続する,あるいは遠方に居住しているため頻回の来院が困難などの理由などにより終診となったものが17.1%,来院なく終診となったものが17.1%,手術に移行したものが11.8%(予め手術予定であったものも含む)であった。
【考察】今回,骨盤底リハビリ外来を開設したところ,骨盤臓器脱や尿失禁,便失禁などを訴える患者に対する治療の選択肢が広がり,受け口が広がったことで,骨盤底リハビリ外来は急速に普及した。このことより,これらの疾患に対する理学療法のニーズは高いことが推測される。また,骨盤底リハビリ外来の対象患者の年齢層は20歳代から80歳代まで幅広く,骨盤臓器脱や尿失禁,便失禁などに対する理学療法は中高年の女性のみならず,比較的若年層の女性にもニーズがあることが明らかとなった。骨盤底リハビリ外来の主たる対象疾患は骨盤臓器脱,腹圧性尿失禁,および便失禁であり,切迫性尿失禁や頻尿,ガス失禁も比較的多く認められた。当院ではウロギネ科や婦人科科だけでなく直腸肛門科が開設されており,これらの特性を反映したものと思われる。骨盤底リハビリ外来の利点は手術希望のない患者や,手術の適応とならない患者に対しても治療の選択肢を提供することができる点であると考える。また,手術に踏み切れない患者に対しては,手術を決断するまでのワンクッションとなりうると推察される。骨盤底リハビリ外来の問題点は個別指導であるため患者一人あたりに要する時間が長く,指導のためのプライベートスペースを確保する必要がある点であると考える。また,経過良好にて終診となったもの,およびリハビリ継続中であるものが過半数である一方で,来院を自己中断するものも少数見受けられ,この点は今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】本研究は骨盤臓器脱や尿失禁,便失禁などに対する理学療法が幅広い年齢層の女性においてニーズがあることを明らかにした。自費診療で骨盤底リハビリ外来を行うという新たな取り組みを報告することで,ウィメンズヘルス領域における理学療法の新たな可能性を提示することができるものと考える。