第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述48

生体評価学2

Sat. Jun 6, 2015 10:15 AM - 11:15 AM 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:武田要(関西福祉科学大学 保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-0370] 立位足踏み負荷試験による再現性の検討

義村保善, 鈴木貴広, 成田悟志 (医療法人渓仁会手稲渓仁会病院)

Keywords:心肺運動負荷試験, 運動耐容能, 定量的評価

【はじめに,目的】
運動耐容能の評価には,6分間歩行距離試験やエルゴメーター等による心肺運動負荷試験(以下CPX),マスター二段階負荷試験などがあり,いずれも機材や十分なスペースが必要である。しかし,訪問リハビリテーションを実施している環境では,前述の理由から評価ができていない実情である。我々は過去にエルゴメーターによるCPXと立位足踏み負荷試験において,エルゴメーターと立位足踏みは,Peak VO2(ml/min)r=0.56,運動後の二重積r=0.55に中等度の相関を認め妥当性があると報告した。
立位足踏み負荷試験は妥当性があることから,再現性を明らかにし運動耐容能評価として有用性があるか検討することである。
【方法】
対象被験者は呼吸器・循環器疾患がない成人男性10名(平均年齢23.9±1.6歳)で,検者は臨床経験16年目の理学療法士とした。
呼気ガス分析器(ミナト社製AE310)を用い,立位足踏み負荷試験を1か月以内に2回行った。検討項目はPeak VO2(ml/min),運動後の二重積,Peak VO2/HR,Peak HR(beat/min),Borg scale(呼吸,下肢の疲労),足踏み回数,における再現性を検討した。足踏みの方法は股関節90°となるように目標物を設置し股関節屈曲運動を行った。測定は安静立位2分後に1分間のwarming up,その後3分間最大速度で行った足踏みの回数を計測し,終了後3分間のcool downを実施した。Warming upとcool downは被検者の自由速度とした。End pointは予測最大心拍数(220-年齢×0.9),Borg scale 19とした。統計処理はSPSS statistics ver.21を用いて級内相関係数(以下ICC)を算出した。同一検者の測定においてICC1.1を算出し検者内の再現性を検討した。
【結果】
Peak VO2(ml/min)は2159.9±357.7 vs 2188.1±353.2(ICC1.1 0.88),運動後の二重積は29218.2±3656.8 vs 29022.7±3146.9(ICC1.1 0.63),Peak VO2/HRは12.8±2.1 vs 13.0±2.0(ICC1.1 0.91),Peak HR(beat/min)は168.3±14.4 vs 164.4±9.4(ICC1.1 0.51),Borg scale呼吸は14.4±0.8 vs 15.4±1.7(ICC1.1 0.42),下肢疲労は17.3±1.6 vs 16.9±1.6(ICC1.1 0.59),足踏みの回数351.6±17.2 vs 352.4±26.5(ICC1.1 0.44)となった。
【考察】
過去に我々は,立位足踏み負荷試験が運動耐容能の評価として妥当性があると報告した。今回の結果から,運動耐容能の指標であるPeak VO2や心拍出量の指標であるPeak VO2/HRで各々ICC 0.88,0.91と高い再現性が得られ,立位足踏み負荷試験は運動耐容能の評価として妥当性及び再現性の高い評価である事が明らかとなった。しかし,運動後の二重積,Peak HR(beat/min),Borg scale(呼吸・下肢疲労),足踏みの回数は,再現性が低い結果となった。これは立位足踏み負荷試験が一定水準負荷試験のため,個人間でペースや負荷量においてばらつきが生じた結果と考える。今後の課題として,運動耐容能の評価として有用性を高めるため,個人間因子の是正が必要であり,多段階負荷や運動時間,ピッチの調整をするなど負荷様式の工夫が必要であると思われた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は客観的に評価を行い,在宅や機材のない施設においても運動耐容能の評価が行えることから,臨床的に意義がある。