[O-0395] 回復期リハビリテーション病棟における短下肢装具処方患者の車椅子離脱に影響を与える要因について
個人要因と理学療法介入経過の後方視的調査
キーワード:回復期, 短下肢装具, 歩行練習
【はじめに,目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)において歩行自立は目標の一つである。当院では病棟内を歩行のみで移動することを歩行自立,つまり車椅子離脱(以下,離脱)と定義している。回復期リハ病棟で対象となる脳卒中患者の多くは下肢機能不良で,短下肢装具(以下,装具)を必要とし,離脱の難易度が高い。それでも退院後の歩行移動での活動・参加を考えると,できる限り入院中に離脱を目指すことが望ましい。よって,離脱を目標にした理学療法介入をすすめていく上で,考慮すべき要因を検討する必要がある。本研究の目的は回復期リハ病棟において,装具を処方した患者を対象に,離脱に影響を与えた要因について,個人要因と理学療法介入経過(以下,介入経過)を退院時の医療情報から後方視的に調査することとした。
【方法】対象は平成24年4月1日から平成26年3月31日迄に当院回復期リハ病棟入院中に装具を処方した脳卒中患者87名のうち,監視以上で理学療法士などの専門職以外の病棟スタッフと歩行練習が可能となった64名(男性46名,女性18名,年齢61.7±11.7歳)とした。入院中に車椅子を必要としなくなった者を離脱群,必要とした者を非離脱群とした。調査項目は個人要因として,年齢,性別,疾患種別,麻痺側,下肢BRS,感覚障害,高次脳機能障害の有無,歩行速度(m/分),退院時Functional Independence Measure(以下,退院時FIM)運動項目合計,認知項目合計,在院日数とした。FIM運動・認知項目,高次脳機能障害の重度の者は除外した。介入経過として,入院日を基準に歩行練習に備品装具を導入するまでの日数(以下,装具導入時期),専門職以外の病棟スタッフが関わる歩行練習開始までの日数(以下,病棟歩行開始時期)とした。統計解析は離脱群と非離脱群の2群間の比較を行い,各項目について,Mann-Whitneyの検定及びχ2検定を行った。その後,離脱の有無を目的変数とし,単変量解析にて有意差を認めた8項目を用いて尤度比検定を基準とした変数増加法によるロジスティック回帰分析を行った。統計ソフトはSPSS20.0 J for windowsを用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】離脱群は28名(43.7%)であった。離脱の有無における2群間の比較では,年齢,下肢BRS,歩行速度,退院時FIM運動・認知項目,装具導入時期,病棟歩行開始時期,在院日数に有意差を認めた(P<0.05)。性別,疾患種別,麻痺側,感覚障害等には有意差が認められなかった。介入経過の結果は中央値(第1四分位/第3四分位)で示す。装具導入は離脱群が12.0(3.0/32.0)日,非離脱群は79.0(32.0/113.0)日であった。病棟歩行は離脱群が41.5(29.3/58.5)日,非離脱群は96.0(55.5/119.5)日であった。離脱の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,離脱の要因として歩行速度(オッズ比0.89,95%信頼区間:0.81-0.97),退院時FIM運動項目(オッズ比0.73,95%信頼区間:0.57-0.94),装具導入時期(オッズ比1.05,95%信頼区間:1.01-1.09)が独立した関連因子として抽出された。判別的中率は56.3%であった。
【考察】離脱の要因として,多変量解析より歩行速度,退院時FIM運動項目,装具導入時期が抽出された。今回の結果はオッズ比,判別的中率が低い値を示したが,離脱の要因には個人要因だけでなく,装具導入時期が影響している可能性を示唆していると考えられる。離脱群は年齢が若く,FIMが良好で,歩行速度が速いといった影響も考えられるが,その多くは装具導入時期が早く,早期から病棟歩行を開始し,病棟生活の動線に沿った歩行を繰り返す傾向にあった。これら2つの要素が離脱に積極的に関与したものと考える。特に装具導入時期はセラピストの裁量に委ねられていることが多く,導入の時期は調整が可能である。今後,機能評価に基づいた適切な導入時期を検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】車椅子離脱など,歩行自立の要因を検討する際,運動機能を中心とした個人要因だけに着目するのではなく,理学療法士の介入経過が妥当であったか振り返ることに意義があると思われる。
【方法】対象は平成24年4月1日から平成26年3月31日迄に当院回復期リハ病棟入院中に装具を処方した脳卒中患者87名のうち,監視以上で理学療法士などの専門職以外の病棟スタッフと歩行練習が可能となった64名(男性46名,女性18名,年齢61.7±11.7歳)とした。入院中に車椅子を必要としなくなった者を離脱群,必要とした者を非離脱群とした。調査項目は個人要因として,年齢,性別,疾患種別,麻痺側,下肢BRS,感覚障害,高次脳機能障害の有無,歩行速度(m/分),退院時Functional Independence Measure(以下,退院時FIM)運動項目合計,認知項目合計,在院日数とした。FIM運動・認知項目,高次脳機能障害の重度の者は除外した。介入経過として,入院日を基準に歩行練習に備品装具を導入するまでの日数(以下,装具導入時期),専門職以外の病棟スタッフが関わる歩行練習開始までの日数(以下,病棟歩行開始時期)とした。統計解析は離脱群と非離脱群の2群間の比較を行い,各項目について,Mann-Whitneyの検定及びχ2検定を行った。その後,離脱の有無を目的変数とし,単変量解析にて有意差を認めた8項目を用いて尤度比検定を基準とした変数増加法によるロジスティック回帰分析を行った。統計ソフトはSPSS20.0 J for windowsを用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】離脱群は28名(43.7%)であった。離脱の有無における2群間の比較では,年齢,下肢BRS,歩行速度,退院時FIM運動・認知項目,装具導入時期,病棟歩行開始時期,在院日数に有意差を認めた(P<0.05)。性別,疾患種別,麻痺側,感覚障害等には有意差が認められなかった。介入経過の結果は中央値(第1四分位/第3四分位)で示す。装具導入は離脱群が12.0(3.0/32.0)日,非離脱群は79.0(32.0/113.0)日であった。病棟歩行は離脱群が41.5(29.3/58.5)日,非離脱群は96.0(55.5/119.5)日であった。離脱の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,離脱の要因として歩行速度(オッズ比0.89,95%信頼区間:0.81-0.97),退院時FIM運動項目(オッズ比0.73,95%信頼区間:0.57-0.94),装具導入時期(オッズ比1.05,95%信頼区間:1.01-1.09)が独立した関連因子として抽出された。判別的中率は56.3%であった。
【考察】離脱の要因として,多変量解析より歩行速度,退院時FIM運動項目,装具導入時期が抽出された。今回の結果はオッズ比,判別的中率が低い値を示したが,離脱の要因には個人要因だけでなく,装具導入時期が影響している可能性を示唆していると考えられる。離脱群は年齢が若く,FIMが良好で,歩行速度が速いといった影響も考えられるが,その多くは装具導入時期が早く,早期から病棟歩行を開始し,病棟生活の動線に沿った歩行を繰り返す傾向にあった。これら2つの要素が離脱に積極的に関与したものと考える。特に装具導入時期はセラピストの裁量に委ねられていることが多く,導入の時期は調整が可能である。今後,機能評価に基づいた適切な導入時期を検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】車椅子離脱など,歩行自立の要因を検討する際,運動機能を中心とした個人要因だけに着目するのではなく,理学療法士の介入経過が妥当であったか振り返ることに意義があると思われる。